ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ

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第二十四話「最初の目的地」

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 俺とエルが歩いているのはセフィーロの町から南東に伸びる街道だ。初めて会った森を迂回するように伸びるその道がどこへと続いているのか、俺はまだ知らない。天気は晴天で魔物の出現も今のところはない。俺はエルにどこへ向かっているのか尋ねた。

「この道はレパードの町に続いているの。姉が初めて送って来た手紙はレパードの町から届けられたものだったんだよ」

 ……なるほど、姉の足跡を辿る度ってわけだ。そういえばエルの姉について全然知らないんだった。せっかくだからいろいろと教えてもらおう。

「名前はシリルっていうの。雷の魔法が小さい頃からすごく得意で、冒険者になってから依頼をたっくさんこなして、あっという間に五級になったんだよ」

 あっという間がどれくらいかは分からないけど、俺たちも七級に上がるまで結構いろいろあった。それにセフィーロの町の依頼数はそう多くない。そんな中で五級まで昇級したんだから、相応の実力者なのだろう。

「その頃にはもう私も一人で身の回りのことはできるようになったから、姉は旅に出たんだ。セフィーロの町の依頼はそんなに稼げるものばかりじゃないし」
「でも、クルーア・ダンジョンがあるだろう?」
「まぁそうなんだけど、今回みたいな非常事態でもなければクルーア・ダンジョンって最下層でも五級相当で、姉にはだんだん物足りなくなっていたんだと思う。それに、私たちが遭遇した六足大鎧をって、魔法にはめっぽう弱いんだって」

 ……それで旅に出ることにしたのか。あんな強そうに思えた魔物を相手にできるような姉からめっきり音沙汰がなくなったとなれば、それはもう心配だろう。むしろ自分の実力不足を冷静に自覚してこれまで無理に飛び出さなかったエルは偉いと思う。

「そういやエルのお姉さんは出稼ぎのためにセフィーロの町を出たんだよな? お金ってどうなるんだ?」
「稼いだお金はギルドで預かってくれるよ。みんながみんな、ナオ君みたいに収納が使えるわけじゃないから、ギルドが銀行の役割や倉庫の役割をしてくれるの。だから冒険者がギルドで、このお金を家族に渡してくれって言えば、手紙と一緒に届くってわけ。……お金も三か月くらい前から入ってこなくなったから、なにかあったに違いないよ……」
「それは心配になるよな。でも、いいのか? 最後にもらった手紙の場所に行かなくて」

 足跡を辿ることで手がかりが得られる可能性はあるが、最近までいた場所に向かった方がいいような気持ちもある。けれど俺の問にエルは首を横に振った。

「姉から送られてきた最後の手紙は、このソルニッサ王国の王都であるプレジデントからだったの。だからレパードの町を経由して、交易都市フーガに行って、そこから南にある港湾都市ジュークに行くよ」

 エルが地面にざっくりとした地図を書いてくれる。森を迂回するように南東に向かい、その後はやや南西へ、そして真南という感じで港に向かうらしい。王都に行くなら陸路より海路がいいらしい。……この世界の地理はまだ分からないことばかりだが、都市を二つも経由するなら情報もきっと手に入るだろう。
 俺たちは引き続き南東に向かって歩くのだった。
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