6 / 7
ケインと魔法少女達⑥
しおりを挟むワイバーンは迫り来る攻撃群に必死に抵抗した。
ブレスをはき、火の玉を撃ち、あらゆる手段を用いて対抗したのだ。
だが、それが仇となってしまった。
ケイン達の目的は魔力を枯渇させる事である。
高い頻度で魔法を使い続けた事で、ワイバーンは魔力をどんどんと削っていき、最後には……
「おい!ワイバーンが動けなくなったみたいだ!落下してくるぞ!」
ワイバーンやドラゴンの様な魔物はその巨体のわりに肝心の翼はかなり小さい。
筋力や体重の問題などでは無く、物理学的に有り得ない翼なのだ。
それなのに飛べているのはワイバーンやドラゴンは翼の部分で無意識に魔法を行使して反重力の力を込めているからである。
これはケイン達の星では長年スキルと考えられていたのだが、地球の人間はスキルを使わずに魔術を行使している事を考えると、ワイバーンは実は無意識に魔術を使っていたのかもしれない。
……と、少し脱線したが、反重力の力で飛んでいるワイバーンが落下し始めたという事は、ワイバーンの魔力が無くなったという事に他ならない。
「ケイン!これなら……ああ、今なら倒せるかもしれない!鈴菜!大きな光の矢を作ってくれ!それをワイバーンの脳の辺り直接ぶち当てる!」
「いやいやいや!無理だよそんなの!そんなの制御出来ないし当てられないよ!」
「大丈夫!僕が手を貸すからな」
「……?」
鈴菜は言われるがまま落下してくるワイバーン目掛けて大きな光の矢を作った。
「いつでも撃てるよケイン」
「分かった。ちょっと貸してくれ」
ケインは光の矢に触れる。
これで光の矢に『投擲』が適用されたのだ。
「いくぞ!せーのっ!」
その声で鈴菜は光の矢を放つ。
スピードはやはり遅いが、ケインのパワーと『投擲』のおかげで何とかスピードを維持したままワイバーンの脳天を貫いた。
「……倒……した?」
「いや、待て」
脳天を貫かれ、生きているとはとても思えないワイバーンは、何故かまたゆっくりと動き出して光の矢を抜き取った。
「そんな!倒せたと思ったのに……」
「どういう事だ……?って事は奴は完全に不死身って事に……」
こうなってしまってはケインでも倒し方が分からない、見当がつかないのだ。
魔力も無いのに回復するという事はケインの『回復の基本』の様な物で、完全なスキルである為、防ぐ方法は無いという事になる。
だが、ケインと違う点は例え死んでも生き返るという点である。
ケインも胴体真っ二つや、首を斬られるくらいならば断面が綺麗だったら元に戻る。
だが、首を刎ねられたら生き残るのは難しい。
首を斬られた時点で体と離れてしまっていたら無理矢理に再生させる事は不可能なのだ。
ケインを倒すのなら首を斬って、斬った首を遠くに投げるのが有効なのだが、ワイバーンの場合はそれすら通用しない。
ケインが絶望しかけたその時、日奈子が声を上げた。
「待って、何だか再生の速度が遅くなってない?」
「!!?」
「本当だ……言われてみれば」
「どういう事?魔力を無くして首を斬っても死なないのに再生の速度は遅くなってるって……」
そこでようやくケインが結論に辿り着いた。
「そうか分かった!不死身のスキルなんて特殊なオリジナルスキルでも無い限り有り得ない!アイツはスキルで自動回復をしていただけなんだ!」
「それならそれでおかしく無い?スキルの自動回復で死んでも蘇生されるなんて」
「いや、きっと魔術を並行して使っていたんだ。それに、他の何らかのスキルを使ってダメージ軽減や回復力も増強させて極限まで回復力を底上げする事で一瞬で死なない限りどんな攻撃でも再生できる様にしていたんだ」
「あっ!?成る程……だから魔力を失った今魔術を行使する事が出来ずに回復力が落ちているのか……」
「つまり、あいつの巨体を一瞬で消滅させる様な魔術かラブ・パワーを使えれば良いんだね!」
「いや、その必要は無い。回復力が落ちた今なら攻撃し続ける事でスキルの自動回復量を上回って倒す事が出来る筈だよ。ていうかラブ・パワーってなんだ」
「分かった!鈴菜!アレお願い」
日奈子が鈴菜に言った。アレとは一体何だろうか……?
「オッケー『光機関銃』!」
その途端、鈴菜の後ろから無数の光の礫がワイバーンに襲いかかった。
ワイバーンは食らい続けてあちこちに傷ができる。
出来た側から回復しているが、少し押され気味である。
「次は私の番ね!『圧縮』!」
日奈子が出した圧縮により、更にワイバーンの体が削られる。
だが、これでもまだ倒すには至らない。
「ありがとう!あとは僕に任せろ」
ケインが愛剣を取り出して走り出す。
縮地は一瞬で移動するには便利だが、助走をつけて剣撃の威力を上げる事ができない。
そのままトップスピードまで達し、ワイバーンの体の丁度真ん中に剣を振った。
ワイバーンは真っ二つに裂かれ、もう再生はされなかった。ケイン達の勝利である。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる