その口づけに魔法をかけて

楠富 つかさ

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#12 作戦会議

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 いよいよ明日から新人戦が行われる。私と寿奈は作戦会議を行うことにした――ベッドの上で。

「できるだけ魔力の受け渡してほしいとは言ったけど、この距離である必要はあるのかしら」

 寿奈に抱きしめられながら声をひそめて作戦会議を行う。このシチュエーションに訳の分からなさを感じている。

「まぁいいわ。明日、どんな実力の相手とどういう順番で当たるかは分からないけれど、基本的に後から戦う相手程勝つのは難しいと考えた方がいいわ」
「手の内が見えてくるから?」
「その通りよ。最初に相手するようなコンビは私たちが99位と100位のコンビだからと舐めてかかるかもしれない。けど、そこで私たちが勝ったり、ある程度は善戦したりすれば、多少は警戒されるようになる」

 できれは一戦目は勝ちたいと考えているが、あまりむやみにプレッシャーをかけるわけにもいかないから、善戦して負けた場合も想定して伝えておく。とはいえ、私たちの実力がどの程度通用するかは不明だ。四組上位の大宮相澤ペアには勝てたが、新人戦でもそう上手くいくとは限らない。

「一戦目はラッキーパンチを狙うってことだね」
「そうなるわね。出来るだけ魔法を温存したいくらいよ」

 魔導学園での戦い方としていかがなものかとは思うが、基本的に連戦になりがちな新人戦では追加で魔力の受け渡しができないかもしれない。場合によっては、体術や警棒術だけで勝利を狙うのも考えなければならない。

「使う魔法もある程度は決めておいた方がいいと思う。せめて属性だけでも。寿奈って属性で言えばどれが得意?」

 魔法の属性には基本として炎・水・風・地・氷・雷・光・闇の八つがあり、初級の魔法であれば複数属性を使いこなす人もそれなりに存在する。だが中級上級となっていくにつれて扱える属性の数は減っていくものとされている。

「綾乃ちゃんはどの属性が一番使いやすい?」
「そうね、中級くらいならほぼ全属性問題ないはず。上級となれば風は使いやすい方ね。まぁ、新人戦で上級魔法まで使うなんてことはないだろうけれど」

 そもそも魔導学園の一年生なら中級魔法を一属性使えればそれで充分好成績だ。私の場合、術式を組むことができるだけで発動しえないものも多々あるけれど、こうして寿奈から魔力を受け渡してもらえれば発動だって可能なはず。それに、火球魔法と言えど込める魔力やその精度を高めていけば十分戦いに通用するものになる。

「風属性をメインで使う人のパートナーは何属性を使えばいいかな?」
「ふふ、寿奈だってどの属性も万遍なく使えるわけじゃないでしょう? 使いやすいのを使いなさい」
「そうだよね。じゃあ、やっぱり地属性かな。足元を崩すのに使いやすいし」
「なるほど、じゃあ踏み込みの時とか風で少し背中押してみようか」
「いいね! そしたら相手が思うより早く懐に飛び込めるし、ぶっつけ本番になるだろうけど、うっかりタイミングがズレたらそこはもう警棒でえいってやるしかないよね」

 相手によりけりだろうけど、人一人が風魔法で加速してタックルして来たらなかなか対応しきれないだろう。ほわほわして見えるが寿奈の体術は本物だ。できるだけ魔力温存で戦うことを考えれば、本当に頼れるパートナーに出会えたものだ。

「どうしたの?」
「いいえ。さぁ、ゆっくり寝て明日に備えましょう」
「うん。おやすみ」

 新人戦前夜、これ以上ないほど穏やかな気持ちで私は眠りにつくのだった。
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