火花散る剣戟の少女達

楠富 つかさ

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#17 関ケ原へ

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 模擬戦の乱戦っぷりですっかり打ち解けた新生藤城隊なのだが、寒さ厳しい十二月初旬いよいよ関ケ原への移動が始まった。八人ずつに分かれて車に乗り込む。なお幸村少佐は結歌ちゃんと同じ車で移動している。……すごく、むかつく。
 世界がこんな状況だから免許の仕組みなんてすっかり変わってしまって、十五歳から運転ができる。そうでないと遠方の魔獣討伐に行けないからね。交代で運転するが、今は各部隊の副隊長が運転をしてくれている。

「後方から魔獣が迫ってきていますね。こちらで対応しましょうか?」
「うーん、そうだね。何頭か叩いて車列に戻ってね」

 四台に分かれて移動しているのだが、東西南北でフォーメーションを組んで走っている。どこから魔獣が来ても対応できるようにするためだ。車同士のやり取りはトランシーバーで行っている。

「じゃあ、露辺隊……出撃!」

 露辺隊は前回の演習の白組に加えて藤城隊から剣士の大宮少尉を加えた八人だ。
 討伐するのは山羊のような魔獣を二十体。群れで行動するため脅威度はやや高いが、各個撃破すればそう問題ない。前田少尉や浅倉准尉が果敢に攻め込む中、私は渡辺伍長と一緒にメイガスである橘曹長の援護。橘曹長の属性は水、上空から勢いよく水を叩きつけられた魔獣がダウンしたところを斬り込む。
 さらに木戸少尉と比留田少尉の同級生コンビが縦横無尽に活躍してせん滅完了。懐にもぐりこんで拳一つで中型の魔獣を屠る比留田少尉の強さに改めて目を見張る。

「さぁて、車に戻ろうか」

 浅倉准尉に運転を交代してもらいつつ、先行した三台を追いかける。
 学園から離れれば魔獣に荒らされた市街が広がり、徐々に建物……だったがれきすら減っていく。

「関ケ原ってめちゃめちゃ大量の魔獣がいるんですよね?」

 比留田少尉が好戦的なオーラを隠すことなく尋ねてくる。そういったところが、ちょっと結歌ちゃんに似ているかもしれない。同級生ということもあって、班は違えどそれなりに交流がある。そういうところがやっぱり仲のいい理由なんだろうか。

「どんな敵が出ようと全てせん滅するだけよ。関ケ原は確かに魔境だけどね」
「敵が強いとワクワクするタイプなんでねぇ」

 前田少尉の冷静さがありがたい。もう少し討伐スコアが高ければとっくに中尉になっていそうなのに。
 私自身、正直なところ大尉として十分な実力があるとは思えないけど……戦果、関ケ原で挙げるしかないのかな。結歌ちゃんに追いつくためにも……認めてもらうためにも。結歌ちゃんを……守るだけの力が欲しい。

「露辺副隊長。少し表情が険しいですけど……車酔いですか?」
「渡辺伍長、ありがと。うん……大丈夫よ。魔獣との戦闘で跳んだり跳ねたりするんだから、車酔いなんてしないわよ」
「そ、そうですよね。わ、私も……関ケ原で頑張りますから!」

 妹と同い年の子に心配させちゃった。ちょっと反省かなぁ。
 ちょっと離れただけなのに、結歌ちゃん……会いたくなっちゃったなぁ。
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