その口づけに魔法をかけて

楠富 つかさ

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#9 魔導学校の授業

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 魔導学校といえど普通に教養の授業も行われる。古典や英語といった文系科目に数学や化学といった理系科目、そういった授業をこなし午後は魔導史の授業が行われる。担当は当然、担任の浅茅先生だ。

「魔導の概念は古くから語れる四大元素にルーツを遡り――――」

 テキストを読む浅茅先生の姿は透明化のせいで視認することはできない。手に持っているものも透明化できるあたり、汎用性は高そうなのだが……。

「ひぃん!!」

 テキストを読む声が止まり、私の背後から少しはしたない声が響く。

「実技最下位のクセに座学で居眠りとは不届きなやつだな、貴様」

 どうやら寿奈が居眠りをしていたらしい。私が気づいてあげられればよかったのだが、あいにくと寿奈の席は私の真後ろ。気づくことは無理だった。

「そういえば100位は99位とペアを組んだそうだな。連帯責任だ、99位、続きを読め」
「……は、はい。――古来の魔導は錬金術に代表される物質を媒介し新たな具象を体現する技術として体系化されていきました。とりわけ、非金属を媒介に魔導金属を構築する魔法は現代では失われており、これは環境の変化により空気中の魔力量が増えたこと、人体の進化に伴い人が持つ固有の魔力量が平均的に増加していったことから、媒介を必要としなくなっていったことが影響しているとされています」
「よろしい、今も一部の魔導士は媒介となる物質を使うが宝石や貴金属といった高価なものを消費するから学生諸君には関係ないな。逆に安価で媒介にしやすいものは……人骨や歯、髪の毛の類だな。これは呪いの領域だから私は授業せんぞ」

 寿奈が寝るというハプニングこそあったが、授業はその後スムーズに進み、次の授業もなにごともなく終わり放課になった。
 帰りのホームルームで浅茅先生から、いよいよ明日は実技が行われるから覚悟するようにとアナウンスがあった。
 明日の午後と明後日の午前が魔導実技の授業がある。そしていよいよ、来週から新人戦が行われる。ペアが決まらない場合はランダムに組まされるので、やはり徹底的に実践慣れさせることが目的のようだ。しかもトーナメント形式ではなく、グループごとに総当たり。
 50ペアを10グループに分けるようなので、総当たりだと4試合行われる。

「会場の下見ついでに、ちょっと練習していかない?」
「う、うん!」

 この時点で組んでいるコンビがどれくらいいるか分からないけど、できる限りのことはやっておきたい。
 私と寿奈は実戦トレーニングのために学園の訓練棟に向かうのだった。
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