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40話~59話
45:「伝言」 「そう、しよう」
しおりを挟む『さようなら』
船首が切り開く海に広がる白い軌跡、無音の洋上を波の音が進んで行く。朝日はなんて美しいんだろう。
デッキのあちらこちらには老夫婦。私と同じように朝日を見つめている。なかには、わき腹を小突かれている人もいる。
やっと一つの区切りを迎える事ができた。十年分の自分にご褒美。こんな清々しい朝を迎えられたのは、心地の良い夫婦生活を送っていたら気付けなかったのかもしれない。唯一、感謝すべき点かもしれない。
これからは、前に進んでいける。道がデコボコでも、立ち止まる事があっても前を向いていれば、前に進んでいける。
この旅が終わったら、
新しい家を買おう。遠くまで見渡せる部屋、広く見渡せる部屋がいい。そう言う部屋なら、先々まで見通せるだろう。幅広く考える事が出来るようになれるだろう。
誰よりも早く朝日に出会える部屋がいい。世間が布団の中で夢を見ている時に今日一日をイメージしよう。良い出来事、良い出会い。悪いと思える事があったとしても乗り越えて成長出来るようにイメージしよう。
駅には近すぎない場所がいい。生活の音がする、夕飯の匂いがする路地を抜け、季節の花を楽しもう。
新しい家には、新しい家具を置こう。ナチュラルウッドのテーブルを置こう、明るく広い部屋に合う大きなテーブルにしよう。ソファーは大きな花柄にしよう。部屋の隅にはナチュラルウッドの椅子を置こう、気持ちを変えて読書をしよう。
食器棚は大きいナチュラルウッドにしよう、食器棚の中は、白い食器で揃えよう。大きな盛り皿と人数分の取り皿、人数分のカップ、人数分のシルバーを揃えよう。そして、沢山の友だちを呼んで、みんなで料理を作って、みんなで楽しもう。
新しい家でみんなを迎える時には、新しい服で迎えよう。全ての色を放つ白いシャツに全ての色を取り込む黒いスカートにしよう。デザインはゆったりしたモノにしよう。ふんわりしたモノにしよう。
寝室には、大きなベッドを置こう。大の字になってもはみ出ない大きいベッドにしよう。そして、窓際に置いて夜空を見ながら眠るんだ。
全てを悟ってから十年。十年の時間を使ってやっとここまで来る事が出来た。正直、諦めた方が楽だと思う事もあった。何も期待せず何も考えず、その瞬間の事だけを生きる。昨日とか明日とかは考えない生活なら楽だと思う事もあった。でも、世間や友人が楽しんでいる時にも鼓舞して前に進んできた。
一つのものを手に入れる為に、沢山のものを失った。取り戻せないものもある。その中でも適齢期は取り戻せない。父と母の様な幸せが得られない事は覚悟できていたけど、母としての幸せを得られない事に寂しさを感じないと言ったらウソになる。
それならば、沢山の子の里親になろう。血が繋がっていなくても、心が繋がっていると言われるようになろう。それよりも、お互いが意識しない普通になろう。
室内がクレヨンアートで埋め尽くされるかもしれない。部屋の隅から動かないかもしれない。間違いなく大変な日々が続くだろう。それでもいいんだ。一緒に前に進んできっちり送り出して上げよう。
これからは、前に進んでいける。道がデコボコでも、立ち止まる事があっても前を向いていれば、前に進んでいける。
他の人と違う形であっても、私の幸せを手に入れよう。
「よし、朝食の時間だ」
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