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第五幕
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「……フリッツ、立てるか? 早くノアのところへ戻ろうぜ」
「あ、ああ。そうだな……」
レオに支えられたまま、俺は村の中央あたりまで戻ってきた。
村は静まり返っていた。魔物の姿はなく、変わり果てた村の姿だけが広がっていた。比較的残っていた建物……確か、ここは野菜農家のダンおじさんの家だ。
「ノアにはここに隠れるよう言っていたが……おーい、無事か?」
「お兄ちゃん、フリッツ……私、修道女見習いなのに、誰も、助けられなかった……」
涙を流すノアの肩を抱き、頭を撫でてやる。
村のみんなが家族だった。そう言えるくらい平和な村だったし、誰かが殺されるなんて考えたこともなかった……。なのに、死んだ。多くの村人が死んだ。
俺だってまだショックを隠しきれていない。でも、俺がしっかりしないと……。俺はまだ、何も成し遂げちゃいない。こんなところで終わってたまるか。
「取り敢えず、村長の家まで行こう」
「うん、おじい様は無事かなぁ」
村長宅へ向かう途中、見覚えのある顔を見つけた。村の若い男で、レオと一緒に村の衛士をしていたはずだ。
「おい! 大丈夫か!? ラックス!!」
レオが駆け寄って抱き起こすが、反応はない。俺も駆け寄って胸に耳を当てると心臓の鼓動が聞こえる。
「まだ息はある。村長の家に運ぼう」
「わかった!」
俺とレオが肩に担いで歩き出す。村長の家は魔物の襲撃で燃えていたが、何とか原型を留めていた。中に入ると、祖父さんは椅子に座って俯いていた。
「フリッツ……か……すまない。わしがついていながら……村の皆を守れなかった」
「謝るのは後だ。誰が生きてる、親父はどうした!」
「ポルクは死んだよ……。地下の倉に生存者とけが人がいる……人数は、多くは無いが、な」
「親父、そう、か……。ノア、けが人の治療を」
「……わかった」
ノアの先生だった修道女のお姉さんも死んでしまったらしい。それに、レオとノアの両親も……。
「さっき、ダースとかいう奴と戦った。魔王軍の四天王の一人だと。そいつが今回の襲撃をやったに違いない」
「魔王軍か……雷鳴の剣が引き抜かれたことに気付いたのだろうか」
「そ、それは……俺のせい、ってこと、か?」
「違う!!」
祖父さんが大声で否定した。……でも、それでも……。
「とにかく今は身体を休めるんだ。夜が明けたら弔ってやらねばな……この村はもう終わりじゃ」
天を仰ぐ祖父さんの目は虚ろで、村長として村のために全力を尽くしていた姿とは似ても似つかなった。それが、無性に俺をいらだたせる。
「祖父さん、諦めんのかよ! 俺が勇者なんだろ! 魔王軍なんかぶっ飛ばして、世界を救うんだ! この村だっていつか再興できる!」
「フリッツ、落ち着けって。気持ちはわかるけどよ……」
「レオは悔しくないのかよ!」
「そりゃ、悔しくねぇわけねえだろ!」
レオが怒鳴り声を上げる。今まで見たことのない表情だった。
その表情に、俺も冷静さが取り戻せた。そうだ。俺だけが熱くなっているんじゃ駄目だ。
レオは一度深呼吸して落ち着いた様子だ。
「悪かった。少し……一人にしてくれ」
そう言って俺は村長の家を出て、自宅のある場所に歩き出した。
「あ、ああ。そうだな……」
レオに支えられたまま、俺は村の中央あたりまで戻ってきた。
村は静まり返っていた。魔物の姿はなく、変わり果てた村の姿だけが広がっていた。比較的残っていた建物……確か、ここは野菜農家のダンおじさんの家だ。
「ノアにはここに隠れるよう言っていたが……おーい、無事か?」
「お兄ちゃん、フリッツ……私、修道女見習いなのに、誰も、助けられなかった……」
涙を流すノアの肩を抱き、頭を撫でてやる。
村のみんなが家族だった。そう言えるくらい平和な村だったし、誰かが殺されるなんて考えたこともなかった……。なのに、死んだ。多くの村人が死んだ。
俺だってまだショックを隠しきれていない。でも、俺がしっかりしないと……。俺はまだ、何も成し遂げちゃいない。こんなところで終わってたまるか。
「取り敢えず、村長の家まで行こう」
「うん、おじい様は無事かなぁ」
村長宅へ向かう途中、見覚えのある顔を見つけた。村の若い男で、レオと一緒に村の衛士をしていたはずだ。
「おい! 大丈夫か!? ラックス!!」
レオが駆け寄って抱き起こすが、反応はない。俺も駆け寄って胸に耳を当てると心臓の鼓動が聞こえる。
「まだ息はある。村長の家に運ぼう」
「わかった!」
俺とレオが肩に担いで歩き出す。村長の家は魔物の襲撃で燃えていたが、何とか原型を留めていた。中に入ると、祖父さんは椅子に座って俯いていた。
「フリッツ……か……すまない。わしがついていながら……村の皆を守れなかった」
「謝るのは後だ。誰が生きてる、親父はどうした!」
「ポルクは死んだよ……。地下の倉に生存者とけが人がいる……人数は、多くは無いが、な」
「親父、そう、か……。ノア、けが人の治療を」
「……わかった」
ノアの先生だった修道女のお姉さんも死んでしまったらしい。それに、レオとノアの両親も……。
「さっき、ダースとかいう奴と戦った。魔王軍の四天王の一人だと。そいつが今回の襲撃をやったに違いない」
「魔王軍か……雷鳴の剣が引き抜かれたことに気付いたのだろうか」
「そ、それは……俺のせい、ってこと、か?」
「違う!!」
祖父さんが大声で否定した。……でも、それでも……。
「とにかく今は身体を休めるんだ。夜が明けたら弔ってやらねばな……この村はもう終わりじゃ」
天を仰ぐ祖父さんの目は虚ろで、村長として村のために全力を尽くしていた姿とは似ても似つかなった。それが、無性に俺をいらだたせる。
「祖父さん、諦めんのかよ! 俺が勇者なんだろ! 魔王軍なんかぶっ飛ばして、世界を救うんだ! この村だっていつか再興できる!」
「フリッツ、落ち着けって。気持ちはわかるけどよ……」
「レオは悔しくないのかよ!」
「そりゃ、悔しくねぇわけねえだろ!」
レオが怒鳴り声を上げる。今まで見たことのない表情だった。
その表情に、俺も冷静さが取り戻せた。そうだ。俺だけが熱くなっているんじゃ駄目だ。
レオは一度深呼吸して落ち着いた様子だ。
「悪かった。少し……一人にしてくれ」
そう言って俺は村長の家を出て、自宅のある場所に歩き出した。
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