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#5 伊勢戦線
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数日、出撃の機会がなかったため私はグリーディ・メイデンの制御に専念することが出来た。とはいえ、一朝一夕に魔剣の代償は克服できるものではない。脈拍の過剰な加速こそ抑えられるようになってきたが、やはり結歌ちゃんへの劣情が私を悩ませる。
そんな中、結歌ちゃんを隊長とする隊が編成され伊勢に出撃することになった。
魔獣の生態については未だに不明瞭な点が多いが、得てして寺社仏閣の近くへは出没しないのだが、今回は珍しく伊勢エリアで発見されたと偵察班から通知があった。
地下に敷設されたリニアカーを使って伊勢へとやってきた私たち。まずはブリーフィングを行う。
「今回、隊長を拝命しました中等部二年、藤城結歌大尉であります。では説明に映ります。今回出没した魔獣は中型種が二体と小型種が六体の計八体。まずは小型種を二班に分かれ掃討。その後、合流し中型種を撃滅します。班分けはこちらとなります。藤城班は赤松曹長、大宮少尉、木戸准尉、志島少尉、野村軍曹。遠距離系メイガスの野村軍曹のバックアップを木戸准尉にお願いします」
結歌ちゃんの説明が一通り終わると、今度は私が前に出て話し始める。結歌ちゃんが大尉に昇進する前は、私が隊長を務めることが多かったから特に緊張はしない。むしろブリーフィングに緊張していたら戦闘は緊張どころじゃない。
「今回、副隊長を拝命しました中等部二年、露辺舞美です。露辺班は田中少尉、中村准尉、西川少尉、宮下中尉、渡辺伍長です。こちらの班は遠距離系メイガスがいないので、総員で魔獣を撃滅します。また当作戦では、中型種討伐時に壁役が必要となります。担当は藤城班では藤城隊長が、露辺班では宮下中尉……お願いします」
「了解」
その後、質疑応答を経て各自通信デバイスのチェックを行う。
『皆さん聞こえる? 今回のオペレーターを務めます、伊藤です。会敵まで残り約五分です。中型種が斥候として小型種を使っている模様です。皆さん、索敵をお願いします』
「総員出撃、抜刀!!」
結歌ちゃんの声で隊員たちのまとう空気が変わる。ここから先は戦場……私たちは班に分かれて索敵行動に移行する。魔獣は魔力の濃い場所で自然発生するなんていう説もあるくらいだ。いつどこに現われるか分からない。
「藤城隊長の親友だから副隊長……」
索敵中、呟いたその声を私は聞き逃さなかった。宮下中尉とは階級こそ一緒だが、学年では二学年先輩だ。先月も組んだが、正直言って折り合いは悪い。とは言え、戦力の均等化のためにどうしてもこちら側に必要な人材なのだ。冷静な自分はそれを分かっているけれど、感情的な自分はどうしても彼女を苦手にしている。
「貴女はそう思っているでしょうけど」
「はい?」
思わぬ発言に、驚いてしまう。
「貴女の技量をわたくし、評価しているのよ。だからそう警戒しないで。警戒する相手は魔獣だけで充分よ。そもそも、年下だから気にくわないのなら藤城隊長が中尉の頃から釘を刺すわよ」
それもそう、なのかな……。結歌ちゃん以外の人との関係を蔑ろにしすぎたのかもしれない。自己反省。
「藤城隊長、可愛いわよね。妹にしたいくらいだわ」
……前言撤回、この人は要警戒対象。今後絶対に結歌ちゃんと同じ班にしてはならない。結歌ちゃんは私だけの結歌ちゃんなのだから。……おや? グリーディ・メイデンが僅かに震えた気がしたのだけれど……。欲深いことを考えてしまったせいだろうか。
「中尉、小型の魔獣を発見。数は三、強襲します」
魔力を全身に巡らせ、各員が臨戦態勢に移行する。大剣使いの中村准尉と大斧使いの西川少尉が武器を構える。今回が中型種との初交戦となる渡辺伍長は既に緊張気味だ。魔力量や発育にもよるけれど、十一歳から十二歳が初陣となることが多い。伍長は十一歳になったばかり。いくら将来のエース格とはいえ酷に思う。
「大丈夫だよ。まだ小型種だから、二人が一撃加えた所に追撃しよう」
頷く伍長は深呼吸して剣を構える。ハンドサインを送ると同時に、中村准尉、西川少尉そして宮下中尉がそれぞれの魔獣へ飛びかかる。野犬型の魔獣が仰け反った隙を、二陣の私たちが斬り伏せる。一匹は飛び退いて二の太刀を躱す。
「くぅ! せい!!」
一撃を回避されたことで冷静さを取り戻したのか、追撃を正確に放つ渡辺伍長。その姿にホッとした。野犬型の魔獣は数が多く、討伐者が最初に討伐することの多い魔獣だが、決して弱小魔獣ではなく年に何人も野犬型魔獣に重傷を負わされている。死者だって……。
『藤城班、露辺班、双方ともに三体の討伐を確認。各位バイタル正常。中型種の位置情報を送信します』
腕時計型端末に位置情報が送信される。私たちからすれば北東にあたる方角に中型種が二体いる。小型種はそれこそ大型犬程度のサイズだが、中型種は普通乗用車並の大きさになり、大きいだけで脅威となるため討伐には十人前後の隊で取りかからなければならない。腰に佩いた二本の剣に少しバランスを乱されるが、挙動に違和感はない。結歌ちゃんから合流地点の座標が送られてきた。
「露辺班、藤城班との合流を開始します」
避難を終えた無人の街に、班員たちの返事が響いた。
そんな中、結歌ちゃんを隊長とする隊が編成され伊勢に出撃することになった。
魔獣の生態については未だに不明瞭な点が多いが、得てして寺社仏閣の近くへは出没しないのだが、今回は珍しく伊勢エリアで発見されたと偵察班から通知があった。
地下に敷設されたリニアカーを使って伊勢へとやってきた私たち。まずはブリーフィングを行う。
「今回、隊長を拝命しました中等部二年、藤城結歌大尉であります。では説明に映ります。今回出没した魔獣は中型種が二体と小型種が六体の計八体。まずは小型種を二班に分かれ掃討。その後、合流し中型種を撃滅します。班分けはこちらとなります。藤城班は赤松曹長、大宮少尉、木戸准尉、志島少尉、野村軍曹。遠距離系メイガスの野村軍曹のバックアップを木戸准尉にお願いします」
結歌ちゃんの説明が一通り終わると、今度は私が前に出て話し始める。結歌ちゃんが大尉に昇進する前は、私が隊長を務めることが多かったから特に緊張はしない。むしろブリーフィングに緊張していたら戦闘は緊張どころじゃない。
「今回、副隊長を拝命しました中等部二年、露辺舞美です。露辺班は田中少尉、中村准尉、西川少尉、宮下中尉、渡辺伍長です。こちらの班は遠距離系メイガスがいないので、総員で魔獣を撃滅します。また当作戦では、中型種討伐時に壁役が必要となります。担当は藤城班では藤城隊長が、露辺班では宮下中尉……お願いします」
「了解」
その後、質疑応答を経て各自通信デバイスのチェックを行う。
『皆さん聞こえる? 今回のオペレーターを務めます、伊藤です。会敵まで残り約五分です。中型種が斥候として小型種を使っている模様です。皆さん、索敵をお願いします』
「総員出撃、抜刀!!」
結歌ちゃんの声で隊員たちのまとう空気が変わる。ここから先は戦場……私たちは班に分かれて索敵行動に移行する。魔獣は魔力の濃い場所で自然発生するなんていう説もあるくらいだ。いつどこに現われるか分からない。
「藤城隊長の親友だから副隊長……」
索敵中、呟いたその声を私は聞き逃さなかった。宮下中尉とは階級こそ一緒だが、学年では二学年先輩だ。先月も組んだが、正直言って折り合いは悪い。とは言え、戦力の均等化のためにどうしてもこちら側に必要な人材なのだ。冷静な自分はそれを分かっているけれど、感情的な自分はどうしても彼女を苦手にしている。
「貴女はそう思っているでしょうけど」
「はい?」
思わぬ発言に、驚いてしまう。
「貴女の技量をわたくし、評価しているのよ。だからそう警戒しないで。警戒する相手は魔獣だけで充分よ。そもそも、年下だから気にくわないのなら藤城隊長が中尉の頃から釘を刺すわよ」
それもそう、なのかな……。結歌ちゃん以外の人との関係を蔑ろにしすぎたのかもしれない。自己反省。
「藤城隊長、可愛いわよね。妹にしたいくらいだわ」
……前言撤回、この人は要警戒対象。今後絶対に結歌ちゃんと同じ班にしてはならない。結歌ちゃんは私だけの結歌ちゃんなのだから。……おや? グリーディ・メイデンが僅かに震えた気がしたのだけれど……。欲深いことを考えてしまったせいだろうか。
「中尉、小型の魔獣を発見。数は三、強襲します」
魔力を全身に巡らせ、各員が臨戦態勢に移行する。大剣使いの中村准尉と大斧使いの西川少尉が武器を構える。今回が中型種との初交戦となる渡辺伍長は既に緊張気味だ。魔力量や発育にもよるけれど、十一歳から十二歳が初陣となることが多い。伍長は十一歳になったばかり。いくら将来のエース格とはいえ酷に思う。
「大丈夫だよ。まだ小型種だから、二人が一撃加えた所に追撃しよう」
頷く伍長は深呼吸して剣を構える。ハンドサインを送ると同時に、中村准尉、西川少尉そして宮下中尉がそれぞれの魔獣へ飛びかかる。野犬型の魔獣が仰け反った隙を、二陣の私たちが斬り伏せる。一匹は飛び退いて二の太刀を躱す。
「くぅ! せい!!」
一撃を回避されたことで冷静さを取り戻したのか、追撃を正確に放つ渡辺伍長。その姿にホッとした。野犬型の魔獣は数が多く、討伐者が最初に討伐することの多い魔獣だが、決して弱小魔獣ではなく年に何人も野犬型魔獣に重傷を負わされている。死者だって……。
『藤城班、露辺班、双方ともに三体の討伐を確認。各位バイタル正常。中型種の位置情報を送信します』
腕時計型端末に位置情報が送信される。私たちからすれば北東にあたる方角に中型種が二体いる。小型種はそれこそ大型犬程度のサイズだが、中型種は普通乗用車並の大きさになり、大きいだけで脅威となるため討伐には十人前後の隊で取りかからなければならない。腰に佩いた二本の剣に少しバランスを乱されるが、挙動に違和感はない。結歌ちゃんから合流地点の座標が送られてきた。
「露辺班、藤城班との合流を開始します」
避難を終えた無人の街に、班員たちの返事が響いた。
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