特別な私と貴女の特別な花

楠富 つかさ

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第6話

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 翌日、登校すると時見さんはもう教室にいた。ついつい時見さんを見かける度に目で追ってしまうし、彼女を見ると胸が高鳴った。けれど、彼女は腫物のような扱いで、誰も声をかけないし、誰にも声をかけない。

「くーうーなーちゃん!」
「あ、葵ちゃん」
「どしたの、ぼけ~として」
「ううん、なんでもないよ」

 葵ちゃんは気さくで学校のことを質問すると答えてくれるし、体育でペアを作ってと言われた時も私と組んでくれた。……時見さんのこと、質問してみたいけど、教室にいると流石に話しづらい。でも、葵ちゃんも家は南側だから帰り道では一緒にならない。

「そうだ空凪ちゃんは、こっちきてから遊びにでかけた?」
「え? あぁ……そういえば行ってないかも」
「じゃあさ、今週の土曜はどうかな? クラスの子も誘ってさ、どっか遊びに行こうよ」

 誘ってくれたことがすごく嬉しかった。前の学校だと、なかなか友達と出かけることが出来なかったから。……それに、学校の外なら時見さんのこと質問しやすかもしれない。だったら行くしかない!

「行く行く! 楽しみにしてるね」
「おっし、決まりね。みんなにも言っとくわ。そうだ、アドレス交換しようよ」

 そう言って葵ちゃんがスマホを取り出すのだけれど……。

「ごめん、持ってなくて」

 そろそろ欲しいんだけど、なかなかお母さんに言い出せなくて……私はまだスマホを持っていない。お母さんとの連絡はほとんどが家の電話への留守電だ。……もう三日くらい、お母さんの声を聴いてないきがする。作った料理は食べてくれているし、お手紙もくれるんだけど、話したいなぁ。
 ちょっと暗い顔をした私を見て、事情を感じ取ってくれたのか、葵ちゃんは優しい笑顔で答えてくれた。

「そっかぁ。じゃあ、マメに声かけるね」
「ありがとう! あ、あのね」

 声のボリュームを少し抑えて葵ちゃんに耳打ちする。時見さんは誘えないのか、と。

「それは難しいかなあ」
「わ、私から誘ってみるとか」
「うーん、出来る?」

 言われてしまうと確かに難しいかもしれない。誘いたい気持ちはあるけど、どうして声をかけたらいいか分からない。

「あ、そうそうあのね――――」

 その後、ホームルームが始まって先生が来るまでの間、葵ちゃんと色々と話していた。時見さんに話しかけることばかり考えていた私だけど、今は葵ちゃんとの会話に夢中になっていた。
 葵ちゃんはいろんな話題を持っていて、この先生にはこんなクセがあるとか、三年に有名な先生がいるとか、うちのクラスのだれそれさんが隣のクラスのあの人と付き合っているとか。話しているうちに他のクラスメイトも集まってきて、葵ちゃんがどんな経緯で委員長になったのかとかそんな話もしてくれた。……よそ者の私にこんな優しいのに、どうして時見さんには冷たいんだろう。……聞きたくても、どうしても聞けなかった。
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