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第五十四話 クレープ
しおりを挟む「ケイン」
冷めた目をしたエネマが僕の前に立って道を塞いでいる。
「エネマ………どうしたの?」
その一言がエネマの冷めた目を、さらに冷たい物にしてしまう。
「………ケイン?学園に来たら真っ先に私のとこ来るよう言った。もう2週間経ってる……どうして?」
やっべ、忘れてた………
どうしよう……そういえばそんな事言ってたなぁ…
「えっと………ごめんなさい」
「だめ!許さない。今日は一緒に帰ってクレープ奢って!」
あ、それくらいで許してくれるのか……
エネマの事だからもうちょっとキツめの条件出してくると思ってた……
…………………………………………
……………………
…………
「………聞いてない。たかがクレープが銀貨2枚もするなんて……」
なんだよあのジャンボクレープ……
明らかに両手で持ち切れない大きさだっだんですけど……
「言ってないから。ん~美味しい!」
クッ、僕が高い金出したやつを目の前で食うとは………
というか本当に美味しそう。
エネマ……友情というのは結構簡単に壊れるみたいだぞ……
「ケインもちょっと食べて良い」
そう言ってジャンボクレープを渡してきた。
うん、エネマは出来る子だからそうしてくれるって信じてた!
……………………………………………
………………………
…………
エネマと帰っていると、何か視線を感じた。
気のせいだろうか………
「エネマ、なんか視線感じない?」
一応索敵能力の高いエネマに聞いてみた。
「……ん………んん?な、なんか5人くらいが私達の事つけてるみたい……」
「ええ……ストーカーってやつかな?エネマ心当たりある?」
だとすれば随分集団的なストーカーだと思うが……
「はっ!そういえば最近いつの間にか冷蔵庫の中身が減ってたり、無くしものしたり、財布の減りが早かったり……」
確定だな。そのつけてきてる5人というのは間違いなくストーカーだ。
許せん、花の女子学生をストーキングするとは……
「じゃあ1度路地裏に入ろう。入ったら全力で回り込んで、捕まえて騎士団に引き渡そう」
「了解」
僕の提案を受け入れたエネマが顔を強張らせた。
そりゃそうだ。
今まで自分の知らない所でつけられて家の中まで入られていたのだから……
路地裏に入った僕達はすぐに全力疾走をして、5人の背後をとった。
「は!?おい、あいつら消えたぞ」
「クソ!手分けして探せ、まだ遠くに入ってないはずだ」
「……どこに行った?見つけないと俺たちが…」
僕達を見失って焦っているようだった。
「で、あなた方がストーカーで間違いないですね?」
急に背後から話しかけられ5人の男達は情けなく声をあげる。
「ヌオッ!……フッ、流石だな、まさかあの位置で気付いていたとは。だが、わざわざ人気のない路地裏に来てくれるとは好都合だぜ。テメェら、やっちまえ!」
そういうと、5人の屈強な男達はケインに襲いかかってきた!
………………………………………
…………………
………
5分後、意外と良い運動になった。
狭い路地裏では動きが制限される上に、僕は相手を殺さないように手加減をしていたから……
ボロボロにされて床に正座させられている男達に問う。
「お前らが最近エネマのストーキーングをしていたんだな?」
それを聞くと1番大柄な奴が即座に否定した。
「違う違う。俺たちが用があったのはテメェのほうだ。ケイン」
……僕?
「お前ら僕のこと好きなの?」
「違う、そうじゃない。なんで女ってみんなすぐに恋愛やらなんやらに結びつけるんだ!」
じゃあなんなの……
「俺等は肉体改造部の主力メンバーだ!」
ああ、通りで筋肉があると思ったらそういうことだったのか。
「つまり、部長がコテンパンにされたから報復に来たって事?」
「……まぁそういう事だ」
「じゃあエネマの財布の減りが早かったのは……」
「エネマさん、毎日クレープ屋通ってるって学園でも有名だぜ。そりゃ毎日行ったら金も無くなるだろ……」
……ただの無駄遣いじゃん
「冷蔵庫の減りまで早かったのは……」
「この間エネマさんの友達が言ってたんだが、家でもクレープ沢山作ってみたから食べてって友達呼んだとか……」
……そりゃはやいよな、減るの。
「無くしものが多かったのは……」
「それは知らねぇけど、エネマさんってしょっちゅう学園でも『教科書無くした』って言ってたよな」
……………
「エネマ?」
「……許して」
可愛いポーズで言ってもダメだ。
この後僕はきっちりジャンボクレープを奢らせた。
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