はぐれ剣士♀ 聖盾派

楠富 つかさ

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7話

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 翌朝、すっきりした気持ちで目を覚ますと、メイが桶に水を出してくれていた。

『夕べもこうすればよかったね』

 言われてみればそうだけど、宿の受付に不審に思われないためにも、一回くらいは井戸から汲んだ方が良かっただろう。
 一先ず桶の水で顔を洗い、防具を身に着ける。革に何か所か金属を組み合わせた簡素な防具だけど、軽くて扱いやすいことからけっこう長い間愛用している。メイがいればこの先防御面での心配もほぼないだろうけど、何かに備えて新調しておいた方がいいかもしれない。

『どうせならもう少し可愛い防具がいいよね』

 ……全部筒抜けなんだった。可愛い防具かぁ……確かに今の防具は色味も地味で金属部分も地味だ。見た目のよい装備というのはえてして高価格だ。流石に今の所持金では手が届かない。

『リスタ、買うとしたらどんな防具が欲しい?』
「そうだなぁ……」

 革の防具が防御力がないというわけではないけれど、魔物の攻撃に対しては心もとない。金属部分が多い装備で全身をしっかり守った方が生存率は上がるだろう。となると……。

「全身を覆うフルプレートメイルとか?」

 いや、重すぎるし動きづらいか……。それに私みたいなひよっ子がそんな重装備を身に着けて動けるとは思えないし。

『うーん、そこまでがっつり防御する必要ないよ。私を頼って』

 それもそうだ。メイは守りの要だし、剣と魔法を併用することを考えたら身軽い動ける軽装の方がいいだろう。とはいえ今の防具にそこまで不満や不安があるわけでもない。ダンジョンに挑めば不思議な加護を与えられた防具に出会うこともあるかもしれない。

『目指すべきはやっぱりダンジョンかな』

 ダンジョン、それは神々が退屈しのぎに作ったともいわれる不思議な空間。中には宝物や強力な装備が眠っているという。そして、神々はそのダンジョンに不思議な加護を授けたという。その一つがダンジョン外で倒した魔物は解体しなければ素材的価値がないのに対し、ダンジョンで討伐した魔物は死骸が魔力の霧になって消える代わりに、その魔物から得られる素材が手に入るのだ。俗にドロップ品なんて言われるが、解体の手間がかからない分ソロの冒険者にとってダンジョンは狩場として非常にありがたい。その代わり危険性が高く、ソロでは深い層までは降りられないことも多いのだが。

『よし、ダンジョンに行こう。私がばっちり護ってあげる』
「ありがとう、メイ。頼りにしてる」
『任せて』

 ここから近いダンジョンと言えばガイレスの街にあるダンジョンだ。街道を歩けば八日ほどかかるが、間の森をつっきれば五日で到着するはず。さぁ、ガイレスのダンジョン目指して出発だ!
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