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第1話
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「西原中学校から転校してきました、元住空凪です。よろしくお願いします」
人生で何度目の転校だろうか。まだ14年も生きていない私に、人生を語る資格があるかはさておき、この転校は……確か6度目だ。小2春、小4夏、小5春、小6夏、中1冬そして今回が中2夏。夏と言っても二学期開始からの転入ということで厳密には秋かもしれない。
「元住さんの席はそこね」
担任の先生が指さした席は最後列窓側二番目の席だった。私はクラスの32人目。隣はちょっと前まではみ出し席だったわけか。その旧・はみ出し席の主を一目見て、私は息を呑んだ。
「――――っ」
艶のある黒髪、切れ長で二重の瞳、日焼けを全く感じさせない白い肌。同い年とは思えない大人びた姿が、私の目を釘付けにした。私が彼女に目を奪われている間に、朝の会が終わり慌てて立ち上がり一礼してから座った次の瞬間には、彼女は教室を立ち去ろうとしていた。私が呼び止めようとすると、
「元住さんっ」
私の目の前の席に座っている女の子に声をかけられ、驚いてむせる。
「んぐ! げほっ、ぅん、何?」
「あぁ、驚かせちゃってごめん。あたし、五十嵐葵。よろしくね」
「う、うん。よろしく」
五十嵐さんに声をかけられたことを皮切りに、クラスの女子多数と一部の男子にあれこれと質問される。
「彼氏いる?」
「い、いないよ!」
「西原って隣の市にある大きめの中学でしょ? かっこいい男子多かった?」
「えぇと、よく分からないかなぁ」
転校ばっかりの私に彼氏がいるわけないし、あんまり人と深く関わらないし。
「どこに住んでるの?」
「き、北の方」
「田舎側かぁ。一緒だねぇ」
「そ、そうだね」
久慈市は中心部にある駅を中心に南北で雰囲気ががらりと変わる。久慈市立第一中学校はちょうど駅に近い立地なため、北側からも南側からも生徒が集まる。
「あ、あの。私からも聞いていいかな?」
「なになに? うちの学校にはイケメンいないよ?」
そんなことを聞きたいわけじゃない。
「私の隣の席の人、なんて名前なの?」
私がその質問をした途端に、私の周りにいた人たちの表情が変わった。凍り付いたというか、固まった。実際、体感気温も下がったように感じた。
「時見か……あいつとは関わらない方がいい」
男子の誰かが声変わりした低い声で呟いた。それに説明を追加するように、五十嵐さんが呟く。
「時見結心……彼女は特別というか、特殊というか」
ときみ……ゆうこ。特別な……女の子。
「関わると碌なことがない。それだけは確かよ」
「そっか。でも、あんなに綺麗な人なのに」
「外側が綺麗だからって、中身もそうとは限らないのよ」
吐き捨てるように誰かがそう言って、席へ戻っていった。もう帰るらしい。私もそろそろ帰りたいが……未だに多くの人に囲まれている。
「あ、あの。私、帰りますね」
「あーごめん。それじゃ、また明日ね。空凪ちゃん」
五十嵐さんに手を振って、教室を出る。
私と時見さんの初対面となる一日が終わった。
人生で何度目の転校だろうか。まだ14年も生きていない私に、人生を語る資格があるかはさておき、この転校は……確か6度目だ。小2春、小4夏、小5春、小6夏、中1冬そして今回が中2夏。夏と言っても二学期開始からの転入ということで厳密には秋かもしれない。
「元住さんの席はそこね」
担任の先生が指さした席は最後列窓側二番目の席だった。私はクラスの32人目。隣はちょっと前まではみ出し席だったわけか。その旧・はみ出し席の主を一目見て、私は息を呑んだ。
「――――っ」
艶のある黒髪、切れ長で二重の瞳、日焼けを全く感じさせない白い肌。同い年とは思えない大人びた姿が、私の目を釘付けにした。私が彼女に目を奪われている間に、朝の会が終わり慌てて立ち上がり一礼してから座った次の瞬間には、彼女は教室を立ち去ろうとしていた。私が呼び止めようとすると、
「元住さんっ」
私の目の前の席に座っている女の子に声をかけられ、驚いてむせる。
「んぐ! げほっ、ぅん、何?」
「あぁ、驚かせちゃってごめん。あたし、五十嵐葵。よろしくね」
「う、うん。よろしく」
五十嵐さんに声をかけられたことを皮切りに、クラスの女子多数と一部の男子にあれこれと質問される。
「彼氏いる?」
「い、いないよ!」
「西原って隣の市にある大きめの中学でしょ? かっこいい男子多かった?」
「えぇと、よく分からないかなぁ」
転校ばっかりの私に彼氏がいるわけないし、あんまり人と深く関わらないし。
「どこに住んでるの?」
「き、北の方」
「田舎側かぁ。一緒だねぇ」
「そ、そうだね」
久慈市は中心部にある駅を中心に南北で雰囲気ががらりと変わる。久慈市立第一中学校はちょうど駅に近い立地なため、北側からも南側からも生徒が集まる。
「あ、あの。私からも聞いていいかな?」
「なになに? うちの学校にはイケメンいないよ?」
そんなことを聞きたいわけじゃない。
「私の隣の席の人、なんて名前なの?」
私がその質問をした途端に、私の周りにいた人たちの表情が変わった。凍り付いたというか、固まった。実際、体感気温も下がったように感じた。
「時見か……あいつとは関わらない方がいい」
男子の誰かが声変わりした低い声で呟いた。それに説明を追加するように、五十嵐さんが呟く。
「時見結心……彼女は特別というか、特殊というか」
ときみ……ゆうこ。特別な……女の子。
「関わると碌なことがない。それだけは確かよ」
「そっか。でも、あんなに綺麗な人なのに」
「外側が綺麗だからって、中身もそうとは限らないのよ」
吐き捨てるように誰かがそう言って、席へ戻っていった。もう帰るらしい。私もそろそろ帰りたいが……未だに多くの人に囲まれている。
「あ、あの。私、帰りますね」
「あーごめん。それじゃ、また明日ね。空凪ちゃん」
五十嵐さんに手を振って、教室を出る。
私と時見さんの初対面となる一日が終わった。
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