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誰が茉都香を殺したのか?
誰が茉都香を殺したのか?
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「ねぇ聴いた栞?バラバラ死体で見つかった茉都香の首が見当たらないんだってさ!」
数日後、進学予備校で顔を合わせた同じ中学に通っていた友人の菜摘が声を弾ませながら話しかけて来た。
一体、何処からそんな根も葉もない噂が広まっているのだろう。
おかしな話だ。
そもそも茉都香は行方不明なだけであって、バラバラ死体どころか、手首一つ見つかっていないハズだ(勿論、そんな姿で見つかって欲しくなんかない)。
おおやけには出来ないが、内密に刑事であるわたしの父にも確認してもらっていたので、それは間違いないところだった。
茉都香はわたしと出会ったあの日の夜以来、消失したまま、家にも学校にも戻っていない。
せめて自殺をしようとした彼女の自尊心だけでも守らなければいけない気がして、わたしは誰にもあの晩のことを言えないでいた。
茉都香と別れた後、わたしの母から聞いた話によると、茉都香は進学校の高校に入学して間もなく仲間外れにされ始め、学校内だけでなく、彼女の通っていた進学塾でも無視され、苛められていたそうだった。
近頃はネットを通じて、こうした負の連鎖は直ぐに拡散される。
これは以前犯罪捜査に長けた父に聴いた事なのだが、陰湿で粘着質な嫌がらせをする傾向を持つ小心者は、大概仲間達に罪悪感を共有させる事で、自分が背負うべき罪悪感を分担し軽減しようと図るそうだ。こんなことで軽減されては堪ったものではないと思うが、彼らの心の内では精神的な負担が減り、赤信号を皆で渡る様な大胆さへとすり替えられていく。
こうしてろくでもない仲間が一堂に集まると、今度は自分を大物に見せようとする見栄や虚栄心から、苛めの対象をサディストよろしく徹底的にいたぶり始めて、終いには自分の行動に歯止めが掛からなくなる。また周りに群がるその仲間とやらも同様に類友な訳で、ニヤけた薄ら笑いを浮かべながら、その愚劣な行為に加担する。こうした異常な構図が、時に彼らに心理的な高揚感を生み、度を超えたリンチへと繋がり、殺人へと発展する事件が頻発しているという。
きっと頭のいい茉都香はそんな事態を怖れて、姿をくらませたに違いない。
こんなことならあの時、茉都香を追い掛けていき、無理矢理にでも家まで送り届けて、とことん話しをしておくのだった。
なんでこういう大事なコトに限って、わたしは後になって悔やむ羽目になるのだろう。わたしもまた、彼らとは違う同心円に含まれている小心者の一員なのに違いない。
菜摘の話は続いていた。
「茉都香はみんなの事を憎んでいるんだって。自分を苛めた全員をとても恨んでいて、自分を殺し、その首を持ち去ったいじめっ子を捜し回っているんだって。」
“馬鹿言わないで。茉都香は、虐められて殺されたりなんかしてないわよ!”
思わず、口から出かかったものの、ある意味ではそうとも言えるかも知れないと気づき、その言葉を呑み込んだ。
茉都香は生まれ故郷から見捨てられ、抹殺されたのだ。
数日後、進学予備校で顔を合わせた同じ中学に通っていた友人の菜摘が声を弾ませながら話しかけて来た。
一体、何処からそんな根も葉もない噂が広まっているのだろう。
おかしな話だ。
そもそも茉都香は行方不明なだけであって、バラバラ死体どころか、手首一つ見つかっていないハズだ(勿論、そんな姿で見つかって欲しくなんかない)。
おおやけには出来ないが、内密に刑事であるわたしの父にも確認してもらっていたので、それは間違いないところだった。
茉都香はわたしと出会ったあの日の夜以来、消失したまま、家にも学校にも戻っていない。
せめて自殺をしようとした彼女の自尊心だけでも守らなければいけない気がして、わたしは誰にもあの晩のことを言えないでいた。
茉都香と別れた後、わたしの母から聞いた話によると、茉都香は進学校の高校に入学して間もなく仲間外れにされ始め、学校内だけでなく、彼女の通っていた進学塾でも無視され、苛められていたそうだった。
近頃はネットを通じて、こうした負の連鎖は直ぐに拡散される。
これは以前犯罪捜査に長けた父に聴いた事なのだが、陰湿で粘着質な嫌がらせをする傾向を持つ小心者は、大概仲間達に罪悪感を共有させる事で、自分が背負うべき罪悪感を分担し軽減しようと図るそうだ。こんなことで軽減されては堪ったものではないと思うが、彼らの心の内では精神的な負担が減り、赤信号を皆で渡る様な大胆さへとすり替えられていく。
こうしてろくでもない仲間が一堂に集まると、今度は自分を大物に見せようとする見栄や虚栄心から、苛めの対象をサディストよろしく徹底的にいたぶり始めて、終いには自分の行動に歯止めが掛からなくなる。また周りに群がるその仲間とやらも同様に類友な訳で、ニヤけた薄ら笑いを浮かべながら、その愚劣な行為に加担する。こうした異常な構図が、時に彼らに心理的な高揚感を生み、度を超えたリンチへと繋がり、殺人へと発展する事件が頻発しているという。
きっと頭のいい茉都香はそんな事態を怖れて、姿をくらませたに違いない。
こんなことならあの時、茉都香を追い掛けていき、無理矢理にでも家まで送り届けて、とことん話しをしておくのだった。
なんでこういう大事なコトに限って、わたしは後になって悔やむ羽目になるのだろう。わたしもまた、彼らとは違う同心円に含まれている小心者の一員なのに違いない。
菜摘の話は続いていた。
「茉都香はみんなの事を憎んでいるんだって。自分を苛めた全員をとても恨んでいて、自分を殺し、その首を持ち去ったいじめっ子を捜し回っているんだって。」
“馬鹿言わないで。茉都香は、虐められて殺されたりなんかしてないわよ!”
思わず、口から出かかったものの、ある意味ではそうとも言えるかも知れないと気づき、その言葉を呑み込んだ。
茉都香は生まれ故郷から見捨てられ、抹殺されたのだ。
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