7 / 7
ケインと魔法少女達⑦
しおりを挟む「何とか……倒せたな」
「私達4人……いえ、5人のチームワークのお陰ね!」
ケインは3人と共にハイタッチをしようとする。
……が、ここでふと疑問に思う。
「5人?ここには4人しかいないぞ?」
「ああ、ごめんごめん。紹介が遅れたわね。ケインがいない間に新しい仲間が出来たのよ。見て、キュウよ」
そう言ってキュウを抱いている日向の方を見ると、日向は顔色を悪くして座り込んでいた。
「……ひ、日向!?大丈夫?どこか悪い所でも……」
「へ、平気平気。ちょっとクラっとしちゃっただけで……」
しかし、日向は直後に吐血した。
白い雪の上に真っ赤な血が落ちて鮮やかに広がっていく様は、日向の容体の悪さをそのまま示していた。
「大丈夫じゃ無いじゃ無い!早く病院に行かないと……」
「それより……キュウ……は?」
すると、キュウは日向の背後からヒョコっと顔を出して鳴いた。
「キュウ!」
日奈子が日向を抱えて病院へ向かおうとする。
そんな日奈子を見て、ケインは日向の元に近寄り手を触れた。
「な、何?」
「僕なら『縮地』で一瞬で病院まで行ける。一番近い病院は?」
「えーっと……ここから北西に20キロ」
「了解、鈴菜も捕まって!全員で行くよ!『縮地』!」
ケインは3人を連れて病院の付近まで縮地した。
ケイン達が去った後、街の中で人影が一つ動いた。
その人物は殺されたワイバーンの元に近寄ると興味深げに見守る。
「ムフフフ、良いですねぇ。改造したワイバーンがこんなに容易く討伐されるとは……。どうやら彼女らは研究のしがいがありそうだ。ムフフフフフ」
たった1人で街の中、その人物は不敵に笑っていた。
「さてと、試しにR型を潜り込ませましたが、果たしてどうなる事か……」
………………………………
………………
……
「ここは……」
「本当に病院だ……凄い」
ケインの縮地により病院に着いた一行。
鈴菜と日奈子は驚いているが、今は日向が先である。
「兎に角時間が無い。病院の人に見てもらうぞ」
ケインは日向をお姫様抱っこし、病院の中に入る。
だが、日向はケインに抱かれている間もずっとうわ言を言っていた。
「キュウ……何処?……何処に……」
ケインは只事手間はないと思い受付に行く。
……が、診察まで時間がかかるとの事。
「何でですか!こっちは急患ですよ!」
「申し訳ありません……只今同じ様な症状の患者さんが増えていまして、今も……」
「クッ!何なんだ……何が起こっている?」
どうやらこの近辺で日向と同じ症状に苛まれる人が続出しているらしい。
そのせいで病院が回っていないのだとか……
「チッ!この様子じゃここら辺の病院は大体ダメだろうな」
「ええ、大人しく順番を待つしか……」
その時、キュウが日向の首元にカプリと噛み付いた。
咄嗟の事でケインも日奈子も鈴菜も反応出来ず、焦っていた。
「ああっ!?キュウ!食べちゃダメ!」
「ま、待って!」
だが、キュウに噛まれた日向は顔色を良くして起き上がっていた。
「日向……?大丈夫なの?」
「うん!キュウに噛んでもらったら何だか元気が湧いてきて……倦怠感や疲労も全部無くなったよ!」
「そんな馬鹿な……キュウの唾液に回復薬の効果でもあるのか……?」
そういう魔物がいてもおかしくはない。
だが、そもそもこの魔物は何なのか?
比較的ジムダの魔物に詳しいケインでも知らない魔物である。
「キュウ!!!」
キュウは、そのまま病院内を駆け回り、同じ症状が出ている人を見つけては噛み付いていく。
そして、噛み付かれた人は皆嘘の様に顔色を良くして元気になっていた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「この子は私たちの命の恩人ね!」
患者さん達はひたすら嬉しそうだったが、病院の先生達からすれば訳が分からなかった。
ひょっとしたら、この病気のワクチンがキュウの唾液に含まれているのかもしれない。
そう考えて医者はキュウの引き渡しを要求したが……
「何よ!キュウ様を実験動物にしようってわけ!?」
「貴方達何様?動物虐待よ!」
「いや、しかしその生物は魔物で……」
「魔物だったら何しても良いって言うの!?信じられないわ!」
……と、キュウに治してもらった患者達から猛反対を受け泣く泣く諦める結果となってしまったのだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる