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第3話 茶道へのお誘い

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   翌日の昼休み、普段なら三人で学食へ向かうのだが。 

「ごめん二人とも、今日はちょっと行くとこがあって」 

  雪絵と恵玲奈にそう言って、叶美は教室を後にした。渡り廊下を通り中等部の建物に入る。久しぶりに入る中等部の校舎だが、造りがほぼ同じため特に感慨は湧かなかった。食堂で食べていたら完全に入れ違いだと今更ながら気付いた叶美だが、何はともあれ三年二組の教室に到着した。露骨に先輩だと緊張させてしまうかもしれないと、校章を外して胸ポケットに仕舞ってみたが、スタイルの良さですれ違う生徒に注目されていた。自分の容姿に無頓着な彼女は気にしていなかったが。 

「あのー、城咲さんいませんか?」 

  廊下側の席でお昼ご飯を食べていた生徒に尋ねてみると、学食だと思いますという返事だった。昼休みも始まって既に十分ほど。購買から戻ってきていてもおかしくない時間に教室にいないなら、まぁおそらく学食かどこかのベンチでお弁当を食べている流れだろう。 

「すれ違っちゃったかぁ。ありがとう」 

  そう言って踵を返そうとした矢先、別に直接渡さなくたっていいじゃないかと気付いた叶美は、さっきまで話していた彼女に紅葉の生徒手帳を渡す。 

「城咲さんの生徒手帳を拾ったから、本人に返してあげて」 

  そう伝えて今度こそ教室を後にした。戻りながら購買でサンドイッチを買うと教室に戻って食べる。 

「あら、水藤さんお一人って珍しいのね」 

  ボトルタイプの缶コーヒーを飲みながら声をかけてきたのは、クラスメイトの源沙姫であった。コーヒーを飲んでいるせいで気付くのが遅れたが、彼女は茶道部。何の気なしに紅葉の話を振ってみる。 

「あぁ、城咲さんね。真面目な娘よ。うちの茶道部では珍しい方ね。それで? どういう繋がり」 
「生徒手帳を拾ったから届けに行ってたの。丁度入れ違いになっちゃったからクラスメイトの子に渡すようお願いしたけど」 
「へえ、城咲さんが生徒手帳を。慌ててたのかしら」 

  落とした経緯を知らないはずの彼女が、紅葉は慌てていたのかと予想したことに少々驚く叶美。そんな会話をしていると、教室に恵玲奈と雪絵が戻ってきた。 

「あれ、叶美と沙姫が話してるなんて珍しいじゃん」 

  さっそく人好きのする笑みを浮かべながら話に混ざる恵玲奈。 

「ちょっと茶道部のことで」 
「叶美も茶道やってみる?」 
「叶美も、って言うことは恵玲奈はやったことあるの?」 
「もちろんさ雪絵。私のルームメイト誰か知ってるかい? 恵だよ。茶道の体験を一回だけさせてもらったんよ」 
 
 桜花寮に住む恵玲奈のルームメイト、四方田恵も源沙姫や城咲紅葉と同様に茶道部の所属。新聞部と放送部を掛け持つ恵玲奈も一度だけ体験したことがある。 

「部としてはいつでも歓迎よ。昨日はイギリスだったかしら。金髪の留学生が体験に来たわ」 
「あぁ、エヴァちゃんか」 
「恵玲奈、知ってるの?」 
「まぁ、私も彼女も桜花寮生だし、彼女は人目を惹くからね」 
「で、どうする? 茶道体験。ちょうど新入生向けに体験会もやっているし。茶菓子もあるわよ?」 

  沙姫に誘われる三人だが、雪絵はすぐにかぶりを振った。雪絵は二人と比べやや人見知りな性格なのだ。 

「叶美はどうする? 私は行こうかなって思ってるけど」 
「うーん、わたしも行ってみようかな。城咲さんにも会いたいし」 
「……珍しいのね、叶美が誰かに興味を持つなんて」 
「え、そうかな?」 

  そうこうしているうちに昼休みの終わりを告げるチャイムがなり、それぞれが自分の席に戻っていった。 
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