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第一章:自罰的な臆病者
第二話 再開は突然に
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異世界にあるジルハルド王国の王都グランツブルグ。
一年ほど前から俺が暮らしているこの街は、異世界と言うだけあって日本にはない風景でいっぱいだ。
パステルカラーの屋根の家々と無限に続く様な石畳。
道沿いの商店には翼の生えた小さなドラゴンのような生物がゲージに入れられており、その向かいの店では永続的に水を噴き出し続ける腕輪が飾られている。
――そして街の中央に君臨しているのがあれだ。
正式名称・ヴァイスオール城。
ジルハルド王国の王族が代々住んでいる由緒正しいお城である。
かくいう俺くんは城に仕える使用人の中でも……下っ端の雑用係。
昨日は主である国王の命令を受けて、夜遅くまで働いていたのだった。
「さてと……」
時刻はもう正午をとっくに過ぎている。
周囲から浮きまくりの俺くんではあるが、さすがに帰りが遅かったら城にいる皆も心配してくれる――はずだ。
ていうかそうであってくれないと困る。
「チラシは……城に着いてからでいいか」
見ず知らずの人よりも知り合いに配った方がいいだろう。
そう判断して真っすぐと城へ向かった。
だがその道中にある裏路地で、俺は異変に気付いた。
路上に散乱する木片とカバンと思わしき物の残骸。
ズタボロになったカバンの残骸を拾ってみると、焼け焦げたかのような跡があった。
この感じは自然の炎じゃない。
魔法によるものだ。
誰かがここで戦っていたのだろうか。
「…………ん?」
ふと疑問が湧いたその時、カバンの残骸から何かが零れ落ちた。
「何だこれ? 学生証……かな?」
学校の名前と顔写真が記載された一枚のカード。
よく見るとミッドナイト大付属高校と書かれている。
「へぇ……なかなか可愛いじゃん」
写真を見る限り、持ち主はかなりのべっぴんさんだ。
証明写真でそう確信できるくらいだから、実際にはもっと凄いのだろう。
「ってちょっと待てよ」
ミッドナイト付属と言えば私立の有名校。
確か俺の幼馴染が通っている高校がそうだったような……
「まさかな」
今朝の夢のこともあり、得も言われぬ不安が胸によぎる。
そのせいか顔写真も小春ちゃんにしか見えなくなってきた。
なんだか似ている気もするし。
「いやいやいや。そんなわけ……」
予感が確信に変わりつつある中、
俺は祈るような気持ちで学生証の持ち主の名前を読み上げた。
「…………鈴崎小春?」
同じだ。
俺の幼馴染の小春ちゃんと漢字から読みまで全く同じ名前。
だけど驚いたのはそれだけじゃない。
生年月日も小春ちゃんと一緒なのだ。
ここまで揃ってしまったらもう認めるしかない。
幼馴染の小春ちゃんがこの世界に来ている!
「……急がないと」
状況的にも小春ちゃんは何かのトラブルに巻き込まれている可能性が高い。
「――っ!」
ズタボロのカバンを抱え、裏路地を駆ける。
幸い、痕跡はまだ新しかった。
ここからそう遠くへは行っていないはずだ。
「きゃー!」
痕跡を辿っているとすぐに少女の悲鳴が聞こえてきた。
続いて爆発音も聞こえてくる。
そろそろ近い!
「っ!?」
いざ覚悟を決めて角を右へ曲がると、見たこともない紫の魔物が制服を着た少女に襲い掛かろうとしている所だった。
「本当に…………いた」
少女の姿を見て、不意に声が漏れる。
「間違いない」
あの頃とは随分と違うけれど、面影は感じる。
何より俺が見間違うはずがない。
小春ちゃんだ。
最後に会ったのは小学生の時だったから、だいたい七年ぶりになるのか。
「って感傷に浸ってる場合じゃないって!」
その魔物は今にも光弾を放とうとしている。
このままじゃ小春ちゃんが危ない!
せっかく出会えたのに目の前で死なれるなんて、
そんなのは御免だ。
「…………」
――ピンチの時こそおちゃらける。
――かっこつける時はとことん軽薄に。
これこそが高白氷夜のスタイル。
一気に紫の魔物への距離を詰め、腰にぶら下げていた剣を引き抜く。
そして、
「はいはい。ちょーっと待ちなって」
縦一閃。
背後からの一撃で体を両断され、紫の魔物はあっけなく消滅していった。
「ふぅ」
なんとか間に合った。
「やぁ久しぶりだね小春。約束を果たしに来たよ」
息をつくのもそこそこに声をかけると、彼女は大きく目を見開いた。
「嘘でしょ。あんた……もしかして氷夜なの?」
「そうそう。あの氷夜くんです。いやー気付いてくれて嬉しいよ」
「見覚えのある顔に名前を呼ばれたら誰だって気付くわよ。だいたい、会うのは久しぶりでも高校生になるまでは手紙でやり取りしてたじゃない」
「……そうだっけ?」
「そうでしょ。間違っても愛の力なんかじゃないの」
おっふ。
長いこと合っていなかった内に随分と嫌われてしまったらしい。
まぁ……すぐ会いに行くと約束しておいて、7年も待たせたらそうなるか。
「そんなことより氷夜はどうしてこんな所にいるの? あと、ここはどこなの? あの化け物たちは?」
「あーそうだったね」
幼馴染との久しぶりの再会。
本当なら昔話に花を咲かせたいところだが、事態が事態なだけにそうもいかない。
俺は真面目モードに切り替えて、小春にこの世界について語り始めた。
「まずここがどこかって話だけど……異世界なんだ異世界。もう少し具体的に言うとここは異世界に存在するジルハルド王国の首都・グランツブルグなんだよ」
「異世界? その、異世界って漫画とかに出てくるあれかしら?」
「その認識で構わないよ。魔法という名の超自然的な物がごく普通に存在する異世界。もっと言えば剣と魔法のフレーズで有名な、ドラゴンとかが出てくるあの異世界さ」
「………………」
ワーオ。
驚きのあまり固まっちゃってるよ。
「えっと小春? 信じられないかもしれないけど、こっちに来る前にそれっぽい現象に遭遇しなかった? トラックに引かれちゃったとか、変な召喚陣みたなのを見ちゃったとか」
「そういえば学校に向かう途中に謎の光を見たわ。つまり私は異世界転移しちゃったってわけね」
「エグザクトリーその通りでございます」
「そっか、異世界か。おかげで合点がいったわ。街の感じからしてなんか変だなとは思ってたのよ」
まさか異世界だとは思わなかったけどね、と苦笑いを浮かべる小春。
「でもそうだとするとさっきの魔物は……」
彼女がもう一つの疑問を口にしようとしたその時、物陰から猪型の魔物が飛び出してきた。
「小春危ないっ!?」
咄嗟に小春を押しのけて、迫って来る魔物と対峙する。
そして腰にぶら下げていた剣で魔物の突進を受け止めた。
「ぐぅ!?」
衝撃を抑えきれず、大きく後退すると、小春が駆け寄って来る。
「氷夜っ!?」
「へへっ。そんなに心配しなくても大丈夫だから今はあいつらだ」
ざっと見れば魔物が三体。
俺たちが来た道を塞ぐようにして鎮座している。
「……どうする氷夜? 悪いけど私じゃ囮くらいにしかなれないわよ」
「いや、なんで戦う前提なのさ。さすがの氷夜くんもそんな無茶はしませんて」
というより3体を相手にして勝てる気がしない。
さっきのだって不意を突いたから上手くいったようなものだ。
「……じゃあ他に何をするって言うのよ?」
「そんなの……あれに決まってるっしょ?」
「まさか、氷夜あんた………っ」
「そう、そのまさか」
古今東西。
追い詰められた人間が取る選択肢は1つ。
「――逃っげるんだよぉぉ!!」
「やっぱり~!」
煙玉を地面に叩きつけると同時に、俺は小春の手を取って一目散に駆け出した。
一年ほど前から俺が暮らしているこの街は、異世界と言うだけあって日本にはない風景でいっぱいだ。
パステルカラーの屋根の家々と無限に続く様な石畳。
道沿いの商店には翼の生えた小さなドラゴンのような生物がゲージに入れられており、その向かいの店では永続的に水を噴き出し続ける腕輪が飾られている。
――そして街の中央に君臨しているのがあれだ。
正式名称・ヴァイスオール城。
ジルハルド王国の王族が代々住んでいる由緒正しいお城である。
かくいう俺くんは城に仕える使用人の中でも……下っ端の雑用係。
昨日は主である国王の命令を受けて、夜遅くまで働いていたのだった。
「さてと……」
時刻はもう正午をとっくに過ぎている。
周囲から浮きまくりの俺くんではあるが、さすがに帰りが遅かったら城にいる皆も心配してくれる――はずだ。
ていうかそうであってくれないと困る。
「チラシは……城に着いてからでいいか」
見ず知らずの人よりも知り合いに配った方がいいだろう。
そう判断して真っすぐと城へ向かった。
だがその道中にある裏路地で、俺は異変に気付いた。
路上に散乱する木片とカバンと思わしき物の残骸。
ズタボロになったカバンの残骸を拾ってみると、焼け焦げたかのような跡があった。
この感じは自然の炎じゃない。
魔法によるものだ。
誰かがここで戦っていたのだろうか。
「…………ん?」
ふと疑問が湧いたその時、カバンの残骸から何かが零れ落ちた。
「何だこれ? 学生証……かな?」
学校の名前と顔写真が記載された一枚のカード。
よく見るとミッドナイト大付属高校と書かれている。
「へぇ……なかなか可愛いじゃん」
写真を見る限り、持ち主はかなりのべっぴんさんだ。
証明写真でそう確信できるくらいだから、実際にはもっと凄いのだろう。
「ってちょっと待てよ」
ミッドナイト付属と言えば私立の有名校。
確か俺の幼馴染が通っている高校がそうだったような……
「まさかな」
今朝の夢のこともあり、得も言われぬ不安が胸によぎる。
そのせいか顔写真も小春ちゃんにしか見えなくなってきた。
なんだか似ている気もするし。
「いやいやいや。そんなわけ……」
予感が確信に変わりつつある中、
俺は祈るような気持ちで学生証の持ち主の名前を読み上げた。
「…………鈴崎小春?」
同じだ。
俺の幼馴染の小春ちゃんと漢字から読みまで全く同じ名前。
だけど驚いたのはそれだけじゃない。
生年月日も小春ちゃんと一緒なのだ。
ここまで揃ってしまったらもう認めるしかない。
幼馴染の小春ちゃんがこの世界に来ている!
「……急がないと」
状況的にも小春ちゃんは何かのトラブルに巻き込まれている可能性が高い。
「――っ!」
ズタボロのカバンを抱え、裏路地を駆ける。
幸い、痕跡はまだ新しかった。
ここからそう遠くへは行っていないはずだ。
「きゃー!」
痕跡を辿っているとすぐに少女の悲鳴が聞こえてきた。
続いて爆発音も聞こえてくる。
そろそろ近い!
「っ!?」
いざ覚悟を決めて角を右へ曲がると、見たこともない紫の魔物が制服を着た少女に襲い掛かろうとしている所だった。
「本当に…………いた」
少女の姿を見て、不意に声が漏れる。
「間違いない」
あの頃とは随分と違うけれど、面影は感じる。
何より俺が見間違うはずがない。
小春ちゃんだ。
最後に会ったのは小学生の時だったから、だいたい七年ぶりになるのか。
「って感傷に浸ってる場合じゃないって!」
その魔物は今にも光弾を放とうとしている。
このままじゃ小春ちゃんが危ない!
せっかく出会えたのに目の前で死なれるなんて、
そんなのは御免だ。
「…………」
――ピンチの時こそおちゃらける。
――かっこつける時はとことん軽薄に。
これこそが高白氷夜のスタイル。
一気に紫の魔物への距離を詰め、腰にぶら下げていた剣を引き抜く。
そして、
「はいはい。ちょーっと待ちなって」
縦一閃。
背後からの一撃で体を両断され、紫の魔物はあっけなく消滅していった。
「ふぅ」
なんとか間に合った。
「やぁ久しぶりだね小春。約束を果たしに来たよ」
息をつくのもそこそこに声をかけると、彼女は大きく目を見開いた。
「嘘でしょ。あんた……もしかして氷夜なの?」
「そうそう。あの氷夜くんです。いやー気付いてくれて嬉しいよ」
「見覚えのある顔に名前を呼ばれたら誰だって気付くわよ。だいたい、会うのは久しぶりでも高校生になるまでは手紙でやり取りしてたじゃない」
「……そうだっけ?」
「そうでしょ。間違っても愛の力なんかじゃないの」
おっふ。
長いこと合っていなかった内に随分と嫌われてしまったらしい。
まぁ……すぐ会いに行くと約束しておいて、7年も待たせたらそうなるか。
「そんなことより氷夜はどうしてこんな所にいるの? あと、ここはどこなの? あの化け物たちは?」
「あーそうだったね」
幼馴染との久しぶりの再会。
本当なら昔話に花を咲かせたいところだが、事態が事態なだけにそうもいかない。
俺は真面目モードに切り替えて、小春にこの世界について語り始めた。
「まずここがどこかって話だけど……異世界なんだ異世界。もう少し具体的に言うとここは異世界に存在するジルハルド王国の首都・グランツブルグなんだよ」
「異世界? その、異世界って漫画とかに出てくるあれかしら?」
「その認識で構わないよ。魔法という名の超自然的な物がごく普通に存在する異世界。もっと言えば剣と魔法のフレーズで有名な、ドラゴンとかが出てくるあの異世界さ」
「………………」
ワーオ。
驚きのあまり固まっちゃってるよ。
「えっと小春? 信じられないかもしれないけど、こっちに来る前にそれっぽい現象に遭遇しなかった? トラックに引かれちゃったとか、変な召喚陣みたなのを見ちゃったとか」
「そういえば学校に向かう途中に謎の光を見たわ。つまり私は異世界転移しちゃったってわけね」
「エグザクトリーその通りでございます」
「そっか、異世界か。おかげで合点がいったわ。街の感じからしてなんか変だなとは思ってたのよ」
まさか異世界だとは思わなかったけどね、と苦笑いを浮かべる小春。
「でもそうだとするとさっきの魔物は……」
彼女がもう一つの疑問を口にしようとしたその時、物陰から猪型の魔物が飛び出してきた。
「小春危ないっ!?」
咄嗟に小春を押しのけて、迫って来る魔物と対峙する。
そして腰にぶら下げていた剣で魔物の突進を受け止めた。
「ぐぅ!?」
衝撃を抑えきれず、大きく後退すると、小春が駆け寄って来る。
「氷夜っ!?」
「へへっ。そんなに心配しなくても大丈夫だから今はあいつらだ」
ざっと見れば魔物が三体。
俺たちが来た道を塞ぐようにして鎮座している。
「……どうする氷夜? 悪いけど私じゃ囮くらいにしかなれないわよ」
「いや、なんで戦う前提なのさ。さすがの氷夜くんもそんな無茶はしませんて」
というより3体を相手にして勝てる気がしない。
さっきのだって不意を突いたから上手くいったようなものだ。
「……じゃあ他に何をするって言うのよ?」
「そんなの……あれに決まってるっしょ?」
「まさか、氷夜あんた………っ」
「そう、そのまさか」
古今東西。
追い詰められた人間が取る選択肢は1つ。
「――逃っげるんだよぉぉ!!」
「やっぱり~!」
煙玉を地面に叩きつけると同時に、俺は小春の手を取って一目散に駆け出した。
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