午前零時のタイムループ

赤松帝

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-4日目-

「no pain, no gain」

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行く手を塞いでいた改札機がパタンと道を開けると、私は切符を引き抜いた。そういえば切符なんて久しぶりに買った気がする。別にわざわざ買い求める必要は無かったのだけれど、しんどい気分を和らげるため、ほんの少しでもいつもと違うことをしてみたかった。

今から20分後、あの虚ろな眼をした少女が同じくここを通る筈である。
今日の私は、たっぷり時間の許す限り、彼女に膝突き合わせて付き合う覚悟だった。
夜中にはまたリセットされてしまうとしても、今日という日が次の明日、ううん今日を迎える為の試金石となるのだから。

タンタンタン!リズミカルに階段を駆け上がると、あの娘が後ほど座る筈のベンチを目指した。

ン?昨日は居なかった筈の先客が座っている。
20代後半くらいの中背の男性である。顔はというと、私好みのなかなかいい感じ。
でもはっきりと憶えていないのだが、たしかにどこかで見覚えがある。
さてさてどうしたものか。一瞬躊躇はしたものの、私にはどうにも成し遂げなくてはならない目的がある。
やや距離を開け、同じベンチの端に腰を掛けた。

気のせいだろうか?やっぱりそうじゃない。座ってからずっと、隣の彼にガン見されている。
まあこう言っちゃなんだけど、よくあるいつもの事だわ。気にしないで貴方のせいじゃないの。なにもかも美し過ぎる私のせい。全く私ったら罪深い女。

「あのぉ?」
ホラやっぱり、もう仕方のない人ね。

「何かしら?」
さり気なく小首を傾げてみせる。

「もしかして何かお困りじゃないですか?」

「は?」
突然の思いがけない問い掛けに、間の抜けた返答をしてしまった。いけない!これがこの男の軟派術なのよ。

「ぶしつけにすみません。どこか悩んでいらっしゃる様な気がしたもので。つい声を掛けてしまいました。」
神妙なおもむきで彼は頭を下げた。

「ハァ。」
別に私はさほどお困りではない。今少しこの場で待っていたなら、もっと悩める思春期の乙女が現れるのだ。
そうだ!なんならこのまま彼にバトンタッチしてしまえば、このイケメンは彼女を救ってくれるのしゃないだろうか。まさに救世主!勝手都合で不謹慎な考えが脳裏にを掠めた。
いやいやいや、いくら怖い者知らずの私でも、初めて逢った見ず知らずの相手に、見ず知らずの自殺志願者を押しつけちゃ駄目でしょ。生真面目な私が、即座に猛省していたところ、

「あの・・・間違ってたら本当すみません。もしや電車に飛び込もうとか考えてたりしてません?」

ギクッ!?私はまじまじと彼の顔を凝視した挙げ句、

「よ、よもやよもや!とんでもない、人違いです!!」
虚を衝かれたおかげで、あからさまに挙動不審なリアクションを返してしまった。
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