1 / 1
嫁の決意
しおりを挟む
紅茶にケーキ、休みの日のティータイムだから? 自動的に出てきたのかもしれない。それはおかしい・・・・、摘まみ食いがバレていない? それとも伏線なのか?
「ありがとう」
僕の声は聞こえていないのか? 紅茶を見つめてフリーズしている。
雑談を振っても頷いているだけで話しを聞いていないのは間違いない。今のうちに色々と懺悔しておいた方が良いのか? それはないな、寝た子を起こすのは愚かな行為だ。そこは知らぬが仏、言わぬが花だな。
それにしても、どう言う事なんだ? 壮大な蜘蛛の巣のようなものが張り巡らされているのか? それとも・・・。
試しに嫁の分を一口食べてみる。ちらりと動く視線に汗が噴き出る・・・・やっちまったか。それだけで反応がない。
「・・・なるほど」
嫁は悩むとドツボに嵌まるタイプなのは分かっているつもりだった。でもこれほどの重症は初めてだ。きっとマジックで口髭を描いても大丈夫な気がするけど、やらない。バレて怒られるのも怖いけど、そのまま買い物に行かれる方が遥かに怖い。
ここは一つ、名推理を披露するしかないのか・・・。
事の発端は、嫁が友だちに誘われて行ったあれに違いない。あのフェスタは・・・、イヤリング、ブローチ、根付などの小物が売っていたらしい。フェスタに買いに来る方も自作の服でアピールしていたらしい。会場に集う人に共通していたのはハンドメイドらしい。
嫁も自作の服を着て生活をしている。袖口にゴムを通しただけの簡単な作りから、お洒落なワンピースも作っていた。初デートも自作の服だったな。残りの生地も無駄なく使いリュックになったりネクタイになったりしている。
お喋りではない嫁だけど、作家のアカウントにアクセスすると形の良さを称え、彩りを称えストーリー性を称えていた。翌日には加工の難しさに部材の入手方法も調べ上げ、学生の時に通っていたお店がネット販売を始めていると感慨深く年齢を噛みしめたり、販売単価から生産ロットを計算しているかと思えば、来場者の衣装に使われていたボタンが高くて買えなかった話になったりした。
自分も嫁とは趣味が違うけど物を作る楽しさは知っているつもり。フリマ会場には同じ趣味、同じ事に価値を見出す仲間がいた。同好の士がいる嬉しさ、一人じゃない嬉しさ。初めて行った時は嫁と同じようにテンションが高くなった。それに小説サイトには同じように投稿する仲間がいる。読む人が少なくても『いいね』を押してくれる人がいる。嫁の気持ちは良く分かる。
でも、その友だちから電話が掛かってきてから寡黙になった。それが今の状態だ。
嫁の分を、もう一口取ると、
「あーん」
こちらを見た瞬間に押し込んだ。目を丸くしている。何が起きたのか分かっていないみたいだ。
「最近、ボーっとしているよね。こないだのフェスタに行って熱く語っていたと思ったら寡黙になった。また、何かに迷っているんでしょう?」
目が泳いでいる・・・・、普段の眼圧はどこに行ったのか・・・・。
「諦めてないんだね? 何とかしたいけど難しい。でも諦めきれない。だからずーっと同じところでグルグル回っている。・・・だよね?」
僕を見上げる瞳には神父を前に懺悔する迷える子羊のようだ。ふふふ、救って上げようではないか迷える子羊を。
「材料費がかなり掛かるの・・・・」
話す気になったようだ。
「自作の洋服は生地だけでも市販の洋服より高くなるの。ボタンとか飾りが付けば更に高くなるの。どこをどう工夫してもお店の値段にはならないのよ。縫製工場みたいに大量に買えば半値半額以下にはなるけど」
ひょっとして、節約の為に洋服を作っていると思っていたけど、自分の洋服代より上なのか? 慎ましい生活をさせて心が痛んでいたけど、あれは間違いだったのか? 結婚以来ずーっと騙されていたのか?
「たぶん大きな誤解をしていると思うから言っておくけど、私の身長だと子供向けか高齢者向けのどちらかしかないの。だからと言って子供向けも高齢者向けも体形が違うからダメなの。デザイン以前の問題だからね」
「そうなの? デザインの事は良く分からないけど似合っていると思うよ。悩みって洋服のデザインの事なの? 値段がって事はブラウスに電飾でも付けるの?」
呆れた顔をする嫁。でも普段に戻っている。
「そう言う事ではないけどね。友だちとフェスタに行ってブローチとか根付とか見て凄い凄いと思っていたけど、同じくらいに私でも作れる。私ならもっと巧く作れると思ったの。そう思っていたら次のフェスタで一緒に参加しようって言われて・・・。そしたら私にちゃんとに出来るかな? 一個二個ではなく百個も作れるかな? 数だけじゃなくてデザインも色々考えなくちゃいけない。それよりも、売れるか分からない段階でかなりの材料費が掛かるの。材料費ケチれば安く見えるから売れないだろうし、高い材料を使っても価値を分かってもらえるか? 一個も売れずに、行きより重たい荷物を持って帰るかも・・・・。出てみたい。私の作ったものを見て貰いたい。手に取って喜んで貰いたい。でも、私の作るものは在り来りで見向きもされないかも。フェスタでも悪くないのに全然売れない人もいた。私も同じになるかもしれない。そもそも、私の作るものが自分で思うほど魅力的とは限らないし。材料費だって安くないし・・・・」
なるほど、あちらの性格は嫁とは真逆だからな。おおかた、売れ残ったら周りに配っちゃえば良いとか言われているのだろう。それもアリだと思うけど。
「誰かが欲しいと思う物は、誰でも欲しい物だよね? だから、自分が欲しいと思って作った物なら売れると思うよ?」
「自分で面白いと思ってもアクセス数が増えないのとは違うのよ。フリマに参加してテーブルの上の本が減らないのよ」
う・・・・、さらりと人生で一番傷つく事を言われた。しかも、嫁の奴気がついてないし。真顔で言われた分ダメージが大きい。でも、今は励ましたいんだ、頑張れ自分。
「今まで上手く節約してくれたから我慢しなくても貯金が出来たと思う。もしもの為の貯金はもしもの時に使うお金だよね。それで真理子さんが創る世界を観られるなんて素敵じゃないか。きっと高く売れるから働かなくても良くなるかな? ヒモ生活には憧れもあるし」
「俊くん、本音が出ているよ。でも、ありがとう。私の作る物が売れると言ってくれるのは嬉しいよ」
嫁の気持ちは固まったようだ。残る問題は目の前にある嫁のケーキ。功労者の僕は食べる権利があるよね?
「ありがとう」
僕の声は聞こえていないのか? 紅茶を見つめてフリーズしている。
雑談を振っても頷いているだけで話しを聞いていないのは間違いない。今のうちに色々と懺悔しておいた方が良いのか? それはないな、寝た子を起こすのは愚かな行為だ。そこは知らぬが仏、言わぬが花だな。
それにしても、どう言う事なんだ? 壮大な蜘蛛の巣のようなものが張り巡らされているのか? それとも・・・。
試しに嫁の分を一口食べてみる。ちらりと動く視線に汗が噴き出る・・・・やっちまったか。それだけで反応がない。
「・・・なるほど」
嫁は悩むとドツボに嵌まるタイプなのは分かっているつもりだった。でもこれほどの重症は初めてだ。きっとマジックで口髭を描いても大丈夫な気がするけど、やらない。バレて怒られるのも怖いけど、そのまま買い物に行かれる方が遥かに怖い。
ここは一つ、名推理を披露するしかないのか・・・。
事の発端は、嫁が友だちに誘われて行ったあれに違いない。あのフェスタは・・・、イヤリング、ブローチ、根付などの小物が売っていたらしい。フェスタに買いに来る方も自作の服でアピールしていたらしい。会場に集う人に共通していたのはハンドメイドらしい。
嫁も自作の服を着て生活をしている。袖口にゴムを通しただけの簡単な作りから、お洒落なワンピースも作っていた。初デートも自作の服だったな。残りの生地も無駄なく使いリュックになったりネクタイになったりしている。
お喋りではない嫁だけど、作家のアカウントにアクセスすると形の良さを称え、彩りを称えストーリー性を称えていた。翌日には加工の難しさに部材の入手方法も調べ上げ、学生の時に通っていたお店がネット販売を始めていると感慨深く年齢を噛みしめたり、販売単価から生産ロットを計算しているかと思えば、来場者の衣装に使われていたボタンが高くて買えなかった話になったりした。
自分も嫁とは趣味が違うけど物を作る楽しさは知っているつもり。フリマ会場には同じ趣味、同じ事に価値を見出す仲間がいた。同好の士がいる嬉しさ、一人じゃない嬉しさ。初めて行った時は嫁と同じようにテンションが高くなった。それに小説サイトには同じように投稿する仲間がいる。読む人が少なくても『いいね』を押してくれる人がいる。嫁の気持ちは良く分かる。
でも、その友だちから電話が掛かってきてから寡黙になった。それが今の状態だ。
嫁の分を、もう一口取ると、
「あーん」
こちらを見た瞬間に押し込んだ。目を丸くしている。何が起きたのか分かっていないみたいだ。
「最近、ボーっとしているよね。こないだのフェスタに行って熱く語っていたと思ったら寡黙になった。また、何かに迷っているんでしょう?」
目が泳いでいる・・・・、普段の眼圧はどこに行ったのか・・・・。
「諦めてないんだね? 何とかしたいけど難しい。でも諦めきれない。だからずーっと同じところでグルグル回っている。・・・だよね?」
僕を見上げる瞳には神父を前に懺悔する迷える子羊のようだ。ふふふ、救って上げようではないか迷える子羊を。
「材料費がかなり掛かるの・・・・」
話す気になったようだ。
「自作の洋服は生地だけでも市販の洋服より高くなるの。ボタンとか飾りが付けば更に高くなるの。どこをどう工夫してもお店の値段にはならないのよ。縫製工場みたいに大量に買えば半値半額以下にはなるけど」
ひょっとして、節約の為に洋服を作っていると思っていたけど、自分の洋服代より上なのか? 慎ましい生活をさせて心が痛んでいたけど、あれは間違いだったのか? 結婚以来ずーっと騙されていたのか?
「たぶん大きな誤解をしていると思うから言っておくけど、私の身長だと子供向けか高齢者向けのどちらかしかないの。だからと言って子供向けも高齢者向けも体形が違うからダメなの。デザイン以前の問題だからね」
「そうなの? デザインの事は良く分からないけど似合っていると思うよ。悩みって洋服のデザインの事なの? 値段がって事はブラウスに電飾でも付けるの?」
呆れた顔をする嫁。でも普段に戻っている。
「そう言う事ではないけどね。友だちとフェスタに行ってブローチとか根付とか見て凄い凄いと思っていたけど、同じくらいに私でも作れる。私ならもっと巧く作れると思ったの。そう思っていたら次のフェスタで一緒に参加しようって言われて・・・。そしたら私にちゃんとに出来るかな? 一個二個ではなく百個も作れるかな? 数だけじゃなくてデザインも色々考えなくちゃいけない。それよりも、売れるか分からない段階でかなりの材料費が掛かるの。材料費ケチれば安く見えるから売れないだろうし、高い材料を使っても価値を分かってもらえるか? 一個も売れずに、行きより重たい荷物を持って帰るかも・・・・。出てみたい。私の作ったものを見て貰いたい。手に取って喜んで貰いたい。でも、私の作るものは在り来りで見向きもされないかも。フェスタでも悪くないのに全然売れない人もいた。私も同じになるかもしれない。そもそも、私の作るものが自分で思うほど魅力的とは限らないし。材料費だって安くないし・・・・」
なるほど、あちらの性格は嫁とは真逆だからな。おおかた、売れ残ったら周りに配っちゃえば良いとか言われているのだろう。それもアリだと思うけど。
「誰かが欲しいと思う物は、誰でも欲しい物だよね? だから、自分が欲しいと思って作った物なら売れると思うよ?」
「自分で面白いと思ってもアクセス数が増えないのとは違うのよ。フリマに参加してテーブルの上の本が減らないのよ」
う・・・・、さらりと人生で一番傷つく事を言われた。しかも、嫁の奴気がついてないし。真顔で言われた分ダメージが大きい。でも、今は励ましたいんだ、頑張れ自分。
「今まで上手く節約してくれたから我慢しなくても貯金が出来たと思う。もしもの為の貯金はもしもの時に使うお金だよね。それで真理子さんが創る世界を観られるなんて素敵じゃないか。きっと高く売れるから働かなくても良くなるかな? ヒモ生活には憧れもあるし」
「俊くん、本音が出ているよ。でも、ありがとう。私の作る物が売れると言ってくれるのは嬉しいよ」
嫁の気持ちは固まったようだ。残る問題は目の前にある嫁のケーキ。功労者の僕は食べる権利があるよね?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる