145 / 220
145
「これはうまいな」
ようやく食事になった。ちなみにお茶を淹れてくれたのはメアリである。メアリは何も言わなかったけど、時々私のことを気の毒なものを見ているように感じる。後でゆっくり聞いてもらいたい。王族との付き合いというのは本当に大変なのだ。
「同じものを騎士団にも提供してくれたのだろうか」
ドミニク様の問いに「いいえ」と答えた。
「中の具は同じものを騎士団に送りましたが、こちらではトーストしたパンを使用しました」
フルーツサンド以外は今回トーストしたパンを使用した。なんとなく食べたくなったのだ。トーストした方がサクサクして美味しいし、食べ応えがある。
「すると、レオポールとは少し違うものを食べたということになるな」
ドミニク様がなぜだかニンマリと笑った。
「リィ、この中身は何?」
「それはローストビーフです。昨日の夕飯でしたが、パンに挟むとまた違う印象で」
「昨日の夕飯?レオポールは食べたのだな」
「はい」
さっきから何故レオポール兄様が出てくるのだろうか。
「奴はここに来たがったのだが、魔獣の世話があるからね。どうせ夜になったら帰ってくる訳だし、それなら私が来るべきだと思って。魔獣についても話したかったし」
「叔父上は騎士団の仕事があるのですから、お忙しいでしょう。魔獣のことなら私が聞いておきますので、お早くお戻りください」
「いや、俺がいなくても仕事に問題はない。そのように普段から鍛えている」
いなくてもいい訳ないと思うけど、帰れと言っても帰らないだろうからさっさと食べて話をしよう。じゃないと、2人がだんだん険悪な様子になってきた。
「クロは大丈夫でしたか?」
とりあえず空気を変えるためクロの話題を出してみた。
「あぁ、あの魔獣。レオポールが布で包んで自分にくくりつけてたな」
なんかおかしなことを聞いたぞ。
「え?」
「自分から離すと危険だ、とか言って」
「そうそう、まるで人間の赤ちゃんみたいに」
つまり、抱っこひもというかスリング?それをつけて仕事している?兄様は立派な騎士のはずなのに・・・。
「魔獣研究のためだ。本当に頭が下がるよ」
「そうですね、そういう人がいてこそ、研究は進むというものです。魔獣を嫌う人がいる中、率先してそんなことするんですから」
バカにされるかと思いきや、感心されていた。
「他の魔獣はどんなものなのでしょうか?」
猫がいるなら犬もいていいはず。なんだかワクワクしてくる。
「問題がないとわかれば一度見てみる?」
「はい、ぜひ」
元の世界でも動物は嫌いではなかった。ただ犬には好かれたのだが、猫には嫌われた。大抵の猫は私をみると逃げ出したのだ。撫でようと手を出しても、フギャーと鳴かれた。クロが逃げ出さなくてよかった。
「魔獣が人間の世界で役に立つとわかれば、すごいことなんだ」
殿下はそう言って目を輝かせた。
「今までは魔獣は人間に害をなすものと捉えられていた。でも人間と共存できることが分かれば、魔獣征伐の人員を減らせるし命を落とすことも少なくなる。やり遂げたいと思ってるんだ」
確かに、魔獣が元の世界の家畜や愛玩動物に近いなら共存できるはずだ。そのためにも魔獣について学ばないといけない。
「しかし、マリアンヌ嬢の料理は本当に美味しいな」
「簡単なものですみません」
元日本人なのでつい謙遜してしまう。褒め言葉に弱いのだ。
「簡単って・・・。これで簡単と言われたら・・・」
「今いる料理人は仕事をしてないことになるな」
サンドイッチは具が用意できていれば挟むだけなので簡単である。現に元彼には手抜きと言われたことがある。思い出したら腹が立つけど。
「叔父上、リィは働きすぎと思いませんか」
「思う。しばらく城で静養させるべきだ」
「そうですね」
何を結託してるんだか。
「殿下、私は料理を作っている方が気持ちが安らぐんです」
料理している時だけ1人になれるからね。これは内緒で絶対言わないけど。
「リィ・・・」
殿下に涙ぐまれた。
「なんて純一無雑な・・・」
「さすが・・・」
さらに2人は涙ぐみ、気づけば側にいるメアリまで目を抑えているのだった。
あなたにおすすめの小説
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜
犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。
これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。
モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~
みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。
どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。
一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。
その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。
これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。
カクヨムにもサブタイ違いで載せています。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。