7 / 16
あきもいぬめり
しおりを挟む
先輩と二人で商店街を歩く。なかなかない経験だ。こんな時だからこそ何か、聞いておきたいことは……。そう、将来のこと。
「ロゼ先輩って、将来の夢とかあるんですか?」
先輩はもう高校二年生で、もうじき三年生だ。きっと、大学とか将来のことについて色々考えているはず。
「うーん、Fuzzyなものでよければ。日本の文化をもっともおっと世界中の人に知って欲しいわ! きっとそういうことは、私みたいなハーフの人の方が伝えやすいと思うのよ。だって日本の人たちって自分の文化を外部に発信するの、苦手でしょう?」
最近のネットワーク社会ではそれも多少は緩和されている気はするけれど、日本人は自分の意見を外部に発信しないなんてことは確かに言われている。私自身が自分の意見をはっきり言うのを苦手としているからかもしれないけれど。
「紅凪ちゃんは、何か将来の夢とか目標はあるの?」
先輩に問われて、答えがパッと思い付かなかった。将来の夢って、なんだか難しい。小さい頃のものを思い出そうとしても、なんだか靄が掛かったように思い出せなくなっているのだ。幼稚園や小学校の低学年で、きっと発表とかもしているのだろうに。
けれど、口にするのは少し恥ずかしいけれど確かに言えることが一つだけある。ロゼ先輩のことだから、きっと笑いはしないだろう。
「……素敵な恋を、してみたいです」
「それはいいことね。私もまだ恋愛はよく分からないの。だってみんな素敵で、特別で、そんな人たちが家族と同じくらい、それか家族以上に特別な存在になるだなんて、ちょっと想像がつかないじゃない?」
「……みんな特別? 私も?」
「えぇそうよ。ほら、Hugしよう?」
往来の真ん中だというのもお構いなしで、ロゼ先輩にぎゅっと抱きしめられる。私より小柄なのに、無性に包み込まれているような感覚になった。きっとこの感覚を愛情と呼ぶのかも知れない。そんな風に感じた。
「ほら、悩む必要なんてないでしょう?」
「……そうかも、しれないですね」
「うん! じゃあ、永木庵に行こっか」
と言っても、本当にもう目と鼻の先と言えるほど近くまでやってきた。お店に入ると、クラスメイトの木代万和が店番をしていた。
「あ、紅凪ちゃん。いらっしゃい」
そういえば万和も将来についてけっこう悩んでいたはず。ロゼ先輩の手前、悩む必要なんてないのかもしれないと言ってはみたが、気になる分には変わらない。お菓子を選ぶロゼ先輩から少し距離を取って、こっそり聞いてみる。
「万和は将来の夢、決まった?」
前に聞いた時は、お店の手伝いを続ける、ハーブの研究をする、薬剤師になるの三つで悩んでいたはず。
「薬剤師を目指そうかなって。だって、一番難しそうじゃん? 悩んだら、難しいものに挑戦した方がいいんだってさ」
世音経由で聞いた情報だけど、万和にも年上のしかもけっこう変人な恋人が出来たらしい。ちょっと大人っぽい答えを示してきたのも、きっと何か関係があるのだろうか。
「紅凪ちゃーん、これ美味しそうだよ」
ロゼ先輩に呼ばれ、私も万和もそっちへ向かう。先輩が指差していたのは、晩秋と名付けられた栗まんじゅうだった。黒糖まんじゅうの上に小粒の栗が乗っかっていて、秋の終わりを感じさせる商品だった。
「そちら今月のオススメですよ」
万和が店員モードになる。そんな万和の勧めもあって、私も先輩もその晩秋を買うことにした。
「店内でお召し上がりですか?」
「そう……しよっか」
店内のイートインスペースでゆっくりお茶を飲みながら、今年の秋も終わりだねなんて話をして過ごすのだった。
「ロゼ先輩って、将来の夢とかあるんですか?」
先輩はもう高校二年生で、もうじき三年生だ。きっと、大学とか将来のことについて色々考えているはず。
「うーん、Fuzzyなものでよければ。日本の文化をもっともおっと世界中の人に知って欲しいわ! きっとそういうことは、私みたいなハーフの人の方が伝えやすいと思うのよ。だって日本の人たちって自分の文化を外部に発信するの、苦手でしょう?」
最近のネットワーク社会ではそれも多少は緩和されている気はするけれど、日本人は自分の意見を外部に発信しないなんてことは確かに言われている。私自身が自分の意見をはっきり言うのを苦手としているからかもしれないけれど。
「紅凪ちゃんは、何か将来の夢とか目標はあるの?」
先輩に問われて、答えがパッと思い付かなかった。将来の夢って、なんだか難しい。小さい頃のものを思い出そうとしても、なんだか靄が掛かったように思い出せなくなっているのだ。幼稚園や小学校の低学年で、きっと発表とかもしているのだろうに。
けれど、口にするのは少し恥ずかしいけれど確かに言えることが一つだけある。ロゼ先輩のことだから、きっと笑いはしないだろう。
「……素敵な恋を、してみたいです」
「それはいいことね。私もまだ恋愛はよく分からないの。だってみんな素敵で、特別で、そんな人たちが家族と同じくらい、それか家族以上に特別な存在になるだなんて、ちょっと想像がつかないじゃない?」
「……みんな特別? 私も?」
「えぇそうよ。ほら、Hugしよう?」
往来の真ん中だというのもお構いなしで、ロゼ先輩にぎゅっと抱きしめられる。私より小柄なのに、無性に包み込まれているような感覚になった。きっとこの感覚を愛情と呼ぶのかも知れない。そんな風に感じた。
「ほら、悩む必要なんてないでしょう?」
「……そうかも、しれないですね」
「うん! じゃあ、永木庵に行こっか」
と言っても、本当にもう目と鼻の先と言えるほど近くまでやってきた。お店に入ると、クラスメイトの木代万和が店番をしていた。
「あ、紅凪ちゃん。いらっしゃい」
そういえば万和も将来についてけっこう悩んでいたはず。ロゼ先輩の手前、悩む必要なんてないのかもしれないと言ってはみたが、気になる分には変わらない。お菓子を選ぶロゼ先輩から少し距離を取って、こっそり聞いてみる。
「万和は将来の夢、決まった?」
前に聞いた時は、お店の手伝いを続ける、ハーブの研究をする、薬剤師になるの三つで悩んでいたはず。
「薬剤師を目指そうかなって。だって、一番難しそうじゃん? 悩んだら、難しいものに挑戦した方がいいんだってさ」
世音経由で聞いた情報だけど、万和にも年上のしかもけっこう変人な恋人が出来たらしい。ちょっと大人っぽい答えを示してきたのも、きっと何か関係があるのだろうか。
「紅凪ちゃーん、これ美味しそうだよ」
ロゼ先輩に呼ばれ、私も万和もそっちへ向かう。先輩が指差していたのは、晩秋と名付けられた栗まんじゅうだった。黒糖まんじゅうの上に小粒の栗が乗っかっていて、秋の終わりを感じさせる商品だった。
「そちら今月のオススメですよ」
万和が店員モードになる。そんな万和の勧めもあって、私も先輩もその晩秋を買うことにした。
「店内でお召し上がりですか?」
「そう……しよっか」
店内のイートインスペースでゆっくりお茶を飲みながら、今年の秋も終わりだねなんて話をして過ごすのだった。
0
あなたにおすすめの小説
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
先生の秘密はワインレッド
伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。
教師と生徒のドラマチックラブストーリー。
執筆開始 2025/5/28
完結 2025/5/30
まほカン
jukaito
ファンタジー
ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。
今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル!
※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる