ひまわり計画

風宮 秤

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プロローグ

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「どうだろうか? 子々孫々まで守り続けるアイデアがあれば提案してほしい」
 ドクター・ワンは、四人に静かに問い掛けた。
 子々孫々百年先千年先に繋がるアイデアが一朝一夕に出るものではない。しかし、会議の度に議題の一つとして問い掛け続けていた。今日をきっかけに不可逆に未来に影響を及ぼすアイデア。歴史を学んだ者だからこそ、同じ過ちを繰り返す人類だと理解しているからこそ、自身を含め問い続けていた。
「ドクター・ワン、少し長い話になりますが宜しいでしょうか?」
 仮に実現不可能なアイデアであっても化学反応があるかもしれない。誰もが期待をもって彼の言葉を待った。
「アイデアを述べる前に、前提を揃えておきたいと思います。まず、地球の平均気温は産業革命以降上昇を続けています。極地での気温上昇は温帯地帯より顕著で北極海航路の商業利用の話は記憶に新しいものと思います。また、極地の氷解と海水温上昇による膨張の影響が赤道付近の島嶼国の消滅に繋がっています。これは人類が経験した事がない地球規模の環境変化です。その原因が産業革命以降増え続けている温暖化ガスにあるのなら減らせば良い。理に適った対応です。これはフロンガスによるオゾンホールの拡大をフロンガス削減で解決した成功体験の影響があると思います。その所為により太陽の放射エネルギー収支による温暖化防止が可能なはずなのに機運がない。それは誰もが荒唐無稽に思っているからです。そこに着目しました。その上でアイデア書をご覧ください」
 彼が配ったのは『ひまわり計画』と書かれた十枚ほどの物語仕立ての計画書だった。物語仕立てにする事で計画の枝葉に囚われずアイデアとしてのイメージが掴みやすくなっていた。
 全員が読み終わるまでの十五分ほどの沈黙が珈琲の香りを引き立てていた。
「ドクター・ワン、実現には穴だらけの内容ですが人類を呪縛から解き放ち次のステップに進める事が出来ると思います。これこそが子々孫々まで守る事に繋がると思いました」
 誰もが彼の言う通り荒唐無稽だと感じた。しかし、これを実現出来るのは自分たち以外に存在しないとの自負もあった。
「想像以上に柔軟な発想だ。誰一人として思いつかなかった中で素晴らしいアイデアを出して貰えた事にまず感謝の気持ちを表したい。『ありがとう』 この計画なら人類を別の価値観に導く事が出来る。千年後の未来にも期待が持てる。その上で実現するためには想像以上に広い範囲の協力が必要となるが、これほど素晴らしいアイデアを我々なら失敗させる事はしない」
 彼は立ち上がると深々とお辞儀をした。彼も最高のメンバーの一員であったがこれほどの賛辞を貰えると思っていなかったからだ。
「アイデアを認めて頂きありがとうございます。ドクター・ワンにノーベル賞を」
 彼の一言が計画推進の合言葉になった。
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