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第八十六話 目的
しおりを挟む「その後、騎士団のみんなが王都に戻って行った。着々と王都の人たちがテクストに洗脳される様子を透明になりながら見てたけど、結局止められず、魔力も持たないから一先ず下水道に逃げた。その後にケインが帰ってきたら拘束して魔王城に連れてこいと伝言を残してテクストは去っていった」
エネマが話し終えて、ようやく現状を把握できた。
「これは相当に厄介だな」
「ええ、本当に厄介ですね四天王というものは……」
エルナは怒っているのか、声のトーンがいつもより低かった。そりゃそうだ、自分の師匠がそんな目に合わされたのだから。
僕もかなり怒っている。
「このままだと操られた国民が全員殺されてもおかしくない」
しかし、エルナはその言葉を否定した。
「いえ、それなら既に何人か殺されているはず……それなのにテクストは魔王城に帰ったということはとりあえず操ってはいるけど、殺す気はない?という事でしょうか」
「まあ、たしかに今のこの国では魔王軍と戦うなど不可能だしな」
王都が占拠されている今、魔王軍にとって脅威となる物はほとんど無い。
強いて言えば僕達や遠征に出ているオルトさん達くらいだろうか?
周辺国は我が国よりも弱いので、その気になれば魔王軍はすぐに滅ぼせてしまうだろう。
「だが、やはりテクストを倒さないと困る。早くなんとかしないと…」
そう言いかけた時エネマが言った。
「実は……最近急に戦争の準備を国が始めた」
「……何故でしょうか?操られている今魔王軍と戦うなどありえなさそうですが……」
「あの………………ひょっとしてなんですけど…」
「何?クリフ、もしかして目的が分かったの?」
「あ、いえ、可能性の話ですけど……テクストはこの国に周辺国を滅ぼさせようしているのではないでしょうか?」
「どういう……!」
「なるほどそういう事ですか……テクストめ、とことん腹を立たせてくれる……」
「…どういう事?」
エネマが1人分かっていない様だ。
「そのまんまの意味だよ。多分テクストはこの国を操って周辺国と戦わせて人類の戦力を大幅にダウンさせようとしているんだ」
「その為の戦争準備でしょう。この国は強いですが流石に周辺国全てを敵に回して勝てるとは思えません。精々2、3国落とすのが関の山。しかし、テクストの洗脳のせいで戦えない者まで強制的に戦争に参加させられます。それに普通は動けなくなる様な怪我でも、死ぬまで動けてしまう……。
宣戦布告もしないでしょうね。それらを踏まえたら周辺国を5つくらいは落とせるかも……仮に負けても魔王軍に痛手はありません。捨て駒なのでしょうね……」
説明を聞いてようやく理解したエネマは今度こそ怒り出す。
「魔王軍…許さない」
「しかし…この国が他の国に攻め込むまでにテクストを倒すのは少しきついな」
「戦争準備を始めてから最短でも1ヶ月はかかるでしょうが、捨て駒と言うなら話が別です。ここから隣国のクニトラまで、歩けば1週間といったところでしょうか……」
「そうだな…そこら辺がタイムリミットか」
あと1週間で魔王城に着きテクストを倒す。
正直行くのに20日かかると言われている魔王城に1週間以内で着いてテクストを倒すのは相当困難だが、行くしかないな。
「あ、あの……ケインさん」
「どうしたのクリフ?なんでも言って!」
「なんでも言ってくださいクリフさん!」
「私面識無いけどなんでも言って?」
クリフの人望が厚い。
「あの……ケインさんの縮地で魔王城まで飛べませんか?」
「「「ナイス、クリフ」」」
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