午前零時のタイムループ

赤松帝

文字の大きさ
7 / 23
-2日目-

「リプレイ」

しおりを挟む
幾つかの違和感をやり過ごしながら、これはやっぱりどうにもおかしい。そう本格的に意識して、疑心が確信に変わったのは、冒頭の課長の書類の件での同僚とのやりとりからだった。


「川上さん、井ノ上課長が昨日頼んでおいた書類、どうしたって君のことを探してたよ。」

「もう沢井くん悪い冗談止めてよ。昨日たっぷりお小言もらったばかりなんだから。」

「え?そうなのかい?よく解らないけど、課長はまだ君のこと探し回ってたぜ。午後一にFAXしなきゃどうとかってさ。」

「エ?あらそう。変ね?」

「無い無いって騒いでたよ。また例の自分で何処かへ置いちゃった病かも知れないけどな(笑)」

“あれ?この台詞昨日と同じだ。”

「・・・そうね。どうもありがとう。」

「どう致しまして。きっと課長にはどこかに物を隠しちまう小人でも憑いてるんだよ。」

“この台詞も一言一句変わらず、昨日彼から聞いた。”

「・・・そうかもね。」

「それじゃ。俺も休憩入るとするかな。」

「いってらっしゃい。」

どうやら沢井が悪ふざけをしている訳ではないみたいだ。沢井と別れた後、確かめるつもりで、その脚で井ノ上課長の所へと向かう事にした。


「井ノ上課長、お呼びでしょうか?」

「川上くん困るよ!大事な書類を渡す前に食事に行っちゃ。午後一にお得意さんにFAXするって言っちゃってあるんだからさ!」
課長の第一声は、やはり昨日と同じだ。

「申し訳ありません。昨夜の内に仕上げて書類ケースにしまっておいたのですけど。」

「さっき見てみたけど無かったよ。ホラね?」
課長がもう一度書類入れの一番上の棚をを開ける。

「本当ですね。もしかしたら、誤って二段目に入れてしまったのかも知れません。」

「本当かい?あっ在った!在ったよ!」
課長が上から二段目の棚を開くと、やはりくだんのルーズリーフは、一番上に鎮座していた。

「わたしの不注意でした。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
わたしは言い訳する事なく、課長にしっかりと謝罪した。

「いやいや僕の方も下までちゃんと見ておけば良かったんだ。すまなかったね。先方には、1時間だけ待ってもらってあるから安心していいよ。」

「ハイ。以後気をつけます。大変申し訳ありませんでした。」
わたしは重ね重ね頭を下げた。課長はというと、昨日の様子とは打って変わって、口笛まで吹き始めながらFAX送信に取り掛かっていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

処理中です...