ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ

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第二十三話「旅路の始まり」

 夜が明けた。
 昨夜のルッテンたちとの別れを噛み締めながら、俺はエルの家で最後の朝食を摂っていた。食卓には、パンとスープ、それに少しだけ残っていた干し肉が並んでいる。

「……なんだか、夢みたいだね。ナオ君と、こうして姉を探す旅に出るなんて」

 エルが、少しだけ潤んだ瞳で俺を見つめる。

「ああ、俺もだ。まさか、こんな異世界で、錬金術師を名乗り、冒険者として旅に出ることになるとはな」

 俺たちは、昨夜のルッテンたちの忠告を思い返していた。この世界は、ダンジョンだけが危険じゃない。人の方が、よっぽど厄介だ、と。特に、俺の錬金術師としての能力は、多くの者の目を引くだろう。
 朝食を終え、食器を片付ける。この家はいつかエルが姉と共に帰ってくる場所としてギルドで管理してもらうらしい。
 全ての準備を終え、俺とエルはリュックサックを背負い、家を出た。鍵をかけ、振り返る。短い間だったが、この家は俺たちにとって、セフィーロの町での安らぎの拠点だった。

「この町ともお別れか」

 町の通りはすでに多くの人で賑わっていた。新鮮な野菜を売る露店商の声、朝の挨拶を交わす町の人々、そして、ダンジョンへと向かう冒険者たちの足音。その喧騒の中に、俺たちは混ざっていく。
 街道に出る出入り口で見慣れた顔が俺たちを待っていた。

「よお、若造ども。まさか本当に旅に出るとはな」

 そこに立っていたのは、グローツだった。その隣には、彼が連れていた取り巻きの姿もある。

「グローツ……」

 俺は、少し驚き、そして戸惑った。彼らが見送りにくるような律儀な男だと思っていなかった。

「別れの挨拶くらい、しに来てやったんだ。感謝しろよ」

 グローツは、ニヤリと笑う。だが、その目はどこか真剣な色を帯びていた。彼は懐から一つの小さな袋を取り出し俺に手渡した。

「これは?」
「俺もセフィーロの町に来るまでは旅をしていた。その時使っていた浄化魔法の込められた錬金具だ。飲み水の浄化や洗濯の代わりになる。もし壊れたとしてもナオなら再錬成できるんじゃないか?」

 袋の中にあったのは握りこぶし大の水晶玉のようなもの。錬金術によってつくられた便利な道具だというが、そんなものをもらってしまっていいのだろうか。
 
「いいのか?」

 俺が驚いて呟くと、グローツはそっけなく言った。

「お前の作ったポーションで一度は痛い目を見たが、それ以降は随分と助けられてる。それはその代価みたいなもんだ」

 俺は、その言葉に、胸が熱くなるのを感じた。この町で、最初に俺を貶め、試した男が、今、こうして俺の力を認めてくれている。

「ありがとう」
「フン。せいぜい気を付けるこっとな」

 グローツはそう言うと、俺たちの目をまっすぐに見つめ、告げた。

「一つだけ、忠告しておいてやる。この先、お前たちの旅には、必ず困難が待ち受けている。だが、お前たちなら乗り越えられる。特に、お前はな」

 そう言って、グローツは俺の肩を強く叩いた。
 彼の言葉には、経験豊富なベテラン冒険者としての重みが感じられた。

「グローツさん、お世話になりました!」

 エルが、笑顔でグローツに声をかける。

「っけ、世話を焼かせなかったくせいによ」

 グローツは、再びニヤリと笑った。

「じゃあな、また会おうぜ」

 そう言って、彼は背を向け歩いていった。

「……なんだか、不思議な人だね」

 エルの呟きに、俺は小さく笑った。

「ああ、本当に。でも、感謝してる」

 俺たちの旅は、ルッテンたち、そしてグローツに見送られ、ついに始まった。町を後にし、俺たちは未だ見ぬ世界へと足を踏み出す。エルの姉を探す旅、そして俺自身が何をするべきかを見定める旅。
 この旅の先には、どんな出会いが、どんな困難が、どんな成長が待っているのだろうか。
 俺たちの冒険は、今、ここから、本当に始まるのだった。
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