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「マリアンヌ、元気だった?」
「ハイ!」
お母様とフランツ兄様と一緒にお茶の時間である。お母様はドーナツを持ち上げ、不思議そうに見ている。そしてドーナツの穴から私を見つめる。お母様も美人である。子どもを3人産んでいるとは思えない。ドーナツ越しに見てもお美しい。
「見て、フランツ。こうやってみるとマリアンヌって本当に天使よね」
「当たり前ではないですか。何を言っているのです、母上。マリが天使なのは当然でしょう
?」
「そうなのよ、天使を産めた私って世界で一番ラッキーな女だと思うの」
マリアンヌの両親と兄たちは一様にマリアンヌが大好きである。大好きすぎておかしな発言が多々ある。こうやって見てってドーナツ越しに見てってことですよね。ドーナツ越しで天使ってなに?
「奥様、フランツ様、マリアンヌ様のお料理は最高ですよ」
ドーナツ越しに2人は真剣にマリアンヌを見ていた。右目で見て天使だと言い、左目でも見てみようと言いあい、そしてやっぱり天使だったとうなづきあう。その様子にセバスチャンが口を挟んだ。
「セバス、マリアンヌの料理を食べたの?」
途端にお母様の目つきと口調が厳しくなった。
「ハイ、頂戴いたしております」
しかしセバスチャンは臆することなくしれっと答える。
「そうなの、私より先に」
お母様はそう言うと大口を開けてドーナツを齧った。正直そんな大口を開けるとは思わなかった。
「美味しいっ!」
お母様の目が大きく見開かれ、モグモグと動く口を手で隠しながら叫んだ。
「僕もいただくよ」
フランツ兄様もドーナツを頬張る。目を見開きもぐもぐと口を動かしながら、何度もうなづいている。
「なんて美味しいんだ!」
「本当に」
「ありがとうございます」
私は嬉しくなってお礼を言う。やはり私の作った料理を美味しく食べてもらうのは、何より嬉しい。こうやって目の前で喜んでもらうのは本当に有難く思う。
「レオポール兄様もドーナツはお気に入りなんです」
そう言いながら、ふとフランツ兄様をみると目が怖かった。今までご機嫌だったのに、スッと目が変化した。
「マリは兄上と僕とどっちが好きなのかな?」
「へ?」
「僕がいなかったから、もしかしたら、マリは僕のことを忘れちゃった?」
捨てられた子犬のような目で私を見つめてくるフランツ兄様。忘れるも何も、実は思い出しもしなかったとはいえない。こちらにも色々とあったのだ。何しろ中身がいれちがったのだから。愛する妹の中身が違うということに気がつかないのだろうか。でもそんな荒唐無稽な話は思いつきもしないだろう。
「ま、まさか」
私はドキドキしながら答えた。答えを間違えたらきっともっと恐ろしいことになる気がする。
「僕のこと、毎日考えてた?」
「も、もちろん」
「僕に会いたかった?」
「そ、そりゃあ、もう」
お兄様は一言言うたびに近づいてくる。その顔はとてつもなくかっこよくて見惚れてしまうくらいなのだが、何ともいえない圧に負けそうになる。
「じゃあ、マリは僕のことが大、大、大好きなんだね!」
「は、ハイ」
とりあえず答える。そんな私たちのやりとりを隣で見ながら、お母様は何個目かのドーナツをもぐもぐ食べている。
「フランツ、もうなくなるわよ」
「えっ、母上。僕の分は?」
「ないわよ」
お母様の笑顔も最高だった。最高の笑顔でお母様は仰った。
「レオポールに勝ちたけりゃ、量を食べるのよ」
「な、なるほど」
フードファイター?フランツ兄様は両手にドーナツを持ちガツガツと食べ出した。もっと味わってくれ、と心の中で思ったが、私は何も言えなかった。
「ハイ!」
お母様とフランツ兄様と一緒にお茶の時間である。お母様はドーナツを持ち上げ、不思議そうに見ている。そしてドーナツの穴から私を見つめる。お母様も美人である。子どもを3人産んでいるとは思えない。ドーナツ越しに見てもお美しい。
「見て、フランツ。こうやってみるとマリアンヌって本当に天使よね」
「当たり前ではないですか。何を言っているのです、母上。マリが天使なのは当然でしょう
?」
「そうなのよ、天使を産めた私って世界で一番ラッキーな女だと思うの」
マリアンヌの両親と兄たちは一様にマリアンヌが大好きである。大好きすぎておかしな発言が多々ある。こうやって見てってドーナツ越しに見てってことですよね。ドーナツ越しで天使ってなに?
「奥様、フランツ様、マリアンヌ様のお料理は最高ですよ」
ドーナツ越しに2人は真剣にマリアンヌを見ていた。右目で見て天使だと言い、左目でも見てみようと言いあい、そしてやっぱり天使だったとうなづきあう。その様子にセバスチャンが口を挟んだ。
「セバス、マリアンヌの料理を食べたの?」
途端にお母様の目つきと口調が厳しくなった。
「ハイ、頂戴いたしております」
しかしセバスチャンは臆することなくしれっと答える。
「そうなの、私より先に」
お母様はそう言うと大口を開けてドーナツを齧った。正直そんな大口を開けるとは思わなかった。
「美味しいっ!」
お母様の目が大きく見開かれ、モグモグと動く口を手で隠しながら叫んだ。
「僕もいただくよ」
フランツ兄様もドーナツを頬張る。目を見開きもぐもぐと口を動かしながら、何度もうなづいている。
「なんて美味しいんだ!」
「本当に」
「ありがとうございます」
私は嬉しくなってお礼を言う。やはり私の作った料理を美味しく食べてもらうのは、何より嬉しい。こうやって目の前で喜んでもらうのは本当に有難く思う。
「レオポール兄様もドーナツはお気に入りなんです」
そう言いながら、ふとフランツ兄様をみると目が怖かった。今までご機嫌だったのに、スッと目が変化した。
「マリは兄上と僕とどっちが好きなのかな?」
「へ?」
「僕がいなかったから、もしかしたら、マリは僕のことを忘れちゃった?」
捨てられた子犬のような目で私を見つめてくるフランツ兄様。忘れるも何も、実は思い出しもしなかったとはいえない。こちらにも色々とあったのだ。何しろ中身がいれちがったのだから。愛する妹の中身が違うということに気がつかないのだろうか。でもそんな荒唐無稽な話は思いつきもしないだろう。
「ま、まさか」
私はドキドキしながら答えた。答えを間違えたらきっともっと恐ろしいことになる気がする。
「僕のこと、毎日考えてた?」
「も、もちろん」
「僕に会いたかった?」
「そ、そりゃあ、もう」
お兄様は一言言うたびに近づいてくる。その顔はとてつもなくかっこよくて見惚れてしまうくらいなのだが、何ともいえない圧に負けそうになる。
「じゃあ、マリは僕のことが大、大、大好きなんだね!」
「は、ハイ」
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「フランツ、もうなくなるわよ」
「えっ、母上。僕の分は?」
「ないわよ」
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「レオポールに勝ちたけりゃ、量を食べるのよ」
「な、なるほど」
フードファイター?フランツ兄様は両手にドーナツを持ちガツガツと食べ出した。もっと味わってくれ、と心の中で思ったが、私は何も言えなかった。
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