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しおりを挟む「つまり、木の上に鳥の巣があったと」
ギルバート様が頭を押さえながら、フローラ様へお尋ねになっています。フローラ様は満面の笑みでギルバート様へうなづいています。ドレスのレースの穴には葉っぱや木の枝が刺さり、綺麗にセットしてあった髪にも葉っぱがついています。
「えぇ、それをマグヌス様がスズメの巣だとおっしゃって」
「フローラ嬢は違うと言うのだ。オナガの巣だと言い張って」
「だってスズメにしては大きくございませんでしたか」
「いや、大家族のスズメであろう」
「そんなに大家族でしょうか」
お二人は楽しそうにそんな話をしています。フローラ様はドレスにハイヒールという出立ちで私なら歩くのも大変なのに、軽々と木に登って確かめようとされたのでした。それをマグヌス様も追いかけて、そして皇后様のお茶の部屋を覗いてしまったという成り行きです。
アンディ様もエディ様も笑いを堪え、なんとか我慢をしています。
「お二人はしばらく別室にて待機してください」
「はぁい」
「話の続きはその部屋でしよう」
仲良くお二人が出て行かれ、後に残ったマグヌス様のお付きの方々がギルバート様へ詰め寄ります。
「なんとか、穏便にしていただきたい」
「マグヌス様があんなに楽しそうなお顔をされているのは、初めてでございます」
確かにお二人とも楽しそうでした。フローラ様はいつも厳しい顔で私のことを見ていたので、笑顔になるなんて思いませんでした。エディ様がお好きだと思っていたのですが、マグヌス様と気が合ったのでしたら何よりです。
「陛下の御心しだいです」
ギルバート様はため息をつかれました。
「ギル、なんとかとりなしてやってくれ」
「うん、そうしたらこっちの被害も少なくなるからね」
アンディ様とエディ様のご意見にギルバート様は頭を左右に振りました。
「私としてもそうしたいのは山々でございます」
ギルバート様がこちらをチラリと見ました。私は皇后様と2人でソファに座り、様子を見ていました。
「私からもお願いするわね」
皇后様はにっこり微笑みました。
「畏まりました。今回はアリス様にも害がございませんでしたので、なんとか陛下にはそれでお許し頂こうかと思います」
「フローラがマグヌスとうまくいけばいいわ。マグヌスは新しい領地に向かうし、フローラもついていけるようにしてあげないとね」
皇后様の笑顔は少しいつもと違うような気がします。どこが違うかは分かりませんが、大人の微笑み、という感じがしました。
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