雷鳴の勇者と暗黒の魔王

楠富 つかさ

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第四幕

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 そんな俺たちが見たのは……崩れ落ちた家々の姿だった。

「どうして……」

 膝から崩れ落ちるノア。俺だってこの光景を前に立っているのが精一杯だった。魔物に襲われた人間は、死体が残る者と残らない者がいる。その違いが何によるものかは知られていないが……事切れた村人が何人も倒れている。たとい死体がないからといって、無事とは限らない。昼飯時に襲われた家は火事で何件か燃えていた。半日も村から離れていないというのに……一体、どうしてこんなことに。

「フリッツ、しゃんとしろ。まだ魔物がいる」

 村の奥に大型のゴーレム型の魔物が見える。

「フリッツ、ノアを頼む。あいつは俺がやる」
「いや、俺がやる」

 村の奥には村長が……祖父さんが住んでいる。祖父さんなら魔物の襲撃があったって、すぐ反応して避難を促せるはず。きっとまだ、誰か生きているはず。

「どけ!!」

 途中、何度も襲ってくる魔物を蹴散らして走り抜ける。家の焼ける臭い、人の流した血の臭い、鼻をつく様々な臭いと風に舞う火の粉の熱を振り払って進む。

「せりゃぁあ!!」

 人の二倍ほどの大きさのゴーレムに斬りかかる。膝関節を狙った一撃はかすかに雷撃をまとっているように感じられた。その一撃で崩れ落ちたゴーレムに再び剣を突き立て、魔物は散り散りになった。

「誰か、誰かいないのか!? 俺だ、フリッツだ!」

 どこからも返事は聞こえないが、足音が近付いてきた。俺の……正面から。レオなら後ろから来るはずだし、村の人なら返事をするはず。声が出ない程疲弊しているようには思えない足音の重み。

「お前は……誰だ」

 雷鳴の剣を鞘に収めず、真っ直ぐに突きつける。姿を見せた相手は人間に見えた。だが、皮とは異なる濃い黒の光沢……それはまさしく魔物が放つオーラにも似た光沢だ。

「我が名はダース。魔王軍四天王が一人。魔王陛下より勇者抹殺の任を受けている。その命、もらいうける! 出でよ、我が僕たちよ!」

 抜剣したダースが禍々しい剣を掲げると、今まで見たことのない骸骨型の魔物が十二体、現れた。武器を持ってはいないが、手がなく鋭い骨が殺意を放っている。手前にいた三体が一気に飛びかかってくる。

「てりゃあ! くらえぇ!!」

 一体を攻撃してもう一体にたたらを踏ませる。その間にもう一体の攻撃を籠手で防いで反撃する。二度斬りつけて蹴りで間合いを切る。撃破できないまま二陣が攻めてくる。手下を使って俺を攻撃するだけで、ダースと名乗った男は傍観したまま。その態度が気にくわない。

「せい、はぁ!!」

 ダースが立っている方へ骸骨を薙ぎながら攻撃を続ける。骸骨は見た目以上にしぶとく、じりじりと疲れが動きを鈍らせる。一瞬の油断から背後から攻撃をくらいそうになった、その時――――。

「フリッツ!!」

 これまでと違った鈍い音が響いた。

「レオ!」

 リッツの大斧が骸骨の一体を吹っ飛ばし、その骸骨はもう動かなくなった。

「背中は任せろ」
「ノアは!?」
「建物の陰で隠れている、すぐに終わらせれば大丈夫だ!」

 レオと二人で骸骨どもに斬りかかり、敵を次々と消し去っていく。

「雑魚に構っている場合ではないぞ」
「お前、何が目的なんだ」
「知れたこと。勇者の命、ただそれだけだ」
「なら、お前がここで死ね」

 レオが大振りな攻撃を仕掛けるが当たらない。逆に隙を作ってしまうような、そんな戦い方をしてしまうのはやはり動揺があるからだ。俺も加勢しようとするが、ダースの攻撃は素早く、重い。

「ぐぅ……こいつ……強いな……」
「どうした、勇者というのはこの程度か?」
「調子に乗るんじゃねぇよ」
「ふむ、では少し本気を出すとしようか」

 ダースの剣が妖しい光を放つ。

「喰らえ、邪影斬!!」
「うぉおおお!!」

 ダースの振るう剣には禍々しいオーラがまとわりついており、背筋が凍る思いだったが、迷いを振り払うように俺も剣を合わせる。その剣に雷鳴が宿って、二振りの剣の間に衝撃波が生まれる。

「うぉ……な、なんなんだ……!」

 俺たちは強烈な力によって弾き飛ばされてしまった。

「フリッツ!!」
「大丈夫だ……それよりあいつは……」

 レオに支えながら立ち上がると、ダースの姿は消えていた。倒せたわけじゃないだろうが……あいつは一体……なんだったんだ。
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