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#05
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翌日、佳子が教室に入ると、佑奈も既に登校していた。佳子に気付いた佑奈は佳子の席に駆け寄り、
「昨日はありがとう。お土産のケーキ、お母さんもすごく喜んでた。あと、これ返すね」
そう言って手渡したのは防犯ブザーだった。LEDライトも搭載していて、夜道を帰る佑奈に佳子が昨日渡したものだった。
「あ、いいよ。あげる。まだ何個かあるの」
佳子を置いて海外に赴任してしまった両親だが、決して佳子への愛情がないわけではなく、伝え方が少し不器用なだけだった。中学生には過分なお小遣いも、家に導入されたセキュリティも、そして佳子に持たせている防犯グッズもその一環だった。
「それより、また家に来ない? 今度の週末もまた三連休でしょ。いつでもいいの。……来てほしいな」
おずおずと誘う佳子の様子に、佑奈は休みの予定を思い出す。佳子の誘いは嬉しいが母と過ごす時間も大事で、それに週末は洗濯や作り置きの料理をする時間も必要になる。
「えっと、日曜日の午後ならいいかも。お夕飯には帰らなくっちゃだけど」
「そう……じゃあ、お昼は?」
「食べてから行くよ。持っていくのは課題の問題集でいいかな?」
何気ない佑奈の質問に、佳子は視線を泳がせた。首をかしげる佑奈に、佳子はか細い声で告げた。
「勉強じゃなくて、ただ……一緒にいてほしいの」
佑奈は目を瞬かせ、それからそっと微笑んだ。
「分かった。それじゃ、日曜日の一時に行くから」
そう言って佑奈は自分の席に戻っていった。
その日の給食中、佑奈は同じグループの百瀬美咲に話題を振られた。
「佑奈ちゃんって最近、大波多さんと仲いいよね」
「うん、そうだね」
佑奈は特に隠すつもりもなく、素直に認める。佳子のことを話すとき、不思議と胸が温かくなるのを感じていた。
「どんな話してるの?」
「んー……宿題のこととか、本の話とか? あとは、ちょっとした雑談かな」
特別なことは何もない。けれど、佳子と交わす何気ない会話はどれも楽しくて、心が満たされる時間だった。すると美咲だけでなく、同じグループのもう二人も話にのっかってきた。
「ふーん、なんか意外。大波多さんって、もっと話しにくい人かと思ってた」
「そうそう。なんかこう、ちょっと怖いっていうか……話しかけづらいっていうか」
佳子はもともと無口で、必要以上に他人と関わろうとしない性格だった。気にならないわけではないが、深入りもしたくない。そんな絶妙な距離感が、佳子に対するクラスメイトの印象を形作っていた。
「佳子ちゃん、ちょっと不器用なところがあるだけだよ。話してみると、優しいし面白いし……」
「へぇー、そうなんだ」
美咲は興味深そうにスプーンを口に運ぶ。
「それに、昨日は佳子ちゃんの家に遊びに行ってたんだ」
何気なくそう言うと、周囲が一瞬静かになった。
「え、大波多さんちってものすごく大きいんでしょう?」
「う、うん。広かった、よ?」
佑奈がそう話すと、他の三人たちは一体どんなものがあるんだろうと、ああでもないこうでもないと好き勝手に盛り上がり始めた。熊の剥製とか、西洋の鎧とか、様々言う三人に佑奈はそんなのはなかったよと、真面目に訂正を繰り返す。
そんなグループの様子を佳子は遠目に見て、どこか寂し気な表情を浮かべていた。
「昨日はありがとう。お土産のケーキ、お母さんもすごく喜んでた。あと、これ返すね」
そう言って手渡したのは防犯ブザーだった。LEDライトも搭載していて、夜道を帰る佑奈に佳子が昨日渡したものだった。
「あ、いいよ。あげる。まだ何個かあるの」
佳子を置いて海外に赴任してしまった両親だが、決して佳子への愛情がないわけではなく、伝え方が少し不器用なだけだった。中学生には過分なお小遣いも、家に導入されたセキュリティも、そして佳子に持たせている防犯グッズもその一環だった。
「それより、また家に来ない? 今度の週末もまた三連休でしょ。いつでもいいの。……来てほしいな」
おずおずと誘う佳子の様子に、佑奈は休みの予定を思い出す。佳子の誘いは嬉しいが母と過ごす時間も大事で、それに週末は洗濯や作り置きの料理をする時間も必要になる。
「えっと、日曜日の午後ならいいかも。お夕飯には帰らなくっちゃだけど」
「そう……じゃあ、お昼は?」
「食べてから行くよ。持っていくのは課題の問題集でいいかな?」
何気ない佑奈の質問に、佳子は視線を泳がせた。首をかしげる佑奈に、佳子はか細い声で告げた。
「勉強じゃなくて、ただ……一緒にいてほしいの」
佑奈は目を瞬かせ、それからそっと微笑んだ。
「分かった。それじゃ、日曜日の一時に行くから」
そう言って佑奈は自分の席に戻っていった。
その日の給食中、佑奈は同じグループの百瀬美咲に話題を振られた。
「佑奈ちゃんって最近、大波多さんと仲いいよね」
「うん、そうだね」
佑奈は特に隠すつもりもなく、素直に認める。佳子のことを話すとき、不思議と胸が温かくなるのを感じていた。
「どんな話してるの?」
「んー……宿題のこととか、本の話とか? あとは、ちょっとした雑談かな」
特別なことは何もない。けれど、佳子と交わす何気ない会話はどれも楽しくて、心が満たされる時間だった。すると美咲だけでなく、同じグループのもう二人も話にのっかってきた。
「ふーん、なんか意外。大波多さんって、もっと話しにくい人かと思ってた」
「そうそう。なんかこう、ちょっと怖いっていうか……話しかけづらいっていうか」
佳子はもともと無口で、必要以上に他人と関わろうとしない性格だった。気にならないわけではないが、深入りもしたくない。そんな絶妙な距離感が、佳子に対するクラスメイトの印象を形作っていた。
「佳子ちゃん、ちょっと不器用なところがあるだけだよ。話してみると、優しいし面白いし……」
「へぇー、そうなんだ」
美咲は興味深そうにスプーンを口に運ぶ。
「それに、昨日は佳子ちゃんの家に遊びに行ってたんだ」
何気なくそう言うと、周囲が一瞬静かになった。
「え、大波多さんちってものすごく大きいんでしょう?」
「う、うん。広かった、よ?」
佑奈がそう話すと、他の三人たちは一体どんなものがあるんだろうと、ああでもないこうでもないと好き勝手に盛り上がり始めた。熊の剥製とか、西洋の鎧とか、様々言う三人に佑奈はそんなのはなかったよと、真面目に訂正を繰り返す。
そんなグループの様子を佳子は遠目に見て、どこか寂し気な表情を浮かべていた。
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