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第5章 銀河宇宙との出会い
5.2 ヤタガラ星系の戦い
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ヤタガラ星防衛軍は、すでにジャラス(ガイア)型艦1~10号艦の内、ドック入りしている3号と8号を除
いた現状における全戦力8艦を、ヤタガラ星から3億㎞の距離に接近しつつある巨大船を遮る位置に展開していた。
ジャラス1号からの連絡を受けて2.5日でこの位置に展開できたが、3隻の巨大艦の艦隊は8Gで減速中であり、まもなく彼らが予告した位置に到着する。防衛艦隊司令官ムスム・セダム上将は、十光秒の距離で置いて自分たちに互いに1光秒の距離を置いて、接近しつつある3隻の超巨大艦の1隻の映像を見ていた。
長さ2.8㎞の矢じりのような形の角ばった艦であり、幅は1.2㎞最大厚さは1.2㎞に及び重量は百メガトンであり、全長200m、重量0.1メガトンの自分の艦の3桁上の重量かつ容量だ。
この元ラザニアム帝国の戦闘艦だったジャラス型も、地球から購入して配備した時は巨大とは思ったが、あの巨大艦は文字通り桁が異なる。しかし、何故あの大きさが必要なのか理解できない。
建設費たるや膨大なはずであり、動力装置や駆動装置の大型化で小さいもの多数より費用効率は良くなるはずではある。単純に重量比でコストは計算できないものの、あの1艦の建設でこのジャラス型がどう見ても1000艦以上建設できるはずだ。
確かに防御力は優れているだろうが、無敵の存在などあるわけがない点を考えれば、あの1艦より100艦のジャラス型の方が有用なはずだ。ただし、たぶん母艦機能を持っているはずで、この艦ほどでなくともある程度の強力な艦載機を多数収納していることは十分考えられる。
「司令官、ジャンプ反応多数、100程度はあるかと思います。地球防衛艦隊からの連絡された位置です」
監視班の士官が連絡して来る。
「よろしい、引き続き監視に当たれ」
『僅か2日半で現れたか。早いな』
と思いながらセザム上将はほっとしながらそれに応じる。
セザムの見ていた監視盤に重力波通信による連絡が入った。
「こちら、地球防衛軍緊急展開艦隊司令官ジョバリエ・マックラン中将だ。ガイア型九十八隻、マザーガーディアン型戦闘機母艦2隻を率いて到着した。直ちにそちらの宙域に向かう」
地球艦隊は、現状ではまだ自分たちの対峙している空間まで8億㎞の距離があって戦闘距離にはなく、十G で加速しても2日以上はかかる。
しかし、地球艦隊は驚くべき行動に出た。
「ああ、地球艦隊ジャンプしました。ほぼ同時です。出現します。2千万㎞の距離です。相対速度100㎞/秒」
監視班からの連絡だ。
なんと、地球艦隊は100隻の艦隊で僅か8億㎞のマイクロジャンプをしたのだ。驚くべく練度であり、セザム上将にはとても自分の艦隊に同じことが出来るとは思わなかった。
続いて、監視班からさらなるアナウンスが入る。
「ああ、巨大艦から小型艦が出現しました。10、20、30、一度に10艦ずつ先頭の艦から出現しています。出現は百艦で止まりました。各艦の重量2千トン長さ五十mの大型艦と相似の形です。各艦とも大型艦と同じ加速度で減速をしています」
「なるほど、地球艦隊の出現に反応したな」
セザム上将が言うと同時に、電波による連絡が入る。
この場合には映像を送ることが可能なので、スクリーンには、ずんぐりした体つきで、目は細く鼻はつぶれたようで、耳が前に向いた顔の男が現れた。彼は頭が分厚い皮のようなものに覆われ、制服のようなものを着ている。額に当たる部分の上に何かの記章のようなものを付けている。これは後でわかったが階級章であり准将の地位を示すものであった。
「私は、シーラムム帝国の第15宇宙艦隊の第2分隊長マラムク・スラ・カザル准将である。
貴惑星ヤタガラはわが帝国艦隊に対抗して艦隊を派遣してきた。たぶん、地球と言う星のものであろう。対抗する以上はその実力を見せてもらおうか。わが艦体の内の先頭の艦である、スムズラス2号とその艦載機のみが攻撃するので、対抗してみるが良い。
もし、逃げるようだったら、惑星ヤタガラを破壊する。遠慮はいらん。破壊するつもりで攻撃するが良い。それから、断っておくがお前たちがラザニアム帝国の艦に使ったという超空間エネルギー転移は、わがスムズラス2号には通用でせんぞ」
この映像は地球防衛軍遠征艦隊でも、1分遅れで捕らえられていた。防衛艦隊のマックラン中将は映像の声を聞きながら「この脳筋め!」とののしった。多分、相手は自分の艦がやられるとは思っていないのだろうが、このように挑発するのは彼らの文化なのだろう。しかし、戦うなかで仮に彼の指揮下のガイア型戦闘艦が破壊されると250人の部下が死ぬのだ。
あの巨大な艦に艦載のレールガンが通用するとは思えないし、ラザニアム型を改良したミサイルも通用しないだろう。しかし、あれから発進した周りの艦載機には中型戦闘艦並みの大きさなのでレールガンで十分通用するはずだ。
超空間攻撃システムを積んだギャラクシー型は、次の200艦と一緒に来るが、それが通用しないとすると正規の武器では打つ手がない。
望みは、ひょっとしたらということで、待機させているマザーガーディアン型母艦のみだが、その無人艦の干渉妨害装置が有効に使えればよいが。また、相手の武器が判らないので、ガイア型が耐えられるかどうか、強化した電磁バリヤーが保ってくれれば良いが。
いずれにせよ、惑星を人質に取られれば戦わないという選択肢はない。マックリン中将はシーラムム帝国艦でとらえられるように自分の映像を送らせ話し始める。
「できれば、そういうような部下が死ぬかも知れない戦いは避けたい」
しかし、2分後返ってきた返事はにべもない。
「だめだ。その場合は惑星ヤタガラを破壊する。1時間後(ラザニアム帝国時間で通知)戦闘開始だ」
そう言うカザル准将の回答である。
「よろしい、やむをえん」
マックリン中将は返事をして、すぐに艦橋にいる参謀を集めて、手早く作戦を決め、その作戦に沿って参謀から次々に指示が飛ぶ。
まず、各艦からこれは有人機でレールガンを搭載兵器とする戦闘機4機が出撃だ。さらに、無人攻撃機を50機搭載している空母に最大加速でさらに速度を高めるように指示。また開戦時間にはガイア型各艦には最大出力で電磁バリヤーを張るように指示する。
さらに、ヤタガラ防衛軍艦艇は、地球艦では改良された電磁バリヤーの強化等の措置がされていないので、下がって戦闘に加わらないようにマックリン中将から、セザム上将を説得した。
開戦時間には、敵艦になるスムズラス2号との地球艦隊の距離は大体5百万kmとなる。
時間だ!しかし、敵超大型艦3艦と、小型戦闘艦百隻は加速して近づいてはいるが、5百万km離れていては秒速十kmのレールガンの弾も飛翔に5十万秒かかるので全く有効射程外である。光速の熱線砲の場合も目標到達まで十七秒間かかっては避けるのは容易である。勝負はお互いに全速加速していて距離が百万㎞以下になってからだと考えている。
しかし、巨大艦スムズラス2号は2百万kmで熱線砲を撃ってきた。すごい集束度であり、この距離で径が5mほどのあのエネルギーでは、おそらくガイア型もぶち抜かれる可能性が高い。そのエネルギーの棒を振りまわすのでかすっても危ないので、斥力装置を使って逃げ回る。
今の距離でこの状態であるため、図体が大きいガイア型にとってはこれ以上近づくのは危険なので、ガイア型は各々十基設置されているレールガンを撃ち始める。
弾の発射速度はわずか秒速10kmであるが、こっちも相手に向かい相手も全速で近づいているので径150㎜の弾の相対速度は400㎞/秒にもなる。無論狙っては打てない公算射撃だが、敵の小型艦は無論、巨大艦でも被害が与えられる可能性が高い。
それは、公算射撃は相手も同じで殆ど無数のレールガンが撃たれているようだ。
マックリン中将は、その飛来方向をAIに計算させて巨大艦が撃ち放った弾が着弾する寸前に艦隊の方向を大きく逸らせた。そのとき、回避運動のなかで未だ撃たれている熱線砲がガイア型の一隻を薙いだ。
ほんの一瞬薙がれただけであったが、その艦はブラックアウトして機能を失って漂流をはじめる。
「ガイア00215です。ただ、強化されたバリヤーと一瞬薙がれただけなので乗員には被害はないかもしれません」
観測班の将校が叫ぶ。
「ああ、戦闘機が!あれは、FG一二〇五です!」
同じように薙ぎ払われ戦闘機が爆発を起こす。
マックリン中将は歯を食いしばる。犠牲無しと言うわけにはいかない。レールガンの弾との軌道はそらしたが、熱線砲は依然として危険であり、これは近くなればなるほど危険だ。
「よし、攻撃機母艦、マザー1及びマザー2、マイクロジャンプだ。通常空間に出次第すべての攻撃機を発進させよ」
これらの攻撃機母艦はひたすら加速させて、敵艦との相対速度を高めていたのだ。マイクロジャンプにより、両艦は敵艦のほぼ相対する位置で距離200万㎞、相対速度1000㎞/秒で出現し、五十機の無人攻撃機を5分で出撃させた。
しかし、その間に巨大艦は別の熱線の刀を出現させて振り廻し始め、マザー1はその刀に十分に長く薙がれ瞬間に爆発した。
「ああ!マザー1が!」
観測員が叫び、マックリン中将は75人の乗員のことを思ってさらに歯を食いしばる。
マザー1は、攻撃機の9割を出撃させたあとであったが、マザー2はマザー1が犠牲になっている間に全攻撃機をかろうじて射出して、回避運動を行って逃げだせた。
射出された全部で95機の攻撃機は、相手の小型艦のレールガンを、無人機なればこその急激な運動で回避しながら超大型艦に迫っていく。
一方で、ガイア型艦はばらばらに分散して、依然レーガンを撃ちさらにミサイル射撃を混ぜながら敵艦隊に迫っていく。その中で、無数に放たれるレールガンの弾をさけるために何度も方向転換を繰り返す。
その中で、1艦、また1艦と熱線銃に薙がれるが幸い爆発したものはない。しかし、1艦ががくんと揺れ、機能を停止する。どてっぱらにレールガンの弾を食らったのだ。その間に動きの軽い有人の戦闘機は大活躍であり、敵小型艦をレールガンで葬っていく。さらにガイア型のレールガンやミサイルが命中する小型艦もありこれらは機能を止める。
しかし、その戦闘の中でわかったことは、レールガンの弾やミサイルは400㎞/秒の速度を持ったものさえ敵超大型艦には全くダメージを与えられなかった。一方で小型艦はどんどん数を減らしている。
こうして交戦しているうちに、ついに無人攻撃群が超大型艦に接敵したが、その間に流石に間近かになったこともあって、レールガンまた熱線砲でやられるものも出てきて、残った機はすでに半分になっていた。
しかし、全機はそのまま巨大艦に突っ込み、艦体にふれる瞬間にレールガンを発射した。その時点の相対速度は千百㎞/秒を越えており、レールガンの発射に加え、攻撃機体の二十五トンの質量が約五十箇所一斉に長さ2.8㎞の艦にめり込み、超高速のメタルジェットとなって艦体を貫いて進んだ。
いくつかは、艦体をぶち抜いて高温のメタルの塊となって飛び去っていったが、大部分は艦体内でとどまって、その熱と巨大な運動量で大破壊をもたらした。数秒後、巨大艦からは赤白光の柱が幾本も噴き出して、あとにはいくつもの赤くなって光った部分が残ったが、艦としては完全にその機能を止めた。
ヤタガラ防衛軍のセザム上将は、旗艦ジャラズ3号でその激しい戦闘の様子を数分遅れで見ていた。
見ている中で、いかなる攻撃も敵の超大型艦を傷つけられないのを胃が痛くなりながら見ていたが、最後にそれが火柱を噴き上げて沈黙したのを見て、思わず喜びに飛び上がった。
部下は抱き合って騒いでいる。
その時を待っていたように、「ああ、多数のジャンプです」
監視士官から知らせがある。
「ああ、これは地球艦隊の航続艦隊の2百隻だろう」
セザム上将が言い、監視士官が確認する。
「確かに約2百隻です」
すぐに重力波通信で連絡がある。
「こちら、地球防衛軍第2次ヤタガラ星系派遣艦体だ」
出力されるこの通信を見て、『ああ、これでシーラムム帝国もおとなしくなるだろう。百隻の艦隊に敗れた彼らが、まさか今の状態で戦いは挑むまい』セザム上将は思った。
いた現状における全戦力8艦を、ヤタガラ星から3億㎞の距離に接近しつつある巨大船を遮る位置に展開していた。
ジャラス1号からの連絡を受けて2.5日でこの位置に展開できたが、3隻の巨大艦の艦隊は8Gで減速中であり、まもなく彼らが予告した位置に到着する。防衛艦隊司令官ムスム・セダム上将は、十光秒の距離で置いて自分たちに互いに1光秒の距離を置いて、接近しつつある3隻の超巨大艦の1隻の映像を見ていた。
長さ2.8㎞の矢じりのような形の角ばった艦であり、幅は1.2㎞最大厚さは1.2㎞に及び重量は百メガトンであり、全長200m、重量0.1メガトンの自分の艦の3桁上の重量かつ容量だ。
この元ラザニアム帝国の戦闘艦だったジャラス型も、地球から購入して配備した時は巨大とは思ったが、あの巨大艦は文字通り桁が異なる。しかし、何故あの大きさが必要なのか理解できない。
建設費たるや膨大なはずであり、動力装置や駆動装置の大型化で小さいもの多数より費用効率は良くなるはずではある。単純に重量比でコストは計算できないものの、あの1艦の建設でこのジャラス型がどう見ても1000艦以上建設できるはずだ。
確かに防御力は優れているだろうが、無敵の存在などあるわけがない点を考えれば、あの1艦より100艦のジャラス型の方が有用なはずだ。ただし、たぶん母艦機能を持っているはずで、この艦ほどでなくともある程度の強力な艦載機を多数収納していることは十分考えられる。
「司令官、ジャンプ反応多数、100程度はあるかと思います。地球防衛艦隊からの連絡された位置です」
監視班の士官が連絡して来る。
「よろしい、引き続き監視に当たれ」
『僅か2日半で現れたか。早いな』
と思いながらセザム上将はほっとしながらそれに応じる。
セザムの見ていた監視盤に重力波通信による連絡が入った。
「こちら、地球防衛軍緊急展開艦隊司令官ジョバリエ・マックラン中将だ。ガイア型九十八隻、マザーガーディアン型戦闘機母艦2隻を率いて到着した。直ちにそちらの宙域に向かう」
地球艦隊は、現状ではまだ自分たちの対峙している空間まで8億㎞の距離があって戦闘距離にはなく、十G で加速しても2日以上はかかる。
しかし、地球艦隊は驚くべき行動に出た。
「ああ、地球艦隊ジャンプしました。ほぼ同時です。出現します。2千万㎞の距離です。相対速度100㎞/秒」
監視班からの連絡だ。
なんと、地球艦隊は100隻の艦隊で僅か8億㎞のマイクロジャンプをしたのだ。驚くべく練度であり、セザム上将にはとても自分の艦隊に同じことが出来るとは思わなかった。
続いて、監視班からさらなるアナウンスが入る。
「ああ、巨大艦から小型艦が出現しました。10、20、30、一度に10艦ずつ先頭の艦から出現しています。出現は百艦で止まりました。各艦の重量2千トン長さ五十mの大型艦と相似の形です。各艦とも大型艦と同じ加速度で減速をしています」
「なるほど、地球艦隊の出現に反応したな」
セザム上将が言うと同時に、電波による連絡が入る。
この場合には映像を送ることが可能なので、スクリーンには、ずんぐりした体つきで、目は細く鼻はつぶれたようで、耳が前に向いた顔の男が現れた。彼は頭が分厚い皮のようなものに覆われ、制服のようなものを着ている。額に当たる部分の上に何かの記章のようなものを付けている。これは後でわかったが階級章であり准将の地位を示すものであった。
「私は、シーラムム帝国の第15宇宙艦隊の第2分隊長マラムク・スラ・カザル准将である。
貴惑星ヤタガラはわが帝国艦隊に対抗して艦隊を派遣してきた。たぶん、地球と言う星のものであろう。対抗する以上はその実力を見せてもらおうか。わが艦体の内の先頭の艦である、スムズラス2号とその艦載機のみが攻撃するので、対抗してみるが良い。
もし、逃げるようだったら、惑星ヤタガラを破壊する。遠慮はいらん。破壊するつもりで攻撃するが良い。それから、断っておくがお前たちがラザニアム帝国の艦に使ったという超空間エネルギー転移は、わがスムズラス2号には通用でせんぞ」
この映像は地球防衛軍遠征艦隊でも、1分遅れで捕らえられていた。防衛艦隊のマックラン中将は映像の声を聞きながら「この脳筋め!」とののしった。多分、相手は自分の艦がやられるとは思っていないのだろうが、このように挑発するのは彼らの文化なのだろう。しかし、戦うなかで仮に彼の指揮下のガイア型戦闘艦が破壊されると250人の部下が死ぬのだ。
あの巨大な艦に艦載のレールガンが通用するとは思えないし、ラザニアム型を改良したミサイルも通用しないだろう。しかし、あれから発進した周りの艦載機には中型戦闘艦並みの大きさなのでレールガンで十分通用するはずだ。
超空間攻撃システムを積んだギャラクシー型は、次の200艦と一緒に来るが、それが通用しないとすると正規の武器では打つ手がない。
望みは、ひょっとしたらということで、待機させているマザーガーディアン型母艦のみだが、その無人艦の干渉妨害装置が有効に使えればよいが。また、相手の武器が判らないので、ガイア型が耐えられるかどうか、強化した電磁バリヤーが保ってくれれば良いが。
いずれにせよ、惑星を人質に取られれば戦わないという選択肢はない。マックリン中将はシーラムム帝国艦でとらえられるように自分の映像を送らせ話し始める。
「できれば、そういうような部下が死ぬかも知れない戦いは避けたい」
しかし、2分後返ってきた返事はにべもない。
「だめだ。その場合は惑星ヤタガラを破壊する。1時間後(ラザニアム帝国時間で通知)戦闘開始だ」
そう言うカザル准将の回答である。
「よろしい、やむをえん」
マックリン中将は返事をして、すぐに艦橋にいる参謀を集めて、手早く作戦を決め、その作戦に沿って参謀から次々に指示が飛ぶ。
まず、各艦からこれは有人機でレールガンを搭載兵器とする戦闘機4機が出撃だ。さらに、無人攻撃機を50機搭載している空母に最大加速でさらに速度を高めるように指示。また開戦時間にはガイア型各艦には最大出力で電磁バリヤーを張るように指示する。
さらに、ヤタガラ防衛軍艦艇は、地球艦では改良された電磁バリヤーの強化等の措置がされていないので、下がって戦闘に加わらないようにマックリン中将から、セザム上将を説得した。
開戦時間には、敵艦になるスムズラス2号との地球艦隊の距離は大体5百万kmとなる。
時間だ!しかし、敵超大型艦3艦と、小型戦闘艦百隻は加速して近づいてはいるが、5百万km離れていては秒速十kmのレールガンの弾も飛翔に5十万秒かかるので全く有効射程外である。光速の熱線砲の場合も目標到達まで十七秒間かかっては避けるのは容易である。勝負はお互いに全速加速していて距離が百万㎞以下になってからだと考えている。
しかし、巨大艦スムズラス2号は2百万kmで熱線砲を撃ってきた。すごい集束度であり、この距離で径が5mほどのあのエネルギーでは、おそらくガイア型もぶち抜かれる可能性が高い。そのエネルギーの棒を振りまわすのでかすっても危ないので、斥力装置を使って逃げ回る。
今の距離でこの状態であるため、図体が大きいガイア型にとってはこれ以上近づくのは危険なので、ガイア型は各々十基設置されているレールガンを撃ち始める。
弾の発射速度はわずか秒速10kmであるが、こっちも相手に向かい相手も全速で近づいているので径150㎜の弾の相対速度は400㎞/秒にもなる。無論狙っては打てない公算射撃だが、敵の小型艦は無論、巨大艦でも被害が与えられる可能性が高い。
それは、公算射撃は相手も同じで殆ど無数のレールガンが撃たれているようだ。
マックリン中将は、その飛来方向をAIに計算させて巨大艦が撃ち放った弾が着弾する寸前に艦隊の方向を大きく逸らせた。そのとき、回避運動のなかで未だ撃たれている熱線砲がガイア型の一隻を薙いだ。
ほんの一瞬薙がれただけであったが、その艦はブラックアウトして機能を失って漂流をはじめる。
「ガイア00215です。ただ、強化されたバリヤーと一瞬薙がれただけなので乗員には被害はないかもしれません」
観測班の将校が叫ぶ。
「ああ、戦闘機が!あれは、FG一二〇五です!」
同じように薙ぎ払われ戦闘機が爆発を起こす。
マックリン中将は歯を食いしばる。犠牲無しと言うわけにはいかない。レールガンの弾との軌道はそらしたが、熱線砲は依然として危険であり、これは近くなればなるほど危険だ。
「よし、攻撃機母艦、マザー1及びマザー2、マイクロジャンプだ。通常空間に出次第すべての攻撃機を発進させよ」
これらの攻撃機母艦はひたすら加速させて、敵艦との相対速度を高めていたのだ。マイクロジャンプにより、両艦は敵艦のほぼ相対する位置で距離200万㎞、相対速度1000㎞/秒で出現し、五十機の無人攻撃機を5分で出撃させた。
しかし、その間に巨大艦は別の熱線の刀を出現させて振り廻し始め、マザー1はその刀に十分に長く薙がれ瞬間に爆発した。
「ああ!マザー1が!」
観測員が叫び、マックリン中将は75人の乗員のことを思ってさらに歯を食いしばる。
マザー1は、攻撃機の9割を出撃させたあとであったが、マザー2はマザー1が犠牲になっている間に全攻撃機をかろうじて射出して、回避運動を行って逃げだせた。
射出された全部で95機の攻撃機は、相手の小型艦のレールガンを、無人機なればこその急激な運動で回避しながら超大型艦に迫っていく。
一方で、ガイア型艦はばらばらに分散して、依然レーガンを撃ちさらにミサイル射撃を混ぜながら敵艦隊に迫っていく。その中で、無数に放たれるレールガンの弾をさけるために何度も方向転換を繰り返す。
その中で、1艦、また1艦と熱線銃に薙がれるが幸い爆発したものはない。しかし、1艦ががくんと揺れ、機能を停止する。どてっぱらにレールガンの弾を食らったのだ。その間に動きの軽い有人の戦闘機は大活躍であり、敵小型艦をレールガンで葬っていく。さらにガイア型のレールガンやミサイルが命中する小型艦もありこれらは機能を止める。
しかし、その戦闘の中でわかったことは、レールガンの弾やミサイルは400㎞/秒の速度を持ったものさえ敵超大型艦には全くダメージを与えられなかった。一方で小型艦はどんどん数を減らしている。
こうして交戦しているうちに、ついに無人攻撃群が超大型艦に接敵したが、その間に流石に間近かになったこともあって、レールガンまた熱線砲でやられるものも出てきて、残った機はすでに半分になっていた。
しかし、全機はそのまま巨大艦に突っ込み、艦体にふれる瞬間にレールガンを発射した。その時点の相対速度は千百㎞/秒を越えており、レールガンの発射に加え、攻撃機体の二十五トンの質量が約五十箇所一斉に長さ2.8㎞の艦にめり込み、超高速のメタルジェットとなって艦体を貫いて進んだ。
いくつかは、艦体をぶち抜いて高温のメタルの塊となって飛び去っていったが、大部分は艦体内でとどまって、その熱と巨大な運動量で大破壊をもたらした。数秒後、巨大艦からは赤白光の柱が幾本も噴き出して、あとにはいくつもの赤くなって光った部分が残ったが、艦としては完全にその機能を止めた。
ヤタガラ防衛軍のセザム上将は、旗艦ジャラズ3号でその激しい戦闘の様子を数分遅れで見ていた。
見ている中で、いかなる攻撃も敵の超大型艦を傷つけられないのを胃が痛くなりながら見ていたが、最後にそれが火柱を噴き上げて沈黙したのを見て、思わず喜びに飛び上がった。
部下は抱き合って騒いでいる。
その時を待っていたように、「ああ、多数のジャンプです」
監視士官から知らせがある。
「ああ、これは地球艦隊の航続艦隊の2百隻だろう」
セザム上将が言い、監視士官が確認する。
「確かに約2百隻です」
すぐに重力波通信で連絡がある。
「こちら、地球防衛軍第2次ヤタガラ星系派遣艦体だ」
出力されるこの通信を見て、『ああ、これでシーラムム帝国もおとなしくなるだろう。百隻の艦隊に敗れた彼らが、まさか今の状態で戦いは挑むまい』セザム上将は思った。
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