戦闘力のないハズレ才能【翻訳】で古代魔導書を読み漁っていたら世界最強になってました

蒼乃白兎

文字の大きさ
8 / 31

手料理

しおりを挟む
 冒険者ギルドに戻る際、俺は冒険者ギルドの状況をセレナさんに説明した。
 セレナさんが火竜討伐のクエストを受けて、ルベループ火山に向かっていたこともあり、ファフニールと対峙しているのではないかと心配されていた。

 しかし、これらの原因は全てファフニールだ。
 なのでいなかったことにすれば丸く治まる。

 だからセレナさんには火竜もファフニールもいなかった、と報告してもらう手筈になっている。
 もちろんセレナさんの証言だけを信じることは不可能なので、調査は入るはずだが、ファフニールがいなければ問題に発展することはないだろう。

 そんなわけでセレナさんには先に冒険者ギルドに戻ってもらった。
 セレナさんが後で助けてもらったお礼をしたいと言っていたので、合流するようにはなっている。
 なにやら食事をご馳走してくれるみたいだ。

 実家にいたときは感謝される経験などほとんど無かったため、こういった厚意は非常に嬉しい。

 そして今回の一件で俺の従魔になったファフニールだが、俺の周りをパタパタと飛んでいる。
 ルベループに戻ってくると、周りからの視線を感じる。
 本で得た知識だが、従魔自体はテイマーという魔物を使役する職業があることもあって、そこまで偏見がないはずだ。
 従魔契約をするための魔導具もあるぐらいだからね。
 町を歩いていると、従魔を連れている人は俺の他にもいたわけだからね。
 それでも視線を感じるということは、多分小さなドラゴンを従魔としているのが珍しいのだと思う。

 ……あ、ファフニールに従魔用の首輪を買ってあげないとな。
 使役されている魔物か見極める際に必要となるので、早いうちに買っておいた方が良い。

 俺は冒険者ギルドに向かう途中にアクセサリーショップに寄った。
 そして銀貨10枚で従魔用の首輪を購入した。

 ちょっと値段が高かったけど、白い首輪をつけたファフニールはとても似合っていた。

『ふむ。小さい身体も悪くはないな』
『それなら良かった』
『なかなか面白いぞ。身体が小さくなった分、我の世界は広がっておるからな』
『ははは、確かに前の大きさだと建物の中にも入れないね』
『うむ。こうして人間の文化に触れてみるのも楽しいものだ』
『うんうん。その気持ち凄く分かるよ』
『おお、ほんとか!? さすがノアだな!』

 ファフニールととても気が合いそうだ。

『ファフニール、従魔になってくれてありがとね』
『む? 感謝を言うなら我の方である。従魔にしてくれて感謝しておるぞ』

 そう言っている間に冒険者ギルドに到着した。
 冒険者ギルドの受付は既に終了していた。
 冒険者登録は明日にするしかないようだ。

 ギルドの中はもう完全に酒場だ。
 冒険者たちがかなり騒いでいる。

 辺りを見回していると、セレナさんの姿を発見した。
 壁に寄りかかって、こっちこっち、と手招きをしていた。

「お疲れ様です」
「うん。そっちこそお疲れ様。とりあえず、ここで話すのもなんだから移動しましょう」
「移動? どこに行くんですか?」
「私の家よ」
「なるほど、確かに今日の出来事は公の場だと話しにくいですからね」
「そういうこと。じゃあ行きましょう」
「はい」

 冒険者ギルドを出て、ルベループ内を歩いた。
 ルベループは結構大きな街で建物が多く並んでいた。
 しばらく歩いていると、周りの建物が民家ばかりになってきた。
 この辺りが居住区域になるのだろうか。

「着いたわよ」

 セレナさんの家は一階建ての木造建築で、周りの民家と変わらないごく普通の一軒家だった。

「ほら、入って入って」
「お邪魔します」

 家の中には部屋が二つあるようだった。
 セレナさんはすぐにキッチンに向かった。

「そこの椅子に座って、待ってて。今何か作るから」

 そう言って、セレナさんは料理を始めた。

『ふむふむ、ここが人間の住処か』
『あんまり色々なところ覗いちゃダメだよ』
『そうなのか?』
『見られたくないものとかあったら嫌だろう?』
『なるほど、それもそうだ』

 そんな感じでファフニールと喋っていると、

「ノアって凄いわね。あんなに強力な魔法を使えて、魔物とも話せるなんて」

 セレナさんが話しかけてきた。

「別に凄くないですよ。魔法や魔物については、育った環境が影響しているのかな? と思ってます」
「育った環境かぁ……結構苦労してそうね。普通の生活だと、それだけの力は身につけられないだろうから」
「うーん……本を読んでいただけですね」
「本!? それだけであんなに魔法が使えるわけないじゃない!」
「そうですね、ただの本ではなかったです。読むだけで魔法が使えるようになる……そんな魔導書です」
「聞いたこともないわ……本当に言っているの?」
「聞いたことがないのも無理ないと思います。これはもう失われた技術ロストテクノロジーの一つ──古代魔法の魔導書ですから」
「古代魔法……」

 セレナさんはそう呟いた。
 なかなか信じられないことだろう。

 俺自身、古代魔法のことを言うのは初めてだった。
 実家では古代魔法が使えることは隠していたから。
 多分、父上は俺が古代魔法が使えることを知っていれば、実家から追い出すなんてことはしなかったと思う。
 でも俺はどこかで魔法とかそんなもの関係なく、認めてもらいたかった。

「ふーん、ノアってやっぱり面白いわね。良ければもっと古代魔法のことについて聞かせてほしいわ」
「構いませんよ」
「ありがとう。嬉しいわ。ちょっと待っててね、とっとと料理作っちゃうから」

 そう言って、セレナさんは手際よく料理を進めていった。

「はい、お待たせ」

 出来上がった料理は、牛肉のステーキとオニオンスープだ。
 なんとも良い香りがしてくる。

 ファフニールの食事も一緒に出してくれた。
 ファフニールは草食だと伝えておいたので、お皿には何種類かの葉物野菜がのせられていた。

 早速食べてみる。
 牛肉を一口サイズに切って、口の中に運ぶ。
 じゅわー、と肉汁が溢れてきてとても美味しい。

「……お口に合うかしら?」
「とても美味しいです!」
「そ、そう。それはよかった」

 セレナさんは嬉しそうに微笑んだ。

「それじゃあ古代魔法のことについてお話しましょうか」
「ええ。是非聞いてみたいわね。でもその前に一つ、かしこまって話さなくても大丈夫よ? 私の名前もさん付けしてくれなくても良いし、自然に話してもらって構わないわ。その話し方が楽ならそれでも良いからね」

 セレナさんの気遣いがとても伝わってきた。
 うん、もうちょっと話し方を崩してみようかな。

「……分かったよ。気遣ってくれてありがとね」
「そ、そんな気遣ってなんかないわよ。ただ、面白い話を聞く訳だからノアも気分よく話してもらえればって思っただけだから!」
「それを気遣いって言うんじゃないかな?」
「う、うるさいわね」
『この娘はノアと違って少し素直じゃないところがあるみたいだな』
『はは、そうだね』

 俺がファフニールと話しているところを見て、セレナはムスっとした表情を浮かべた。

「い、一体何を話しているのかしら?」
「セレナって少し素直じゃないところがあるよねってファフニールと話したんだ」
「そ、そんなことない! 素直だからね!」
「ははは、そうだね」
『うむ。人が良さそうな娘だ。我を見逃してくれただけはあるな』

 ファフニールは感心している様子だった。

「もう、まったく……」

 セレナは取り乱していたのを正して、自分の分の料理を食べ始めた。
 思えば、食事をしながら誰かと会話をするのは5歳以来かもしれない。
 なんだかとても楽しい気分だった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...