6 / 10
戻る場所
6話
第6話 兄と弟の距離
まひろくんは、いつも少し遅れて現れる。
空気を読むのが下手なわけじゃない。
ただ、読む前に動いてしまうだけだ。
「え、もう終わった? 早くない?」
そう言いながら、資料を覗き込む。
場の流れが変わっていることに気づいていない顔。
弟分の配信者仲間……。
彼は感情で動く。
熱量があり、正直で、裏表がない。
その分、現場の温度に影響されやすい。
「一緒にやらないの?」
「前みたいにさ」
悪気はない。
むしろ、純粋な疑問だ。
私は少し考えてから答える。
「今は、それぞれでやるんだよ」
まひろくんは一瞬だけ黙る。
納得したわけじゃない。
でも、否定もしない。
兄は、ここで口を挟まない。
説明もしないし、説得もしない。
弟が自分で理解するまで、待つ。
それが、この距離だ。
弟ぶんは守りたい存在だけど、
守りすぎると、育たない。
兄貴分(織木)はそれを知っている。
まひろくんはそのうち、
自分の企画、
自分の表現を見つけるだろう。
焦っている今は、まだ途中だ。
「まあ、また一緒にやればいいか」
そう言って、まひろくんは笑う。
その軽さが、救いでもある。
兄は静かに場を整え、
私は言葉を整える。
弟は転びながら、前に出る。
役割は違う。
立つ場所も違う。
でも、線はつながっている。
兄と弟の距離は、
上下じゃない。
近づきすぎないことを、
互いに許しているだけだ。
まひろくんが去ったあと、
織木は一言だけ言った。
「大丈夫。あの子は、自分で選ぶ」
私は頷く。
それでいい。
境界線は、
守る人と、越えようとする人、
両方がいて初めて、形になる。
鏡に映るのは、
三人分の立ち位置。
兄は前に出ない。
弟は前に出たがる。
私は、戻る場所を持っている。
その配置が、
今の私たちには、ちょうどよかった。
まひろくんは、いつも少し遅れて現れる。
空気を読むのが下手なわけじゃない。
ただ、読む前に動いてしまうだけだ。
「え、もう終わった? 早くない?」
そう言いながら、資料を覗き込む。
場の流れが変わっていることに気づいていない顔。
弟分の配信者仲間……。
彼は感情で動く。
熱量があり、正直で、裏表がない。
その分、現場の温度に影響されやすい。
「一緒にやらないの?」
「前みたいにさ」
悪気はない。
むしろ、純粋な疑問だ。
私は少し考えてから答える。
「今は、それぞれでやるんだよ」
まひろくんは一瞬だけ黙る。
納得したわけじゃない。
でも、否定もしない。
兄は、ここで口を挟まない。
説明もしないし、説得もしない。
弟が自分で理解するまで、待つ。
それが、この距離だ。
弟ぶんは守りたい存在だけど、
守りすぎると、育たない。
兄貴分(織木)はそれを知っている。
まひろくんはそのうち、
自分の企画、
自分の表現を見つけるだろう。
焦っている今は、まだ途中だ。
「まあ、また一緒にやればいいか」
そう言って、まひろくんは笑う。
その軽さが、救いでもある。
兄は静かに場を整え、
私は言葉を整える。
弟は転びながら、前に出る。
役割は違う。
立つ場所も違う。
でも、線はつながっている。
兄と弟の距離は、
上下じゃない。
近づきすぎないことを、
互いに許しているだけだ。
まひろくんが去ったあと、
織木は一言だけ言った。
「大丈夫。あの子は、自分で選ぶ」
私は頷く。
それでいい。
境界線は、
守る人と、越えようとする人、
両方がいて初めて、形になる。
鏡に映るのは、
三人分の立ち位置。
兄は前に出ない。
弟は前に出たがる。
私は、戻る場所を持っている。
その配置が、
今の私たちには、ちょうどよかった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。