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いくらプロローグだからってブラックアウトなんてちょっと……
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今日もこの世界は平和だ。少なくとも、私の目に映る限りは。だからきっと……この平和な日々が崩れるなんて、考えもしなかったんだと思う。
その日もいつも通りに授業を終えた。窓が開いているせいで秋風が吹き込む廊下を、濃紺のプリーツスカートを翻しながら歩いていると、廊下の前方から私を呼ぶ声が聞えてきた。
「先輩、烏丸先輩!!」
剣道部に所属する高校二年生の私、烏丸雛菊がいつものように剣道部の部室へ向かうと、後輩の一人が勢いよく私に駆け寄り、部室へぐいぐいと引っ張った。そこで私が見たのは、
「え、なにこれ? 本物?」
元々は正方形だが、両脇にあるロッカーにより長方形となった部室。その最奥、窓からの光を反射して輝く物騒な……日本刀。ここは剣道部、文化祭で披露する剣道型のために模擬刀が常時数本、保管されている。だが、私の目の前にあるそれは、床に突き刺さっているのだ。どんなに切っ先が尖っていようと模擬刀では有り得ないことだ。
「本物なのは……確かです。だって包丁で苦戦した固い人参が、すっぱりと……ほら」
調理実習があったらしい別の後輩が、真っ二つにカットされた人参を見せてきた。確かに、断面はきれいで、この刀が真剣であることを示している。ならどうして、こんな場所にあるのだろうか。私が首を傾げると、後輩の一人が引き抜こうと力を込めながら思いもよらぬことを口にする。
「しかもこの刀、すごく重いのか、どうにも抜けないんです」
この日本刀は見た目から察するに一キロあるかないかくらいだ。多少、深めに刺さっていても引き抜けないはずがない。後輩の動きにそんなまさかと思い、菊の紋が施された柄を握り、そのまま引き上げる。
「あれ、抜けるじゃん。あ……いい刀……」
抜いた刀をじっくりと見てみると、小判型の鍔から伸びる刀身に反りはあまりなく、刃は少し薄めで手に馴染む重み。波型の刃紋は白銀に輝き、鎬地や地中と呼ばれる峰側の黒鉄色と好対照だ。見る者を虜にする美しい一振りだ。
「なんでこんな国宝級に美しい刀が部室に?」
そう聞こうと振り向くと、
「あれ、ここ……どこ?」
そこには誰も居ない上に、視界はどんどん黒く染まるのだった……。
その日もいつも通りに授業を終えた。窓が開いているせいで秋風が吹き込む廊下を、濃紺のプリーツスカートを翻しながら歩いていると、廊下の前方から私を呼ぶ声が聞えてきた。
「先輩、烏丸先輩!!」
剣道部に所属する高校二年生の私、烏丸雛菊がいつものように剣道部の部室へ向かうと、後輩の一人が勢いよく私に駆け寄り、部室へぐいぐいと引っ張った。そこで私が見たのは、
「え、なにこれ? 本物?」
元々は正方形だが、両脇にあるロッカーにより長方形となった部室。その最奥、窓からの光を反射して輝く物騒な……日本刀。ここは剣道部、文化祭で披露する剣道型のために模擬刀が常時数本、保管されている。だが、私の目の前にあるそれは、床に突き刺さっているのだ。どんなに切っ先が尖っていようと模擬刀では有り得ないことだ。
「本物なのは……確かです。だって包丁で苦戦した固い人参が、すっぱりと……ほら」
調理実習があったらしい別の後輩が、真っ二つにカットされた人参を見せてきた。確かに、断面はきれいで、この刀が真剣であることを示している。ならどうして、こんな場所にあるのだろうか。私が首を傾げると、後輩の一人が引き抜こうと力を込めながら思いもよらぬことを口にする。
「しかもこの刀、すごく重いのか、どうにも抜けないんです」
この日本刀は見た目から察するに一キロあるかないかくらいだ。多少、深めに刺さっていても引き抜けないはずがない。後輩の動きにそんなまさかと思い、菊の紋が施された柄を握り、そのまま引き上げる。
「あれ、抜けるじゃん。あ……いい刀……」
抜いた刀をじっくりと見てみると、小判型の鍔から伸びる刀身に反りはあまりなく、刃は少し薄めで手に馴染む重み。波型の刃紋は白銀に輝き、鎬地や地中と呼ばれる峰側の黒鉄色と好対照だ。見る者を虜にする美しい一振りだ。
「なんでこんな国宝級に美しい刀が部室に?」
そう聞こうと振り向くと、
「あれ、ここ……どこ?」
そこには誰も居ない上に、視界はどんどん黒く染まるのだった……。
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