真紅の想いを重ねて

楠富 つかさ

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ゆふされば

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 期末試験を目前にひかえた土曜日の午後、お昼を食べるまでは寮でルームメイトの紗彩ちゃんと勉強していたのだが、紗彩ちゃんは用事があって出掛けてしまった。
 寮の部屋で一人ぼっちで勉強するのも何だか寂しく勉強場所として図書館を訪れようと制服に着替えた。校舎の外側に沿って歩く道すがら、物陰に隠れている怪しい人物を発見してしまった。しかもその人は知っている人で……。

「高砂先輩、何してるんですか?」
「あ、紅凪ちゃんか。いやぁ、その辺に人、いない?」

 声をひそめて言葉を発するのは百人一首部の部長である高砂かすみ先輩。わたしも周囲をきょろきょろするが、人影はとくにない。わたしがそう伝えると、先輩は豊かな胸をなでおろしながら壁際から離れる。

「なんかこう、おっぱいを揉みたがる後輩につきまとわれれてさぁ、そりゃあね。あたしのは大きい方だし、天寿のランジェリーモデルもさせてもらってるけど、そうやすやすと揉ませるもんじゃないからねぇ。紅凪だってそうでしょう?」
「あはは……。え、ていうかそれ香子じゃありませんよね?」
「うん。違う。中三のなんか変わった苗字の子。小比類巻つったっけかな」

 わたしもわりと大きい方だし気をつけた方がいいのだろうか。

「あ、紅凪は図書館行く感じ? さっきロゼともすれ違ったよ。期末の勉強かな? あたしもまぁまぁ仕事で欠席するからさ、ロゼに教わることもあるんだけど、めっちゃ巧いよ。特に数学。文系なのにな」
「そうなんですか。わたし、数学が苦手なので……ちょっと教わってみようと思います」

 ロゼ先輩に勉強を教わるだけでドキドキしてしまいそうだ。ちゃんと頭に入るかな……。一礼して高砂先輩と別れようとした直後、振り向きながら先輩が呟いた。

「早くしないと盗られちゃうかもよ。あいつは人気者だからな」

 左手をひらひらさせながら去って行く先輩。後ろ姿も美しい彼女が残した言葉の意味は……先生役として先取りされてしまうということなのか、はたまた恋敵の多さを言及しているのか。ひとまず首を振って、期末試験に向き合わなくては。

「……ロゼ先輩、いるのかな」

 勘ぐりすぎかもしれないけれど、かすみ先輩にからかわれただけかもしれない。
 図書館内を見渡すと、自習コーナーに見慣れた明るい栗色の髪をした女性が座っていた。

「ロゼ先輩」

 一声かけて真向かいに座る。

「あら、紅凪ちゃん。紅凪ちゃんも試験対策?」
「えぇ、その……さっき、高砂先輩とすれ違って。よければ先輩に数学を教えて欲しくて」
「うん? いいよ。あぁ、向かい合うより隣同士の方がいいでしょ」

 先輩からふんわりとフローラルとはまたちょっと違う、自然系の優しい香りが漂ってくる。シャンプーかもしれないし、ひょっとしたらコロンとかそういったものなのかもしれない。

「先輩、そのシャーペン可愛いですね」
「イッツ、メカニカルペンシルね。ちりめん柄が可愛いでしょう?」

 ロゼ先輩は和風のアイテムが好きらしい。ペンケースも和風のデザインだし。
 わたしもひとまずノートと教科書を出して、教わりたいことを伝える。

「あぁ、関数と平面図形の合わせ技ね。交点の出し方は大丈夫だよね、そしたら……うん、いい感じだね」

 それからは、わたしの数学を見てもらったり先輩の国語の出題範囲で解釈を検討したりして過ごした。
 時間はあっという間に午後五時を迎え、そろそろ寮に戻る時間になってしまった。

「この時期は五時でももう真っ暗だよねえ。部屋に戻ったら取り敢えずお風呂の準備かなあ」

 お風呂……か。いつぞやの香子の言葉がちょっと脳裏をよぎる。先輩と、お風呂……そしてその先……。

「紅凪ちゃん?」
「あ、いえ。わたしも戻ったらお風呂かなと思って」

 寮の近くで先輩と別れ、中等部の桜花寮に入る。先輩との距離、あんまり縮まらなかったな……。
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