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第八十五話 屈辱
しおりを挟む「どこにいる……隠れてないで出てきなさい!テクスト!」
しかし、それに応じる声はない。
「隊長!もう一度先程の技を使ってください!」
しかし、エルファトクレスは迷う。
実の妹にあんな危険な技を向けられない……と
迷った結果、彼女は力すぐで止めた。
「やめなさい、メルシー!正気に戻って!」
「死んで!死んで!死んで!」
何度もメルシーに声をかけるが遂に正気には戻らなかった。
そんなエルファトクレスの様子を見て、騎士団の者共は炎帝に頼る事を諦めた。
「仕方ない、国民に手を出すのは気が引けるがこのままでは我々が危ないからな、殺さない程度に痛めつけてやれ!」
副隊長のその言葉で騎士団は洗脳された人々の足や腕の骨を折り始めたのだ。
数十分もして、人骨という人骨を折りつくしたのだが、人体が壊れる音というのを長時間聞かされて彼等も気分が優れなかったようだ。
「はぁはぁ……どこにいやがるテクストの奴め」
「絶対に酷い目に合わせてやる……」
とりあえず一仕事終えたと思った騎士団は座り込んでしまう。
その隙を見逃さなかった。骨が折れているにも関わらず、洗脳された人々は騎士団に襲いかかる。
「今だ!コイツらも痛めつけて洗脳してしまえ!」
「何だよ、ふざけんな!何でコイツら骨折られたのに動いてるんだよ!」
「骨が折れても諦めないなんて……これじゃあ殺すしか……」
しかし、彼等は洗脳されているとはいえ、国民を自分の手で殺すなんてことはできなかった。
次々と動けなくされていく仲間達を見て、場は混乱に陥った。
「隊…長早く先程の……」
しかし、エルファトクレスは動けない。メルシーを抑えつけるのに精一杯だからだ。
動けなくされた騎士達に近寄る者がいた。
「ご苦労様~。じゃあ始めようかぁ」
テクストだ。コイツが騎士達の洗脳を始める。
触れるだけで完了する為、恐ろしい勢いで洗脳されていく。
「貴方達!大丈夫ですか!?」
「うぅ……隊長も…せんの…う」
「貴様!よくも部下達を!」
そう言ってエルファトクレスはメルシーを抑えていた手を離した。
「ギブ・ザ・エターナルデスファイヤー」
手より放たれた炎は花の様に綺麗な形を描き、テクストに襲いかかる。
この炎を浴びて燃やされた人影があった。
「副隊長!何故あなたが……」
そう、テクストを庇った副隊長がエルファトクレスによって燃やされてしまったのだ。
「もうそいつらは僕の傀儡なんだよぉ~。だから僕の命に関わる事が起きたら命懸けで守ってくれるのさぁ~。1人死んだが、まだまだ変えは沢山いるからねぇ」
「ああ……なんてことを……」
エルファトクレスは長年自分にはついてきてくれた部下を自分の手で殺してしまった。
その精神的ショックは相当に大きかった。
「さぁて、今だ!やってしまいなぁ~」
「!」
その時、メルシーが包丁で油断していたエルファトクレスの胸を突き刺したのだ。
「クッ」
回復能力の高さのおかげでケインほどではないにしろ暫くすれば元に戻るが、四天王の前でこの状態はまずい。
案の定、テクストはエルファトクレスに近寄って洗脳を開始した。
本来ならエルファトクレスはテクストに操られる様な器ではないが、副隊長を殺してしまった事、メルシーに刺されて気が動転していたことで、精神的にも肉体的にも弱っていたのだ。
エルファトクレスは操られてしまった。
「クックックッ!ザマァみろぉ!今まで散々好き勝手やってくれたなぁ!」
テクストは操ったエルファクレスを痛めつける。
しかし、エルファトクレスは表情を変えずに殴られ続けるだけだ。
その内服を破かれ服従のポーズを取らされる。
「あの炎帝も僕にかかればこんなものだ!」
洗脳されて涙を流すことすら許されず、屈辱の限りを尽かされる。
「そういえばお前も僕の事を散々に言ってくれたなぁ!」
そう言うと、テクストはクーデルの死体を踏みつけにした。
「何が!四天王!最弱だぁ!お前が1番弱いんだよぉ!僕が最強!なんだよぉ~!」
死体をぼろぼろにした後に前菜は終わったとばかりに顔に笑みを浮かべる。
「次はケイン…お前の番だよぉ~」
テクストは楽しそうに笑い始めた。
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