はぐれ剣士♀ 聖盾派

楠富 つかさ

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6話

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「ありがとう、メイ。これからもよろしく」
『こちらこそだよ、リスタ』

 盾と友達になったこの日、私は冒険者としての第一歩を踏み出したのだった。
 ひとまずワイルドボアを次元収納に収納し終えたので、次の目的地を決めることにする。伝説の武具が眠るダンジョンか……それとも人里離れた秘境の地を目指すのか……うーん、悩むなあ……。

「ねえ、メイはどこか行きたい場所ある?」
『私? いや特にないけど……』
「じゃあ、行き当たりばったりでいいかな?」
『うん、いいんじゃないかな。とりあえずリスタの気が済むまで旅してみよ?』

 そうだね……。とりあえず明日は街道をまっすぐ行ってみよう。大きな街なら情報も集まるし、なにかおもしろそうな物を見付けられるかもしれない。

「よし、そうと決まれば今日の宿をめざそっか」

 行きがけは途中で野営したというのに、身体は軽く、疲れ知らずで……とうとう伝説の盾のウワサを聞いたあの町まで戻ってきてしまった。メイの姿を見たことある人はいないから、ちょっといい盾を持ったってだけの冒険者に、周囲は特に注目していなかった。でもそれでいい。あまり大きなウワサになってしまっては旅もしづらいし、コミュニケーションが苦手な私が注目されたらそれだけで死活問題だ。

「やっぱりここがいいかな」

 森へ向かう前にも泊まっていた宿の扉を開ける。

「あらリスタさん。また泊まってくれるんですね」

 宿の受付が女の子ということもあり、少し話しやすい。狭いけど個室だし、値段もそう高くない。幸い、あの盗賊が放り投げてきたお金もあって懐は温かい。

「えっと……素泊まりで一部屋」
「分かりました。こちら、水を使う際はこちらの桶をご使用くださいね」

 お風呂でもあればいいのだけれど、そんな宿はそう多くない。もらった桶に井戸水を汲んで部屋に持っていく。取り敢えず武装を解いて肌着だけになる。

『リスタ、少しだけ火の魔法を使ってお湯にしたら?』

 そうか、そういうことも出来るのか。指先にほんの少しだけ火を灯して水に入れる。何度か調整しているうちに温かくなってきたので、お湯に布を浸けてからぎゅっと絞る。温かい布で身体を拭くと気分がすーっと落ち着いていく。

「気持ちいい……」

 しばらくお風呂に入っていないから、頭と身体を洗いたいけれど、お風呂が設置されている宿なんてそうそうない。贅沢は言えない。

『そうだ、私が拭いてあげるよ』

 どうやらメイは自分だけじゃなく他のものも念動力で動かせるのか、タオルがふよふよと浮遊し始めた。

「わ、すごい!」

 普段は届かないような背中や――

「ちょ、そこは……」

 デリケートなゾーンも一しきり拭った後、私はベッドに入った。布はゴワゴワだし掛ける布も小さめだけど、野営よりはよっぽど身体が休まる。メイと出会った後、盗賊に襲われたり実戦練習としてワイルドボアを討伐したりと、けっこうハードだった。今夜はぐっすり眠れそうだ。

「明日からもよろしくね」
『もちろん。おやすみなさい』

 ……おやすみなさいって言ってもらうも、いつ振りなんだろう。よく眠れそうだ。
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