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-2日目-
「リプレイ」
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ピピピ ピピピ ピピピ ピピピピピピピピピピピピ・・・・・・。
朝6時45分。スマートフォンが、電子音の音量と速度を上げ、わたしを叩き起こそうとするいつものアラーム音で目を覚ました。
機械のくせにせっかちだなぁ。
頭の中で呟きながら、わたしは利き手である右手を伸ばした。
あれ、無い?いつもある場所のサイドテーブルの上にスマートフォンが無かった。
ん?この感覚、つい最近感じなかったっけ?コレってデ・ジャヴ??
わたしの頭の内にこれまで感じた中でも最大の違和感が生じた。
そうよ、昨日の朝と同じじゃない!という事は・・・寝ぼけた両眼を無理矢理見開いて左手を視る。
やはり、それはそこにあった。
わたしの左手には、アラーム音の鳴るスマートフォンがしっかりと握られていた。
軽いパニックに陥りそうになるのを何とか抑え込みながら、低血圧のボヤケた頭にムチを打って、この先の展開を思い出そうと懸命に試みる。
けれども、あいにくまず最初に思い浮かんだのは、わたしの夕べの臨終の光景だった。
ハイスピードのスローモーション映像の様に頭の中にゆっくりとよみがえり再生し始める。
「もう零時か。楽しい時を過ごしていると時間の過ぎるのは早いな。まどかは終電何時だったっけ?まどか?まどか、おいどうしたんだ?まどかッ!?」
わたしが誕生日にプレゼントしてあげたのとは違う高級腕時計をこれ見よがしに見せびらかしていた彼が、視線をわたしに移してから血相を変えて叫び始めた。
向かいに座っていたわたしはというと、呼吸困難に陥り、言葉を発することも出来ないまま、激しく痛む胸を押さえてディナーテーブルに突っ伏して倒れこんだ。
驚きの形相で、彼がわたしに話し掛けてくるがもはや何も聴こえない。
お願い。胸が苦しいから、そんなに身体を揺すらないでよ!
彼の手を払い除けたいのだけれど、もう両腕すらも動かない。
彼と同じように慌てふためいた足取りで、馴染みのウェイターがバタバタと駆け寄ってくる。
彼らよりもやや落ち着いている隣のテーブルに座っていた紳士が、彼に向かって身に触れない様に叱りつけてくれたみたいで、ようやく揺さぶり続けていたわたしの身体から離れてくれた。
やはり、紳士に何かを命じられたウェイターが弾かれた様にカウンターへと飛んで帰る。
紳士は、自分のスマートフォンを取り出すと、何処かへ電話を掛け始めた。恐らく119だろうと予想出来た。
彼はというと、その間もただオロオロとしているばかり。いつもは調子のいい事ばかり言ってる癖に、何なのよ本当に情けない人ね。
こういう局面に置かれた時に、初めてその人の本質という物がよく現れる。わたしの選んだ彼はこの程度の男だった。それは、彼を選んだわたしの責任でもあり、わたしの男運の無さでもある。
それは普段からわたしの母にもよく言われていた事でもあり、やはり母の言っていた通りでもあった。
先程のウェイターが何か赤い箱を引っ掴んで戻ってきた。多分AEDか何かだろう。
多分というのは、わたしにはコレを使われた記憶がない。つまりはそういう事なのだろう。彼らのパニックの態を見つめている内に、視界が段々と薄暗くなっていき、やがて真っ暗な闇を迎えた。
朝6時45分。スマートフォンが、電子音の音量と速度を上げ、わたしを叩き起こそうとするいつものアラーム音で目を覚ました。
機械のくせにせっかちだなぁ。
頭の中で呟きながら、わたしは利き手である右手を伸ばした。
あれ、無い?いつもある場所のサイドテーブルの上にスマートフォンが無かった。
ん?この感覚、つい最近感じなかったっけ?コレってデ・ジャヴ??
わたしの頭の内にこれまで感じた中でも最大の違和感が生じた。
そうよ、昨日の朝と同じじゃない!という事は・・・寝ぼけた両眼を無理矢理見開いて左手を視る。
やはり、それはそこにあった。
わたしの左手には、アラーム音の鳴るスマートフォンがしっかりと握られていた。
軽いパニックに陥りそうになるのを何とか抑え込みながら、低血圧のボヤケた頭にムチを打って、この先の展開を思い出そうと懸命に試みる。
けれども、あいにくまず最初に思い浮かんだのは、わたしの夕べの臨終の光景だった。
ハイスピードのスローモーション映像の様に頭の中にゆっくりとよみがえり再生し始める。
「もう零時か。楽しい時を過ごしていると時間の過ぎるのは早いな。まどかは終電何時だったっけ?まどか?まどか、おいどうしたんだ?まどかッ!?」
わたしが誕生日にプレゼントしてあげたのとは違う高級腕時計をこれ見よがしに見せびらかしていた彼が、視線をわたしに移してから血相を変えて叫び始めた。
向かいに座っていたわたしはというと、呼吸困難に陥り、言葉を発することも出来ないまま、激しく痛む胸を押さえてディナーテーブルに突っ伏して倒れこんだ。
驚きの形相で、彼がわたしに話し掛けてくるがもはや何も聴こえない。
お願い。胸が苦しいから、そんなに身体を揺すらないでよ!
彼の手を払い除けたいのだけれど、もう両腕すらも動かない。
彼と同じように慌てふためいた足取りで、馴染みのウェイターがバタバタと駆け寄ってくる。
彼らよりもやや落ち着いている隣のテーブルに座っていた紳士が、彼に向かって身に触れない様に叱りつけてくれたみたいで、ようやく揺さぶり続けていたわたしの身体から離れてくれた。
やはり、紳士に何かを命じられたウェイターが弾かれた様にカウンターへと飛んで帰る。
紳士は、自分のスマートフォンを取り出すと、何処かへ電話を掛け始めた。恐らく119だろうと予想出来た。
彼はというと、その間もただオロオロとしているばかり。いつもは調子のいい事ばかり言ってる癖に、何なのよ本当に情けない人ね。
こういう局面に置かれた時に、初めてその人の本質という物がよく現れる。わたしの選んだ彼はこの程度の男だった。それは、彼を選んだわたしの責任でもあり、わたしの男運の無さでもある。
それは普段からわたしの母にもよく言われていた事でもあり、やはり母の言っていた通りでもあった。
先程のウェイターが何か赤い箱を引っ掴んで戻ってきた。多分AEDか何かだろう。
多分というのは、わたしにはコレを使われた記憶がない。つまりはそういう事なのだろう。彼らのパニックの態を見つめている内に、視界が段々と薄暗くなっていき、やがて真っ暗な闇を迎えた。
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