特別な私と貴女の特別な花

楠富 つかさ

文字の大きさ
5 / 13

第5話

しおりを挟む
「え? あぁ……うん、帰るよ」
「じゃあ途中まで一緒行きます?」
「うん……そうだね」

 こうして帰り道で唯菜ちゃんと話すことになったのだが、何を話していいのか。帰り道、方向は一緒だけれど特に話題もなく歩き進む。あまり車の走ってない道にも横断歩道はあり、信号に止められる。

「センパイ、時見センパイのこと知りたいンすか?」
「え、なんで……」
「だってめっちゃ見てるし」
「あはは、バレちゃってたか……。なんか、気になっちゃって」

図星をつかれて笑って誤魔化す。

「時見センパイって謎っしょ。でもまァ悪い人ではないっスよ」
「それは分かるよ。あの花壇の説明とかすごく分かりやすかった」
「そっか。まァあたしも最初はよく分かんなかったンすけど、この前一緒に帰った時にいろいろ教えてくれたんスよねェ」
「へぇ、そうなんだ」

 意外だ。やっぱり誰とも仲良くしないわけじゃなくて、人との距離感を測っているのかな。そういえば神藤先輩達と別れるまで一言も喋らなかったような。

「時見さんって何が好きなんだろう?」
「甘いもの、好きっスよ」
「そう、なんだ」
「意外っしょ」

 唯菜ちゃんに同意を促されて私も頷く。時見さんが甘いものを食べている姿……正直、想像がつかない。ビターチョコとかかじってそうだし。

「うん」
「アタシ、センパイのことも聞きたいッス」

 私の前を歩いていた唯菜ちゃんが、くるっと私の方を向く。後ろ歩きしていても、全く危うくないのは歩きなれているからなのか、唯菜ちゃんのバランスがいいのか。
 ……にしても、自分のこととなると話すことなんてほとんどない。

「私? 私は普通だよ」
「あー、そういうのいいんで。時見センパイのどこが好きなんですか」
「え!? 好きとか、そういうのっていうより……。あ……っと、優しいところ、とか」
「他には」
「他は……可愛いところとか」
「それじゃあ答えになってないですってば」
「……」

 どうしよう。どう答えるのが正解なのだろうか。私が黙り込むと、ちょうど信号が青に変わり、唯菜ちゃんが歩き出す。私もそれに着いていき、しばらくすると郵便局のある交差点に行きついた。

「んじゃ、アタシここ左に行くんで」
「そうなんだ。私、まだ真っすぐ」
「また委員の時に」
「う、うん」

 そう言って唯菜ちゃんと別れた。……私、時見さんのこと好きなのかな。唯菜ちゃんの中ではそういうことになっていそうだ。
 ……どういう、好き、なんだろう。自分一人で考えても、やっぱり答えは出なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

秋の陽気(ようき)

転生新語
恋愛
 元夫(もとおっと)が先月、亡くなった。四十九日法要が終わって、私は妹の娘と再会する……  カクヨム、小説家になろうに投稿しています。  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/822139836259441399  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n1892ld/

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...