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ケインと魔法少女達⑥
しおりを挟むワイバーンは迫り来る攻撃群に必死に抵抗した。
ブレスをはき、火の玉を撃ち、あらゆる手段を用いて対抗したのだ。
だが、それが仇となってしまった。
ケイン達の目的は魔力を枯渇させる事である。
高い頻度で魔法を使い続けた事で、ワイバーンは魔力をどんどんと削っていき、最後には……
「おい!ワイバーンが動けなくなったみたいだ!落下してくるぞ!」
ワイバーンやドラゴンの様な魔物はその巨体のわりに肝心の翼はかなり小さい。
筋力や体重の問題などでは無く、物理学的に有り得ない翼なのだ。
それなのに飛べているのはワイバーンやドラゴンは翼の部分で無意識に魔法を行使して反重力の力を込めているからである。
これはケイン達の星では長年スキルと考えられていたのだが、地球の人間はスキルを使わずに魔術を行使している事を考えると、ワイバーンは実は無意識に魔術を使っていたのかもしれない。
……と、少し脱線したが、反重力の力で飛んでいるワイバーンが落下し始めたという事は、ワイバーンの魔力が無くなったという事に他ならない。
「ケイン!これなら……ああ、今なら倒せるかもしれない!鈴菜!大きな光の矢を作ってくれ!それをワイバーンの脳の辺り直接ぶち当てる!」
「いやいやいや!無理だよそんなの!そんなの制御出来ないし当てられないよ!」
「大丈夫!僕が手を貸すからな」
「……?」
鈴菜は言われるがまま落下してくるワイバーン目掛けて大きな光の矢を作った。
「いつでも撃てるよケイン」
「分かった。ちょっと貸してくれ」
ケインは光の矢に触れる。
これで光の矢に『投擲』が適用されたのだ。
「いくぞ!せーのっ!」
その声で鈴菜は光の矢を放つ。
スピードはやはり遅いが、ケインのパワーと『投擲』のおかげで何とかスピードを維持したままワイバーンの脳天を貫いた。
「……倒……した?」
「いや、待て」
脳天を貫かれ、生きているとはとても思えないワイバーンは、何故かまたゆっくりと動き出して光の矢を抜き取った。
「そんな!倒せたと思ったのに……」
「どういう事だ……?って事は奴は完全に不死身って事に……」
こうなってしまってはケインでも倒し方が分からない、見当がつかないのだ。
魔力も無いのに回復するという事はケインの『回復の基本』の様な物で、完全なスキルである為、防ぐ方法は無いという事になる。
だが、ケインと違う点は例え死んでも生き返るという点である。
ケインも胴体真っ二つや、首を斬られるくらいならば断面が綺麗だったら元に戻る。
だが、首を刎ねられたら生き残るのは難しい。
首を斬られた時点で体と離れてしまっていたら無理矢理に再生させる事は不可能なのだ。
ケインを倒すのなら首を斬って、斬った首を遠くに投げるのが有効なのだが、ワイバーンの場合はそれすら通用しない。
ケインが絶望しかけたその時、日奈子が声を上げた。
「待って、何だか再生の速度が遅くなってない?」
「!!?」
「本当だ……言われてみれば」
「どういう事?魔力を無くして首を斬っても死なないのに再生の速度は遅くなってるって……」
そこでようやくケインが結論に辿り着いた。
「そうか分かった!不死身のスキルなんて特殊なオリジナルスキルでも無い限り有り得ない!アイツはスキルで自動回復をしていただけなんだ!」
「それならそれでおかしく無い?スキルの自動回復で死んでも蘇生されるなんて」
「いや、きっと魔術を並行して使っていたんだ。それに、他の何らかのスキルを使ってダメージ軽減や回復力も増強させて極限まで回復力を底上げする事で一瞬で死なない限りどんな攻撃でも再生できる様にしていたんだ」
「あっ!?成る程……だから魔力を失った今魔術を行使する事が出来ずに回復力が落ちているのか……」
「つまり、あいつの巨体を一瞬で消滅させる様な魔術かラブ・パワーを使えれば良いんだね!」
「いや、その必要は無い。回復力が落ちた今なら攻撃し続ける事でスキルの自動回復量を上回って倒す事が出来る筈だよ。ていうかラブ・パワーってなんだ」
「分かった!鈴菜!アレお願い」
日奈子が鈴菜に言った。アレとは一体何だろうか……?
「オッケー『光機関銃』!」
その途端、鈴菜の後ろから無数の光の礫がワイバーンに襲いかかった。
ワイバーンは食らい続けてあちこちに傷ができる。
出来た側から回復しているが、少し押され気味である。
「次は私の番ね!『圧縮』!」
日奈子が出した圧縮により、更にワイバーンの体が削られる。
だが、これでもまだ倒すには至らない。
「ありがとう!あとは僕に任せろ」
ケインが愛剣を取り出して走り出す。
縮地は一瞬で移動するには便利だが、助走をつけて剣撃の威力を上げる事ができない。
そのままトップスピードまで達し、ワイバーンの体の丁度真ん中に剣を振った。
ワイバーンは真っ二つに裂かれ、もう再生はされなかった。ケイン達の勝利である。
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