京都に住んで和風ファンタジー(時には中華風)の取材などする日記

washusatomi

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風俗博物館に行きました(冊子作り)

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 平安時代の雅な風俗を、4分の1ドールハウスで見せて下さる風俗博物館。
 受付でいただける解説資料も全12頁と充実したものです。

 その資料に、2024年大河ドラマ「光る君へ」について言及がありました。
 以下、引用です。
*****
「光る君へ」では「『源氏物語』の著者・紫式部を主人公とした平安絵巻が情趣深く、色鮮やかに描かれて」おり、『紫式部日記』や『枕草子』、藤原道長などの貴族の日記に記された「史実を基に構成された歴史ドラマでありながら、『源氏物語』を思わせるさまざまなエピソードをふんだんに取り込んだ構成となっている」
*****

 風俗博物館は以上のように「光る君へ」を評価し、そして自館の展示について「著者・紫式部が中宮・藤原彰子の女房として宮中に上がることで実際に見聞きしたであろう、史実と符合する行事や出来事を『源氏物語』に描かれた場面と照らし合わせて具現化する」と述べられています。

 その趣旨で、今回すっごくタイミングがよかったのが「冊子作り」。

 9月29日の「光る君へ」で、彰子が一条帝のために源氏物語を美麗な冊子にしたてる場面が放映されたばかりなのです!
 これは史実です。

 鷲生は「光る君へ」の放送が終わると、PCにかじりついてXでワイワイ話題になっているのを眺めるのも楽しみにしているのですが(鷲生も感想を投稿してます)。

 いやー、この冊子作り。ドラマで時間を割いて映し出されてましたし、その後のXの反応も大盛り上がり。「やんごとなき同人誌づくりキター!」とw

 鷲生も、とある中華ファンタジーの二次創作から創作活動をスタートさせています。鷲生自身は紙の本を作ったことはありませんし、同人誌展示即売会(コミケとかですねw)にも足を運んだことはないのですが、他の同人作家様から薄い本を購入したことありますw(郵便為替を送ってw)。

 どんな質感のどんな色の紙を選ぶか、表紙のデザインはどうするか。遊び紙を入れたりとか箔押ししたりとか。作者様の美意識が発揮されるところであり、紙媒体の同人誌作る人の楽しみなのだろうと思います。
 おつきあいのある同人サイト様も、コミケ前に気合入れてらっしゃいましたしねー。

 そういった方々にとって、「光る君へ」の冊子作りのシーンは、とーっても身近に感じられたようですよwww

『源氏物語』では「梅枝」の巻、明石の姫君の東宮入内のための準備で「冊子作り」が描写され、風俗博物館でも「紫式部の実体験を踏まえた」とされています。

『源氏物語』は当時のものが残っていないので原型は不明ですが、「冊子本で最も古い」ものも「その次に古い冊子」も「粘葉装」なので、「光る君へ」でも「風俗博物館」でも「冊子作り」の場面は「粘葉装」を採用しています。

 その「粘葉装」とは……。
 風俗博物館の資料では以下のように解説されます。

「粘葉装とは書写された紙を一枚ずつ二つ折りにし、折り目の方を糊付けして貼り合わし、綴じていく方法。この粘葉装で綴じ た冊子は料紙の折り山で糊付けされるために、頁を繰ってゆくときに、完全に開けるところと糊代のために奥までひらかない頁 とができる。このため、開くと蝶が羽を広げた姿に見える頁があることより、胡蝶装とも呼ばれる。

 この粘葉装の冊子の場合は必然的に裏表使いとなり、継紙では両面が表になることより、その工夫が細部に凝らされた。継紙の 技法には大きく切り継ぎ (直線で切り継いだもの)、破り継ぎ(構想に忠実に破って継いだもの)、重ね継ぎ(女房装束のかさね 色目に見られるようなグラデーションに継いだもの)があり、使う技法によって趣味の良し悪しが問われた。」

 そして、風俗博物館では「冊子作りの手順として『白描給料紙金光明経』『白描絵料紙理趣経』の下絵の女房の冊子作りや、『源氏物語』「梅枝」の巻に記された冊子作りの場面を参考に、 冊子の料紙になる継紙を作り、選ばれた料紙に物語を書き写し、それを糊で綴じていく女房たちの姿を展示」しておられます。

 写真はnoteに投稿しております(※1)

 展示の最初は光源氏が袿姿で筆を取っている場面です。男性の袿姿は「一番くつろいだ服装で、客人はもとより、目上の家族であっても人前に出るには憚られる服装であった」とのこと。
 解説は、そんな貴公子のプライベートショットだから「艶っぽい」という風におっしゃるのですが……うーん?w

 それよりも、その隣の女君達が作業している場面の方が見てて楽しかったです。
 紙を切る人、継ぎ合わせる人、書写をする人、糊付けする人……。

 作業は夜にも及んだのか、この場面では「室内 照明器具・燈台」についても解説と展示がありました。
 以下に引用しておきます。

「室内の生活が大半で、夜の行事が頻繁であった平安貴族の間では、室内照明器具である燈台が重宝された。国宝『源氏物語絵 巻』「横笛」の巻には雲居雁が物の怪に憑かれて泣きだす乳児をあやす場面で燈台が描かれている。燈台の種類には高燈台・切燈台・結燈台(主に神事などに使用)とあり、単に「大殿油まいる」と言った場合にはほとんどが高燈台を指した」

「この高燈台は、室内をある程度広範囲に照らす場合には重宝するが、書写や裁縫、絵巻を見る場合には不便であるため、近くを照らす場合には背の低い切燈台が用いられ、その応用の形態として、本来は食事用の台である高杯を逆さにし、底の部分に油坏を置き、燈心を油に浸して火を灯した「高杯燈台」と呼ばれる照明器具も使われた。」

「このことは『枕草子』の「宮にはじめて参りたるころ」の段で、中宮定子が清少納言に絵を取り出して見せている場面に、「高杯に参らせたる御殿油なれば、髪の筋なども、なかなか昼よりもけそうに見えて、まばゆけれど」とあり、上流貴族の間で行われた、簡易な応用に驚く一段である。」

 noteの写真の中では、4枚目の、筆者している女性の人形の前に二つ置かれているのがそれぞれ、高燈台と切燈台なのではないかと思います。

 結燈台は、三川みりさんの和風ファンタジー『龍の国幻想』シリーズ(※2)によく登場しますね。

 さて。
 今回、この冊子作りの展示の向かいに、男性の「直衣」の布の色の展示もありました。

「内裏に参内する勤務服は位で色の定め」があるものですが、雑袍である直衣での参内も許されることもあります。
「直衣は冬は蝶丸の白、裏が二藍、藍は絞紗三重襷文の二藍」だそうです。
 で、二藍というのは紅と藍とで染めるもので、若い人は赤みが強く、年齢が高くなるにしたがって青みの強いものを着用したのだそうです。
 風俗博物館では「若年」「壮年」「老年」それぞれの色を並べて展示して下さっていたので、色の違いが分かりやすかったですよ~。

冊子作りと直衣の色は、noteの同じ記事にまとめておりますので、よろしければご覧くださいね!

****

※1 note「2024年10月風俗博物館展示(冊子づくり・直衣の色)」
https://note.com/monmonsiteru/n/n82b9611ae705

※2 三川みり『龍の国幻想』シリーズ 新潮社特設サイト https://www.shinchosha.co.jp/special/ryuunokunigensou/
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