kotookiー境界線の鏡のむこうへー2人の台本師ー

天咲琴乃 あまさき ことの

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kotooki

10話

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第10話 鏡の向こうへ

鏡は、
いつも境界線のこちら側にあった。

映すのは事実だけで、
解釈までは与えない。
逃げ場を塞ぐかわりに、
選択肢を奪わない。

私たちは、
鏡の前で何度も立ち止まった。
越えない線を確かめ、
引き直す線を決め、
黙って進む日を選んできた。

終わりは、派手には来ない。
拍手も、宣言もない。
ただ、静かに次のページが開く。

私は作家として、
言葉の深みに戻る。
他人の人生を借りずに、
自分の声で世界を切り取る。

織木はプロデュースの現場へ、
人と人の間に道を引く。
選択肢を用意し、
決断は相手に返す。



ふたりの配置は、もう揺れない。

再会の約束はしない。
代わりに、
戻れる線を残す。

境界線は、
断ち切るための刃じゃない。
尊重のための余白だ。

鏡の向こうへ行く、というのは、
別の世界に逃げることじゃない。
ここで引いた線を携えたまま、
次の場所へ歩くことだ。

私は最後に、鏡を見る。
そこに映るのは、
誰かの期待でも、
誰かの恐れでもない。

選び続けてきた自分の輪郭。

ペンを置く。
画面を閉じる。
そして、外へ出る。

離れていても、ひとつ。
同じ線を大事にしている限り。

鏡は、もう振り返らない。
必要なくなったからだ。

境界線の向こうは、
最初から、未来だった。



  ー  織木が、いくところ、館花ありー


End
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