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第五十三話 エルナとの決戦
しおりを挟む先輩達が修剣場から出て行ったことで、僕と勇者の2人きりになった。
「………あなた、あの剣を素手で掴んでいたわね?」
「え、あ~はい。筋力にかけては自信があるので」
「そんな話で掴める様な代物じゃなかったはずよ、剛腕や剛力のスキルの効果じゃなくて?」
「そんなわけないでしょう。僕適性値Gだからスキルが全然習得出来なくて困ってるんですから」
「………馬鹿にするのも良い加減になさい。適性値Gが入試で私を超えられるわけないでしょう。何を隠してるの?」
少し怒った風に聞いてきた。
なんでこんなにこいつ人の話聞いてくれないんだろう……
「別に何も隠してないと言ってるでしょう」
「そう、シラを切るつもりね」
こいつ深読みしすぎだろ………
「なら良いわ、ここで決闘をしましょう。授業でやるつもりだったけど、別に構わないわよね?」
「………まぁ良いですけど」
「これで貴方がEランク以下のスキルだけで勝てば認めてあげるわ」
「質問なんですけど、Eランク以下ならどんなスキルでも良いんですね?」
「もちろんよ」
「じゃあ、僕の使ったスキルの事を口外しないで欲しいんですけど……」
「……いいわ、約束しましょう」
というわけで、本日2戦目の決闘が行われる。
「ルールはさっきと一緒、気絶か敗北宣言ね。じゃあ行きますよ!」
その言葉と同時に彼女は加速した。
速い!………だけど先生達より少し速いくらいかな……
クウガさんと毎日戦っていた僕にとっては、対処できない程のスピードでもない。
剣で受け止めようかと思ったが、せっかく使えるのだしあのスキルを使うか………
剣が僕に当たる直前、僕は『縮地』を使って後ろに退避、剣が空振りしたエルナさんは体勢を大きく崩した。
その隙を見逃さず、再度『縮地』で距離を詰めた。
そして、練習用に潰された刃で思いっ切り叩いた。
エルナさんは遥か遠くに吹っ飛んでいった。
………………………………………………
………………………
…………
「エルナさーん………あっ、起きた」
後ろの席の彼女に起こされてゆっくりと起き上がる。
「イタタタ……わたし…は……!」
そうだ、決闘の最中だったはずだ。
いや、たしか私が最後に彼女に吹き飛ばされて……
「あなた!Eランク以下のスキルしか使わないって話じゃなかった!」
そうだ、彼女はEランク以下のスキルしか使わないという条件で私と戦っていたはずなのに……
「なんですか!あのスキルは!一切の時間差なしで瞬間移動しましたよね!?あんなの『縮地』の上位スキルとしか思えませんよ!」
そうだ、縮地ならあの距離を移動するのには最低3秒はかかる。
スタートと同時に発動の準備をしていたとしても私が彼女の元に着くまでに要した時間は2秒と少し。
ギリギリ足りない。
それだけならスタート前から発動の為硬直していたとも考えられるが、その後体勢を崩した私に一瞬で近づいた。
ならば、まず間違いなく『縮地』ではない。
それに、最後の刃を潰した剣による一振りも明らかになんらかのスキルを使っていた。
Eランク以下に振りの威力が上がるスキルは無いはず……
「僕はEランク以下のスキルだけで戦いました」
「なっ、そんなわけ………」
「良いですか?あの『縮地』は僕のオリジナルスキルにより発動が早められています。最後の振りもオリジナルスキルによって筋力のステータスが圧倒的に高いからです」
!そういえばオリジナルスキルなら他のスキルの発動を早めることもできる……
スキルやステータスを強化する事もオリジナルスキルなら、あるのだ。
何故私はそのことに気づかなかったのだろう……
「良いですか?固定観念に囚われていてはいつまで経っても狭い視野でしか物事を判断出来ません。色々な可能性を、真っ先に否定するのでは無く、考えてみてください。エルナさん」
「……………エルナで良いわ。それに敬語もいらない」
「えっ!本当ですか!」
「良いって言ってるでしょ」
「そっか。じゃ明日からもよろしくねエルナ」
この国に来てから3年……
お父さん、私初めて友達が出来たよ。
応援ありがとうございます!
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