ゆりいろリレーション

楠富 つかさ

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#2

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 翌日、あたしは結局早乙女とろくに話せず一日を過ごしていた。昨日の夜、飯を食べ終えた後も考えはまとまらなかった。早乙女の頼みを聞き入れても聞き入れなくても、あたしに何か影響があるわけでもない。中体連まであと3ヶ月と少し、恋人なんか出来たら集中できなくなるかもしれない。とはいえフリだからそこまで拘束されるかと言われると……といった状態だ。せめて部活の誰かと相談したい。そんなことを考えている時だった。

「早乙女さん、今日こそ、オレと付き合ってくれ!」

 ……出た。里中総次郎、早乙女に付きまとう男子。見てくれは悪くないのだがどうにもしつこい。

「あ、あの……」

 一瞬、早乙女がこっちを向いた気がした。その目を見て、あたしは考えるのをやめた。うだうだ考えるのはあたしらしくないようだ。

「里中!」
「ん、んだよ三崎」

 極力感情を込めずに声をだす。その方がむしろ怖ろしい。

「いい加減しつこいんだよ! 早乙女卯月はあたしのもんだ」

 正直言って、自分でも何言ってるかよく分からん。でも、いい選択だったらしく里中はあからさまに驚いている。

「そんなバカな。だって、お前……早乙女さんと同じクラスになったの初めてだろ? おかしいだろ……接点なんてない、はず。そ、そうだ。早乙女さんが三崎に弱みを握られてるんだろう? そうなだろう?」
「そんなわけ、ないじゃないですか。私、三崎さんをお慕いしているのですから」
「あーあ、言っちまって。秘密にしてたのによ」

 あたしにしなだれかかる早乙女にそれっぽい言葉をかけてやる。女はみんな女優なんて、よく言ったもんだ。これで里中も流石に心が折れただろう。

「お、オレは信じないぞ! お前らが本当に付き合ってるっていうなら、キスくらいしてみろや!」
「構いませんか? こんな人前で……」

 少し涙ぐんだ目元と紅潮した頬、これが演技だとしたら末恐ろしいな。こんなの見たら、本気になっちまう……。

「でこくらいならいいだろ」

 身長差とか恥じらいとか、恋人のフリっていう部分をいろいろ考えて……あたしは早乙女のおでこへ唇をあてた。……髪が良い匂いすぎてくらくらした。

「これでも信じないのか?」
「う、るっさい。キスくらい挨拶みたいなもんだろ!?」
「お前が言うか!」

 思わず素で言い返したが、流石に里中もこれ以上言い返せないようだ。

「ちっくしょう! どうしてオレが好きになる女は枯れ専だったりショタコンだったり同性愛者だったりするんだよぉおお!!」

 そう叫びながら教室を駆け出す里中。あいつもあいつなりに苦労はしているらしいが、まぁあたしらには関係ない。

「帰ろうか、早乙女」
「は、はい!」

 雨上がりの空みたいに、晴れ晴れした早乙女の笑顔にあたしも笑みがこぼれた。
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