特別な私と貴女の特別な花

楠富 つかさ

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第2話

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 家に帰っても私は一人だった。両親が離婚し……今は母との二人暮らしだ。どうじて久慈に越してきたかというと、祖母が施設に入るからというのも理由にあった。祖父をとうの昔に亡くし、祖母一人で住んでいた家ではあるが、祖母もここに住み続けるのは限界だった。取り壊すには惜しい家なので私と母が暮らすことになった。とは言え母は雑誌の編集者。家にいる方が珍しいくらいだ。

「せめてワンちゃんでもいれば、寂しくないんだけどなぁ……」

 もっとも、ガラ空きになることが多い家で、動物など飼えるわけもなく、今日も一人寂しくテレビと会話しながら自分で作った焼きそばを頬張る。祖父が亡くなった後、祖母が住みやすいように結構大がかりなリフォームをしただけあって、快適な住環境ではある。独りではあるが。

「ごちそうさま」

 食器を片付け、一時間ほどゆっくり過ごしてから食器を洗い、お風呂場に移動してお風呂も洗う。お湯が溜まるのを待ってから入浴。私が寝る時間になっても母は帰ってこなかった。もう一人分作っていたやきそばを冷蔵庫にしまい、あてがわれた部屋で寝る。

「明日も……学校だ」



「あ、えっと、おはよう」

 朝、学校に着いて教室に入ると時見さんは既に着席していた。挨拶をしてみるが、

「ふん」

 返事はもらえなかった。でも、やっぱり綺麗だ。

「おはよう、空凪ちゃん」
「お、おはよう。五十嵐さん」
「葵でいいよ?」
「あ、じゃあ、葵ちゃん」
「よろしい」

 葵ちゃんと少し喋ってると、すぐに先生がやってきた。

「あぁそうだ元住さん。園芸委員、やってくれる?」
「ふぇ?」

 朝の会が始まってすぐ、私は驚いた。

「時見さんと二人、園芸委員をお願いしたいんだけど」

 先生はそう言いながら、私と時見さんに視線を交互にやる。

「必要ありません。委員は私一人で問題ありません」

 私の隣で、時見さんの凛とした声が響いた。……時見さんと二人なら、頑張れるかもしれない。

「私、園芸委員やります!」

 にっこり微笑む先生とは対照的な雰囲気が隣から伝わってくるのは気のせいだと信じたい……。

「じゃあ、時見さんには学校の案内も任せてしまいましょうか」
「お断りです。委員長にやらせればいいじゃないですか」

 そう言いながら時見さんが視線を送ったのは葵ちゃんだった。え、葵ちゃんが委員長だったの?

「あは、言いそびれてた。あたし、クラス委員なんだぁ」
「まぁ、時見さんお願いね。それじゃ、朝の会を続けるわよ」

 ……先生、おっとりした見た目のわりにけっこう強引?
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