君と咲かせる大輪の百合

楠富 つかさ

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Driving Night 美海×恵玲奈

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「恵玲奈、車を買うわよ」
「え? な、なにその同人誌の導入みたいなテンションは?」

 私、西恵玲奈は大学二年生。恋人の須川美海は大学一年生。季節は2月で後期の期末試験も終わり春休みに向けて動き出す頃、同棲するマンションで美海が唐突に告げてきたのは車の購入について。
 お互いに免許は取得し、レンタカーでの遠出も経験しているが急にマイカーを持つなんてどういうことだろう。ちなみに免許は私が他の女に色目を使ったり、あるいは他の女に襲われないか監視するためと、美海と二人で合宿コースで取得した。……浮気の前科が多々あることについては本当に申し訳ない限りなのだが、一応言い訳しておくと色目を使った覚えはないんです。襲われることが複数回あっただけで……。
 それはさておき。

「ど、どんな車にするの?」
「車種はコレね」

 そう言って美海が見せてきたのは日本で一番売れている軽自動車のカタログだった。箱型で日常使いからアウトドアまでなんでもこなす万能なやつ。どうやら新車で買うらしい。

「あくまで名義はうちの親だけど、維持費は私たちで負担することになるわ」
「美海がそんなに車を欲しがってるなんて気付かなかったなぁ。でも別に中古でもよかったんじゃない?」

 レンタカーでの外出でも運転している時間は私の方が長かった。ひょっとして、美海は自分でもっと運転したかったとか……? でもいきなり新車で、しかも軽自動車とはいえ割高なこのワゴン車にしなくたってと思っていると、美海の表情がスッと変わった。それはベッドの上で私を見下す時と似ていて、思わず背筋が伸びる。

「恵玲奈、私は恵玲奈のために車が欲しいの。恵玲奈、カーセックスをするわよ」
「な、なななんで!?」

 驚く私をよそに美海は後席がフルフラットになることや、ちょっとした物入があること、それにスマホを充電するためのUSBポートがあることや、窓にひっかける目隠しがあることなど、つらつらと説明していく。どうやら年末年始に帰省したタイミングで話をとうに詰めていたらしい。

「九月にポリネシアンセックスをしたわよね?」
「あ、うん。あれは忘れられない体験だった。ちょっと記憶飛んでるけど」
「そう、最終日に恵玲奈は気絶するほど感じてた。声も大きかったわ……」

 私たちが借りているマンションは角部屋の305号室。4は欠番で隣の303号室とは水回り部分が面しているので、声はあまり届かない……はずだった。

「さすがに怒られたよね。隣と……真下から。いつから入居してたんだろうね……」
「その反省もあって十一月の連休でグランピングに行ったでしょう?」
「……すごく、開放的だった」

 星空を見ながら美海に抱かれたあの経験は忘れられない。翌日に風邪を引いたところまで含めて……。

「質問に答えてなかったわね。これから先、この部屋でセックスをするのはちょっと難しい。ホテルに行くにも足は必要。それに恵玲奈はお外の方が興奮する変態さん。だったらカーセックスも検討の余地があるし、もしするなら車は新車であるべき、そうでしょう?」
「待って私が青姦で興奮する前提が入っててビビるんだけど。あれはシチュエーションが良かっただけで、どこでも興奮するわけじゃな――」
「屋外である時点で特別なシチュエーションではなくて?」

 ……それはそう。





――後日――




「もご……んぁぐ……ぅむん」

 おもちゃを仕込まれ拘束されたまま車に転がされ、どこかわからない場所に連れていかれる。車の振動とおもちゃの振動が時折クリティカルにシンクロし、エンジンを切ってからも、このまま放置されてしまうんじゃないかという恐怖で下着をびしょびしょにしてしまっていた。けれど、近くに美海を感じる。美海が私を見ている。
 目隠しで見えないのに、美海の動きが全部わかってしまう。身体が理解しているんだ、美海が次に私のどこをいじめてくれるのか。どんな言葉をくれるのか。だから脳が先回りして、あっさりと絶頂してしまう。

「ほら、ぁっ! うふふ、目隠しに猿轡に、手足を縄で縛られて、ぁ、ほとんど誘拐じゃない、ぅ、ほら、イッっていいわよ」
「んぅぅぅ!!」

 いい、美海になら、乱暴にされても、監禁されても、誘拐されたっていい。だってもう、私は美海のものだから。

「愛しい私の恵玲奈、そろそろ声を聴かせて」

 猿轡が外され、大きく息を吸い込む。吐き出す息が熱い。

「ご主人様……お顔を、見せて、くらひゃい……」
「いいわよ、ほら」

 キスをしながら目隠しも外され、大好きな美海の顔がすぐ目の前にある。

「ありがと、美海。愛してる」
「私もよ、私だけの恵玲奈」

 私を強く抱きしめる美海の後ろ、どことも知れない山奥に、早咲きの桜が見えた。まだ満開にはほど遠いけれど、春は確かにすぐそこまで来ているのだった。
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