38 / 50
第二章:他罰性の化け物
第三十五話 メロア・クラムベール①
しおりを挟む
「デス・ボルケス!」
「デア・イグニス!」
王国一の魔法使いと悪魔の王。
両者の魔法が王都の上空で激突する。
奇しくも込められた魔力は完全に互角だ。
メロアの打ち出した神聖な炎が悪魔の漆黒の火球を包み込み、何事もなかったかのように対消滅した。
「やはりこの程度では効かぬか。ではこれはどうだ?」
ベルゼはさらに一際大きな漆黒の火球を放つと、メロアもすぐさま炎魔法を唱えて相殺する。
「次はこいつだ!」
「――無駄だよ」
今度もすかさずベルゼの生み出した風の弾丸を打ち落とすメロア。
その後もベルゼが唱えた魔法を悉く打ち落としていく。
「ちっ……ならばこれはどうだ?」
ただの魔法の打ち合いでは分が悪いと判断したのか、ベルゼはここに来て攻撃のボルテージを一気に上げた。
地獄の業火、漆黒の稲妻、そして高密度の魔力を帯びた風の砲撃。
これらの強力な魔法を数秒にも満たない時間の間に繰り出していく。
だがメロアも負けていない。
急速にテンポを増していくベルゼの攻撃を冷静に捌いている。
そうして似たような攻防を100回は繰り返しただろうか。
ついに痺れを切らしたのか、ベルゼは不愉快そうに口を開いた。
「……貴様、わざとだな? 先ほどからあえて我の魔法と同程度の魔法を出しているだろう?」
「……」
ベルゼからの問いにメロアが答えることはない。
だが事実としてはそうだ。
ベルゼの闇属性を含んだ魔法に対し、メロアはそれと同レベルかつ正反対の神聖属性を含んだ魔法で相殺している。
これは街に被害が及ばないようにとのメロアの配慮なのだが、それをメロアからの挑発と受け取ったベルゼはついに怒りを爆発させた。
「いいだろう! 貴様がそこまで意地を張るのであれば我も考えを改めるとしよう!」
王としての余裕も傲慢不遜な態度もどこへやら。
咆哮と共に翼を大きく展開すると、全身に刻まれていた紋様が怪しく光り出した。
「魔法陣による詠唱の簡略化……まさかそれが魔法陣だったなんてね」
零すようなメロアの呟きにベルゼが笑みを見せる。
「くくく……気付いたところでどうにもできまい。貴様に時間は残されていないのだからな!」
ベルゼは一呼吸の後に詠唱を完了させた。
「……デスギガ・テンプレスト」
ズガガガッ。
空を切り裂くような雷鳴と共に、王都の上空に無数の隕石が顕現する。
そんなこの世の終わりのような光景を背にベルゼは勝ち誇ったように告げた。
「1つ1つが必殺の威力を誇る流星群だ! せいぜい街を救って見せろ魔法使い!」
撃ち落そうにも生半可な魔法ではかえって被害を増やすだけだ。
かといって撃ち落せるだけの強力な魔法を準備するにはあまりにも時間がない。
――数十秒後には王国ごと消し飛ぶぞ。
などと己の勝利を確信し、ベルゼが高笑いをした次の瞬間、
「……ディスペル」
メロアが小さく杖を振ると、そこにあったはずの隕石が霧のように消滅した。
「馬鹿な。そんなことが……」
驚きつつも、ベルゼは悪魔の王としての知見で何が起ったかを理解した。
今のは魔法の相殺、ではなく魔法の消滅であると。
これは相手の唱えた魔法に干渉し、発動までのプロセスと逆の手順を踏むことで魔法を消滅するという現象である。
しかしそれはあくまでも理論上ではできるという程度の話で、到底できる人間などいないと考えられていた。
その不可能をメロアは可能にしてみせたのだ。
「少し時間はかかったけど、あなたの使う魔法の種類も威力もだいたい理解できたよ」
「減らず愚痴をっ!?」
抱いたのは怒りか、己の想像を超える怪物に対する畏怖か。
ベルゼは己の感情を誤魔化すようにメロアに殴りかかる。
だがそんな単調な攻撃がメロアに通じるわけもない。
「デアルタ・ベルシュガット」
メロアは振り下ろされた拳をあっさりと躱すと、無防備になったベルゼの腹に6本の剣を突き刺した。
「ぬおっ!?」
身動きが取れず苦しむベルゼにメロアは告げる。
「大丈夫だよ。もう楽にしてあげるから」
「き、貴様ぁ! どこまでも吾輩を……っ!」
メロアの物言いに激昂しかけたベルゼは不自然な風の流れを感じて言葉を止めた。
否、これは風ではない。
一度誤解しかけてベルゼはすぐに悟る。
まるで世界がメロアに従属しているかのように周囲の魔力がメロアに引き込まれているのだ。
「このまま我がやられるとでも……っ!?」
メロアの準備が整う前に反撃に転じようとするベルゼだが体に突き刺さった剣の拘束から抜けない。
そうしている間にも魔力の密度は増していき、やがてそれは臨界点を迎えた。
「――ディスレイズ」
詠唱と同時に紫の極光がベルゼを貫いた。
「デア・イグニス!」
王国一の魔法使いと悪魔の王。
両者の魔法が王都の上空で激突する。
奇しくも込められた魔力は完全に互角だ。
メロアの打ち出した神聖な炎が悪魔の漆黒の火球を包み込み、何事もなかったかのように対消滅した。
「やはりこの程度では効かぬか。ではこれはどうだ?」
ベルゼはさらに一際大きな漆黒の火球を放つと、メロアもすぐさま炎魔法を唱えて相殺する。
「次はこいつだ!」
「――無駄だよ」
今度もすかさずベルゼの生み出した風の弾丸を打ち落とすメロア。
その後もベルゼが唱えた魔法を悉く打ち落としていく。
「ちっ……ならばこれはどうだ?」
ただの魔法の打ち合いでは分が悪いと判断したのか、ベルゼはここに来て攻撃のボルテージを一気に上げた。
地獄の業火、漆黒の稲妻、そして高密度の魔力を帯びた風の砲撃。
これらの強力な魔法を数秒にも満たない時間の間に繰り出していく。
だがメロアも負けていない。
急速にテンポを増していくベルゼの攻撃を冷静に捌いている。
そうして似たような攻防を100回は繰り返しただろうか。
ついに痺れを切らしたのか、ベルゼは不愉快そうに口を開いた。
「……貴様、わざとだな? 先ほどからあえて我の魔法と同程度の魔法を出しているだろう?」
「……」
ベルゼからの問いにメロアが答えることはない。
だが事実としてはそうだ。
ベルゼの闇属性を含んだ魔法に対し、メロアはそれと同レベルかつ正反対の神聖属性を含んだ魔法で相殺している。
これは街に被害が及ばないようにとのメロアの配慮なのだが、それをメロアからの挑発と受け取ったベルゼはついに怒りを爆発させた。
「いいだろう! 貴様がそこまで意地を張るのであれば我も考えを改めるとしよう!」
王としての余裕も傲慢不遜な態度もどこへやら。
咆哮と共に翼を大きく展開すると、全身に刻まれていた紋様が怪しく光り出した。
「魔法陣による詠唱の簡略化……まさかそれが魔法陣だったなんてね」
零すようなメロアの呟きにベルゼが笑みを見せる。
「くくく……気付いたところでどうにもできまい。貴様に時間は残されていないのだからな!」
ベルゼは一呼吸の後に詠唱を完了させた。
「……デスギガ・テンプレスト」
ズガガガッ。
空を切り裂くような雷鳴と共に、王都の上空に無数の隕石が顕現する。
そんなこの世の終わりのような光景を背にベルゼは勝ち誇ったように告げた。
「1つ1つが必殺の威力を誇る流星群だ! せいぜい街を救って見せろ魔法使い!」
撃ち落そうにも生半可な魔法ではかえって被害を増やすだけだ。
かといって撃ち落せるだけの強力な魔法を準備するにはあまりにも時間がない。
――数十秒後には王国ごと消し飛ぶぞ。
などと己の勝利を確信し、ベルゼが高笑いをした次の瞬間、
「……ディスペル」
メロアが小さく杖を振ると、そこにあったはずの隕石が霧のように消滅した。
「馬鹿な。そんなことが……」
驚きつつも、ベルゼは悪魔の王としての知見で何が起ったかを理解した。
今のは魔法の相殺、ではなく魔法の消滅であると。
これは相手の唱えた魔法に干渉し、発動までのプロセスと逆の手順を踏むことで魔法を消滅するという現象である。
しかしそれはあくまでも理論上ではできるという程度の話で、到底できる人間などいないと考えられていた。
その不可能をメロアは可能にしてみせたのだ。
「少し時間はかかったけど、あなたの使う魔法の種類も威力もだいたい理解できたよ」
「減らず愚痴をっ!?」
抱いたのは怒りか、己の想像を超える怪物に対する畏怖か。
ベルゼは己の感情を誤魔化すようにメロアに殴りかかる。
だがそんな単調な攻撃がメロアに通じるわけもない。
「デアルタ・ベルシュガット」
メロアは振り下ろされた拳をあっさりと躱すと、無防備になったベルゼの腹に6本の剣を突き刺した。
「ぬおっ!?」
身動きが取れず苦しむベルゼにメロアは告げる。
「大丈夫だよ。もう楽にしてあげるから」
「き、貴様ぁ! どこまでも吾輩を……っ!」
メロアの物言いに激昂しかけたベルゼは不自然な風の流れを感じて言葉を止めた。
否、これは風ではない。
一度誤解しかけてベルゼはすぐに悟る。
まるで世界がメロアに従属しているかのように周囲の魔力がメロアに引き込まれているのだ。
「このまま我がやられるとでも……っ!?」
メロアの準備が整う前に反撃に転じようとするベルゼだが体に突き刺さった剣の拘束から抜けない。
そうしている間にも魔力の密度は増していき、やがてそれは臨界点を迎えた。
「――ディスレイズ」
詠唱と同時に紫の極光がベルゼを貫いた。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる