最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(番外編・地球)

排他的経済水域

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ケインと魔法少女達⑦

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「何とか……倒せたな」

「私達4人……いえ、5人のチームワークのお陰ね!」

ケインは3人と共にハイタッチをしようとする。
……が、ここでふと疑問に思う。

「5人?ここには4人しかいないぞ?」

「ああ、ごめんごめん。紹介が遅れたわね。ケインがいない間に新しい仲間が出来たのよ。見て、キュウよ」

そう言ってキュウを抱いている日向の方を見ると、日向は顔色を悪くして座り込んでいた。

「……ひ、日向!?大丈夫?どこか悪い所でも……」

「へ、平気平気。ちょっとクラっとしちゃっただけで……」

しかし、日向は直後に吐血した。
白い雪の上に真っ赤な血が落ちて鮮やかに広がっていく様は、日向の容体の悪さをそのまま示していた。

「大丈夫じゃ無いじゃ無い!早く病院に行かないと……」

「それより……キュウ……は?」

すると、キュウは日向の背後からヒョコっと顔を出して鳴いた。

「キュウ!」

日奈子が日向を抱えて病院へ向かおうとする。
そんな日奈子を見て、ケインは日向の元に近寄り手を触れた。

「な、何?」

「僕なら『縮地』で一瞬で病院まで行ける。一番近い病院は?」

「えーっと……ここから北西に20キロ」

「了解、鈴菜も捕まって!全員で行くよ!『縮地』!」

ケインは3人を連れて病院の付近まで縮地した。



ケイン達が去った後、街の中で人影が一つ動いた。

その人物は殺されたワイバーンの元に近寄ると興味深げに見守る。

「ムフフフ、良いですねぇ。改造したワイバーンがこんなに容易く討伐されるとは……。どうやら彼女らは研究のしがいがありそうだ。ムフフフフフ」

たった1人で街の中、その人物は不敵に笑っていた。

「さてと、試しにR型を潜り込ませましたが、果たしてどうなる事か……」


………………………………
………………
……


「ここは……」

「本当に病院だ……凄い」

ケインの縮地により病院に着いた一行。
鈴菜と日奈子は驚いているが、今は日向が先である。

「兎に角時間が無い。病院の人に見てもらうぞ」

ケインは日向をお姫様抱っこし、病院の中に入る。
だが、日向はケインに抱かれている間もずっとうわ言を言っていた。

「キュウ……何処?……何処に……」

ケインは只事手間はないと思い受付に行く。

……が、診察まで時間がかかるとの事。

「何でですか!こっちは急患ですよ!」

「申し訳ありません……只今同じ様な症状の患者さんが増えていまして、今も……」

「クッ!何なんだ……何が起こっている?」

どうやらこの近辺で日向と同じ症状に苛まれる人が続出しているらしい。

そのせいで病院が回っていないのだとか……

「チッ!この様子じゃここら辺の病院は大体ダメだろうな」

「ええ、大人しく順番を待つしか……」

その時、キュウが日向の首元にカプリと噛み付いた。
咄嗟の事でケインも日奈子も鈴菜も反応出来ず、焦っていた。

「ああっ!?キュウ!食べちゃダメ!」

「ま、待って!」

だが、キュウに噛まれた日向は顔色を良くして起き上がっていた。

「日向……?大丈夫なの?」

「うん!キュウに噛んでもらったら何だか元気が湧いてきて……倦怠感や疲労も全部無くなったよ!」

「そんな馬鹿な……キュウの唾液に回復薬の効果でもあるのか……?」

そういう魔物がいてもおかしくはない。
だが、そもそもこの魔物は何なのか?

比較的ジムダの魔物に詳しいケインでも知らない魔物である。

「キュウ!!!」

キュウは、そのまま病院内を駆け回り、同じ症状が出ている人を見つけては噛み付いていく。

そして、噛み付かれた人は皆嘘の様に顔色を良くして元気になっていた。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「この子は私たちの命の恩人ね!」

患者さん達はひたすら嬉しそうだったが、病院の先生達からすれば訳が分からなかった。

ひょっとしたら、この病気のワクチンがキュウの唾液に含まれているのかもしれない。

そう考えて医者はキュウの引き渡しを要求したが……

「何よ!キュウ様を実験動物にしようってわけ!?」

「貴方達何様?動物虐待よ!」

「いや、しかしその生物は魔物で……」

「魔物だったら何しても良いって言うの!?信じられないわ!」

……と、キュウに治してもらった患者達から猛反対を受け泣く泣く諦める結果となってしまったのだ。



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