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いくら異世界転移だからってテンプレート通りなんてちょっと……
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視界が真っ暗になると、今度は少しずつ視界が開けてきた。明るくなると、目の前には見たことない光景が広がっていた。
「おぉ! 儀式は成功したのだな!」
目の目には凄まじく豪奢な椅子――その豪華さはもはや玉座――に掛ける恰幅のいい男性。両サイドにはそれこそロールプレイングゲームに出てきそうな金属鎧を纏った人物が二人。腕には楯を装備しており、剣は腰に佩いている。そんな、見るからに王城と思しき空間で、私は刀を持ったまま立ちすくんでいた。
「やっと救世の刀に導かれた勇者を招くことが出来た……。この鞘を頼みに、何年待ったか。ようやく、あの刀が認める御仁に出会えたのか……」
「え、えっと……」
勇者という言葉を聴き、どうやら創作物によくある異世界へ召喚されたということを少しだが認識し、王様で確定した目の前に男性に声をかけようとしたのだが……。
「む!? その声、刀の持ち主は年端もいかぬ少女だというのか!?」
十六歳は年端もいかない方なのだろうか。というか、ずっとこちらを見ているはずの王様が、私のいでたちを理解していないことが理解できない……。
「えぇ、そうですとも。ですが、凛々しいお方にございます。まるで在りし日の王妃殿下のように……」
側に仕える――騎士か兵士か分からないが――男性の一人が王様に告げる。屋内だからか兜はしておらず、その美しい金髪と容貌を晒している。隣にいるもう一人とは鎧の豪奢さが違うことから、何らかの責任者であるかもしれない。そんな風にじっくりと見ていると、
「おっと、勇者様。貴女のお名前は?」
側に控える男性のもう一人、アイボリーの髪をした男性に名を尋ねられて、雛菊とだけ答えた。
「そうか。ヒナギクというのだな。いい名前だ。それでは王様」
男性は名乗らず、王様の方を向くと一礼した。何が始まるのか?
「勇者ヒナギクよ。私は盲目故に汝の顔を見ることは出来ぬ。だが、汝の持つ波動を感じることは出来る。頼む、魔王を討ち、この世界に平和をもたらして欲しい……」
やっぱりそういうことですか……。無茶でしょ!? 確かに剣道をやって十年以上経つし、県で優勝、地区ブロックで準優勝、全国大会でベスト4と、それなり以上の結果は出した。でも、それこそ全国一位を呼びなさいよというところだし、段位も三段。世の中にはもっと超人的に強い人がいるはず。だというのに、どうして私!?
「頼む。この通りだ……」
王座から立ち上がり、階段を降りて頭を下げる王様。
一国の主にそこまで誠実に頼み込まれてしまっては……。私は結局、全力を尽くしますと、返事をするのだった。
「おぉ! 儀式は成功したのだな!」
目の目には凄まじく豪奢な椅子――その豪華さはもはや玉座――に掛ける恰幅のいい男性。両サイドにはそれこそロールプレイングゲームに出てきそうな金属鎧を纏った人物が二人。腕には楯を装備しており、剣は腰に佩いている。そんな、見るからに王城と思しき空間で、私は刀を持ったまま立ちすくんでいた。
「やっと救世の刀に導かれた勇者を招くことが出来た……。この鞘を頼みに、何年待ったか。ようやく、あの刀が認める御仁に出会えたのか……」
「え、えっと……」
勇者という言葉を聴き、どうやら創作物によくある異世界へ召喚されたということを少しだが認識し、王様で確定した目の前に男性に声をかけようとしたのだが……。
「む!? その声、刀の持ち主は年端もいかぬ少女だというのか!?」
十六歳は年端もいかない方なのだろうか。というか、ずっとこちらを見ているはずの王様が、私のいでたちを理解していないことが理解できない……。
「えぇ、そうですとも。ですが、凛々しいお方にございます。まるで在りし日の王妃殿下のように……」
側に仕える――騎士か兵士か分からないが――男性の一人が王様に告げる。屋内だからか兜はしておらず、その美しい金髪と容貌を晒している。隣にいるもう一人とは鎧の豪奢さが違うことから、何らかの責任者であるかもしれない。そんな風にじっくりと見ていると、
「おっと、勇者様。貴女のお名前は?」
側に控える男性のもう一人、アイボリーの髪をした男性に名を尋ねられて、雛菊とだけ答えた。
「そうか。ヒナギクというのだな。いい名前だ。それでは王様」
男性は名乗らず、王様の方を向くと一礼した。何が始まるのか?
「勇者ヒナギクよ。私は盲目故に汝の顔を見ることは出来ぬ。だが、汝の持つ波動を感じることは出来る。頼む、魔王を討ち、この世界に平和をもたらして欲しい……」
やっぱりそういうことですか……。無茶でしょ!? 確かに剣道をやって十年以上経つし、県で優勝、地区ブロックで準優勝、全国大会でベスト4と、それなり以上の結果は出した。でも、それこそ全国一位を呼びなさいよというところだし、段位も三段。世の中にはもっと超人的に強い人がいるはず。だというのに、どうして私!?
「頼む。この通りだ……」
王座から立ち上がり、階段を降りて頭を下げる王様。
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