祖国を追放された聖女の私を拾ったのは敵国の皇帝陛下!? ~裏切られ聖女の復讐譚~

楠富 つかさ

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断章

その2 女神との邂逅

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「ちょ、アリシアちゃんこれあれだよね? あーその、うちの子孫だよね?」
「えぇ。あの世界はかなりマズいことになってしまったようですね……」

 誰かの話声がしてゆっくりと目を開く。そこは真っ白な空間で、想像上で語られる死後の世界に思えた。
 不確かな記憶を少しずつ手繰り寄せていくと……そうだ、滝から身を投げたんだった。水面に叩きつけられて命を落としたのだろうか。

「あ、セレーナちゃん気が付いた? まぁ、気が付いたって聞くのも、ここじゃ変な話かもしれないけど」
「えっと、だ、誰?」

 この真っ白な空間にいるのは二人の女の子。片や神々しい金髪と真っ白な衣服を纏った少女で、もう片方は黒髪の快活そうな女の子で、見慣れない異国の服装を身にまとっている。……ひょっとして異世界人? 異世界の人間がこちら側にくるように、私もまさか異世界へ……?

「あ、ごめんね。君にはまだ君の世界でなすべきことがあるから」

 金髪の女の子が、心を読んだかのようにそう言った。私が驚いて、つい黒髪の女の子と目を合わせると、彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「とりあえず自己紹介するね。私、塩川月乃……そっちの世界じゃルナーラって呼ばれていたかな。塩の聖女、あなたのご先祖様」
「え……じゃあ、王都の近くにある祠で亡者を封印したっていうのは……?」
「あぁ、あの祠の近くに遷都しちゃったんだ……おすすめしないってちゃんと伝えておいたのに。まあ、そうなるね。実は私、そっちの世界に行った時に――――ごめん、この話はやっぱりできない。とにかく、封印が解けちゃったみたいだから、君になんとかしてもらいたいわけ。私が行くと、その……」
「世界の調和が乱れるから」

 金髪の女の子がそう言うと、ルナーラ様が悔しそうな、悲しそうな顔をする。封印した亡者になにか思うところがあるのだろう。

「調和を乱さない程度に、私の力を少しだけ託すよ。ほんとごめんね。今度はもう少しゆっくり話そう。それこそ……五十年後くらいに!!」

 ルナーラ様の手からこぼれた白い光が私の中にそっと染み入ってくる。無力な聖女に与えられた、真の聖女たる力、そんな風に思えた。ぎゅっと胸に手を当てると、金髪の女の子も私に歩み寄ってきた。

「私はアリシア。女神をしています。セレーナ、貴女とはきっと少しだけ遠い未来でまた会うでしょう。だから今は……末代たる聖女に清き祝福を」

 アリシア様が私の額に手をかざし、柔らかな笑みをうかべる。

「さぁ、いってらっしゃい」

 再び私は意識を手放した。
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