ゆりいろリレーション

楠富 つかさ

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#3

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「ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした……」
「気にすんなって。当然のことをしたまでだ。まぁ、なんだ……恋人になったわけだし、もっと頼ってくれていいぞ?」

 里中を追い払ったその後、部活が休みの曜日ということもあり二人そろって校門までやってきた。一緒に帰ろうとは言ったが早乙女ほどのお嬢様だから門の前に見るからに高そうな車が迎えに来ているのだろうと思ったが……。車は見当たらない。

「家までご一緒してもらえませんか?」
「あ? まぁ、いいけどよ……」

 恋人のフリの一環だろうか。

「はい、ありがとうございます。七瀬さん」
「え? ああ、うん……って、名前呼び?」
「あ、嫌……でした?」
「いや、全然……嬉しいよ」
「良かったです。では、行きましょう七瀬さん」

 早乙女が当然かのようにあたしの腕を抱き寄せた。柔らかな感触とふわりと香る甘い匂いに、心臓の鼓動が早くなる。腕に伝わる体温に顔が熱くなる。……あたしはこういう経験がないのだ。

「あの、さ。なんつーか、その……恋人同士ならこんくらい普通……なんだよな? よく分かんねぇからさ」
「私もあまり詳しくはないですが、多分……そのはずですよ」
「そっか。じゃあ……仕方ないか。あたし達一応……付き合ってるわけだしな」

 あたし達は、傍から見れば仲睦まじく歩いているように見えるはずだ。早乙女にはあたしっつうパートナーがいるわけだから、言い寄ってくんなよってアピールするのだ。……果たして帰り道でどれだけの効果があるのかはわからんが。

「……あの、さ。早乙女」
「はい? どうしました?」
「あ、いや……。悪い、なんでもない」
「変な七瀬さんですね。あ、そうだ。連絡先を交換しませんか?」
「あ、おう。そうだな。交換しとくか」
「はい、よろしくお願いします」

 スマホを取り出して、お互いの連絡先を交換する。これでいつでも連絡できるな。……学校にどれだけ彼女の連絡先を知っている人がいることやら。
 学校から歩いて二十分ほどの距離に早乙女の家はあった。周りに比べればデカい一軒家ではあるが、いかつい門とか噴水があるような広い庭を想像していたから、思ったより現実の範囲内なのに逆に驚いてしまった。

「どうぞ、上がっていってください」
「あ、ああ。お邪魔しまーす」

 靴を脱いで揃えてから、早乙女に案内されるままリビングへと向かう。玄関だけでもあたしの部屋くらいありそうだ。

「パパ、ママ。ただいま戻りました」
「おかえりなさい卯月。あら? そちらの方は?」
「初めまして、三崎七瀬といいます。えっと、早乙女……卯月さんとはクラスメイトで……」
「あら、そうなの。私は卯月の母で、文乃よ」
「父の賢一です。娘がいつも世話になっています」
「もう、そういうのいいから。七瀬さん、私の部屋に案内しますね」
「は、はい。失礼します」

 早乙女の両親に頭を下げつつ、階段を上っていく。あたしは一体何をしているんだろう。自分の行動がよくわからない。

「ここが、私の部屋です。お茶とお菓子を持ってくるので、ゆっくりしていてくださいね」「あ、おい……」

 あたしの返事を待たず、早乙女は扉の向こうへ消えていった。一人残されたあたしはとりあえず椅子に座ってみた。……落ち着かない。
 このファンシー空間でゆっくりしろって……瞑目でもしてるか。精神統一っと……。
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