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40話~59話
50:「弾ける」 シャボン玉 ♪♪
しおりを挟むストローをシャボン液が垂れないように慎重に口に運ぶと、ゆっくり大きく息を吹き込んだ。
みるみる、シャボン玉が大きく膨らんでいった。
今までで一番大きく膨らんでいった。
「ママ。おっきいシャボン玉、できたぁ」
娘の喜ぶ顔に、ママは笑顔で答えた。
~ ・ ~
大きな物の時間はゆっくりと流れ、小さな物の時間は早く進む。
夜空の背景のように存在する天の川。その時の流れに比べれば、惑星は天馬の如く駆け抜ける。極小の世界、原子核を回る電子の動き。その時の流れは速すぎて人の目で動きを追う事は叶わない。ましてや、素粒子以下においては天の川が人の営みを見るが如し。
宇宙は忽然と現れると膨張していった。まるで、神の息吹によって膨らんでいくシャボン玉のようだった。
その宇宙に、色が生まれた。
その宇宙に、渦が生まれた。
その宇宙で、百億の昼が過ぎた頃、一つの命が生まれた。
その命は、神の息吹そのものであった。
その命は、器を替えながら
その命は、器を増やしながら時を繋いでいった。
時には、途絶える器
時には、形を変える器
時には、器に潜む器が現れた。
しかし、器のあり様が変わっても、それは器でありそれは神の息吹そのものであった。
千億の夜が過ぎた頃、器は宇宙の隅々まで増えていた。
そして、命は器から離れると大きな命へと変わっていった。
大きな命は、神の息吹であり、神の思いであった。
~ ・ ~
「エイ ♪♪」
ママは中指をシャボン玉に突き刺した。
娘は、凍り付いてしまった。大きく出来たシャボン玉を壊された事より、ママの目の奥の光に。
「ごめ~ん。なんか、このシャボン玉が幸せそうに見えてェ~」
娘は、ママを見たまま動けないでいる。
「風が出てきたから、シャボン玉はお終いや。アパートに戻ろ」
見下しながら言うと、娘の手を引っ張り歩き出した。
「ママの事、宇宙でいちばん大好き」
娘はママの手を握り返すと満面の笑みを浮かべながら言った。
ママに笑顔が戻った。
「そか。ママも嬉しいや。そう言ってくれるの宇宙に一人しかおらへんから」
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