雷鳴の勇者と暗黒の魔王

楠富 つかさ

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第三幕

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 盛大な宴は一晩中続き、やがて夜が明けた。翌朝、俺は昨日の朝も行くつもりだった村外れのたまり場を訪れていた。そこで出迎えてくれたのは二人の幼馴染みだった。

「レオ、ノア、よぉ」
「おぉおぉ、勇者様の登場か」
「お兄ちゃん、言い方が悪いよ?」

 レオは俺より四つ年上で村の衛士をしている。ノアは俺と同い年で……その、片想いの相手でもある。まぁ、ノアは村一番の美少女だしいくつか年が離れていても想いを寄せるやつもいるくらいだ。だが同い年は俺しかいないし、家族の他で最も一緒に時間を過ごしているのも俺のはずだ。

「魔王討伐の度に出るんだろう? まずはスァバレの街だったな。俺たちもお供させてもらうぜ」
「え、ノアまで? レオならまだしも、ノアには危ないだろ」

 俺がこのたまり場に来たのは、いくつか常備している傷薬なんかを取りにってだけで、この二人がいるとも思わなかったし、連れて行くつもりはもっとなかった。

「まぁいいじゃねぇかよ。ありとあらゆる英雄誕で、勇者は最初、一人旅だった。だからよ、お前には俺がついていてやろうってな。ノアだって修道女見習いだ。傷の手当てだって出来る」
「うん。私もフリッツの力になりたい」

 ノアは創世神ルーチェ様の恩恵を受けた術士であるストレガ、特に治療の術に長けた修道女の見習いだ。旅をするに心強いし、俺のモチベーションもかなり上がる。だからといって、片想いの相手を危険な旅に連れ回すのは嫌だ。そんな苦悩をしていると、レオが俺に耳打ちをする。

「魔王討伐までどれだけかかるか知らないが、その間にノアを誰かに取られてもいいのか? あぁ?」

 そう言われてしまっては返す言葉もない。俺はしぶしぶ頷いて三人揃ってたまり場を離れた。スァバレの街までは歩いて三時間そこそこ、昼過ぎには着く。そこで必要な物を買い集めたら魔王について情報を集めるために学術都市ハーベストへ行こうと思っている。

「スァバレに行くのは二年ぶりか……。衛士になって自前の斧を買いに行った時か」

 肩に担いだ斧を感慨深そうに見るレオ、その力強い戦いっぷりは魔物相手に非常に頼りになる。俺も五年近く剣の稽古はしているが……まだまだ未熟なのは自分が一番知っている。

「フリッツ、右前方にスライム型の魔物が三体。先に叩くぞ」

 俺たちが住んでいる村からスァバレの街までは整備された道があるし、王都クルキードから派遣された騎士が街道の巡回もしているはず。強力な魔物と遭遇することは滅多にない。素早く剣を振るって、レオが斧を振り下ろして一体を倒している間に二体倒す。

「いい動きするじゃねぇか!」
「負けてられないからな!」

 その後も危うげななく魔物を倒しながら、少し時間はかかったがスァバレの街へとやってきた。

「必要なものを買うようにと言われたけどよ、結局何を買えばいいんだ?」
「お前の戦い方は動きが早えからな、ヘタに鎧を着込むよりかは心臓を守るプレートと籠手があればいいだろ?」

 なるほど、分かりやすい。楯を持つより躱した方が早いしな。防具屋に行くとしよう。

「防具屋はどこだ?」
「ここが八番街だからな、七番街に行ってみるか。俺が前に鎧を買った店が潰れてなければあるぜ」

 レオに連れられ件の防具屋へ向かった俺たち。この街は中央部に役所なんかが集まっている一番街があり、そこから居住区が二番街から五番街、そのさらに外周に商店が集まっている。

「まだ潰れちゃいなかったか。ここだ」

 やってきたのは古びた店構えの防具屋。鎧がいくつか並べられている。祖父さんから渡された金は俺に必要な防具を買ってなお余りある量だった。この先の路銀も必要ではあるが、重いのも事実だ。心臓、腕、腰回りに皮と軽い金属の鎧を着て、剣帯に雷鳴の剣を佩いた俺は、二人に余った金の半分は村に返そうと言った。

「ま、おめぇらしいわ。馬車でも使うか?」
「無駄遣いすんなって……あ、ノアは平気か? また歩くけど」
「大丈夫だよ。行こ? それに皆、勝手に村を出て寂しいって思ってるかも」

 確かに、宴こそしたが見送りなんてものは受けていない。形式張ったものを好む祖父さんなら、盛大な見送りだってしたがっただろう。そんなことを思いつつ、今朝歩いた道を引き返し、村へと戻った。
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