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しおりを挟む何とか朝食を終え、私は玄関でお父様たちの出勤を見送る。準備ができるのを待っていると、ノートル様とライアンの会話が聞こえてきた。
「これ、何をするために開発されたのですか?」
「うーん、何だろう?とりあえず作ってみたとか?
何を言っているのだろう、と何気なく彼らの方を見た。ノートル様の手には何やら黒い紐のようなものが見える。指でつまんでビヨーンと伸ばしているように見える。
ま、まさか、あれはゴム?
この世界にゴムはなかったはずだ。髪を結びたいと思ってもリボンで止めることしかできず、何気に苦労していた。あれがあれば・・・。
私は迷わずノートル様のところに向かう。
「マリアンヌ様、どうされました?」
ノートル様はにこやかに私を見ている。相変わらず綺麗なお顔である。着物を着せたいとやはり思うが、その気持ちを押しとどめる。
「それは・・・?」
「何かに利用できないかと作ってみたのです」
「使いみちないでしょう。伸び縮みする紐なんて」
呆れたようにライアンが言うが、私はノートル様の手を掴んだ。ノートル様も驚いたように目を見張るが、そんなことどうでもいい。
「み、見せてください!」
私は奪うように彼が持つ紐を手にする。何度も伸び縮みさせる。ゴムだ。
「こ、これ。いただけませんか?」
私の様子にノートル様は引いている。淑女としてよくない行動であることはわかっているが、そんなこと気にしてはいられない。
「どうぞ。持っていても使いみちがないし、困っていたのですよ」
「ありがとうございます!」
使いみちが思い浮かばないとは。とりあえず、これで髪が結べる。私がニヤニヤしているのを彼らは不思議そうな表情で見ていた。
エイアール家の使用人の人たちは全員元気に目覚めた、セバスチャンが仕事内容などを指示した後は彼らを使用人専用のダイニングへ案内した。彼らの朝食はビュッフェスタイル。好きなように取って食べられるように大皿に料理を山盛りにした。
「うぉぉぉぉ!」
「すごい!」
「なんだ、これは!」
私はキッチンにいたのだが、その声が聞こえてきた。りんごが大量にあったのでアップルパイを作ろうと思う。お兄様やお父様用には一人分用に作って、家用には切り分けられるように作るつもり。
大所帯になったので食事の用意は大変かと思ったが、やはり何か魔法のようなものがあるのかあっという間に出来上がっていく気がする。キッチンの中と外の時間の経ち方が違うのかよくわからない。とにかく、アップルパイと並行して昼の準備もする。
お茶の時間になり、焼き上がったアップルパイを持っていく。アイスクリームがあれば良かったが、残念ながらそれはなかった。今日はステファニー様とダニエル様とで頂く。
「まぁ、美味しいですわ」
一口食べたステファニー様は頬を押さえてつぶやく。その仕草や顔つきが色っぽい。美しい方とは何をされても美しいのである。
「美味しいですね、母上」
ダニエル様も嬉しそうである。私もいただく。中のリンゴはやや酸っぱかったが、それがパイと合わさって本当に美味しかった。我ながら上出来だと思う。
「りんごは正直あまり好きではなかったのですが、こうやって調理されると美味しいですね
」
そうだ、料理人がいないせいで食事に生のりんごを齧っていた人は多い。そのためりんごは飽きてしまい、好んで食べてはいなかったのだろう。おそらくお父様やお兄様もそうだろうと思う。パイにしたら食べてくださるだろうか。お二人を見ながら私はそんなことを考えていた。
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